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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第六十七幕「踏み込む理性と抱擁する感情」

 
 第六十七幕「踏み込む理性と抱擁する感情」

 互いの視線で切り結び、火花を上げた二人の少女騎士達だったが

 まるで申し合わせたかのように、同時にふいっと顔を背け合い視線を逸らした。
 
 そのまま、やはり互いに一瞥もせず、二人共に学園によって充てがわれたベグライターが待つ、自陣営へと馬を進める。
 リサの厳しいい表情が、フィオナの細めた眼の奥にすわる瞳が、静かに物語っている。



 視線の斬り合いなんかで、決着なんて付けてやるもんか、と。



 なんとしても勝ちたい、いやフィオナには――今のフィオナにだけは、絶対に負けたくない。
 リサの表情は、噛み締めた奥歯にこもる力と覚悟により、厳しくこわばり

 勝たねばならぬ戦い、敗けてはならぬ闘い――ちがうっ、この一戦は死んでも負ける訳にはいかないんだ。
 フィオナの瞳には、決死の誓と決意の炎が燃え盛っていた。

 観衆の心情は半々といったところ。
 友達だと思っていた相手に裏切られた、リサに同情的で応援するものと
 盗んだ技とはいえ、それをもって天才少女騎士に二度も勝利をおさめた、フィオナが勝利するだろうと黙って見守るもの。

 『皆が技も戦術も、リサのコピーだと非難している』

 以前フィオナによって投げかけられた言葉。
 その時の彼女の声も目も、知っているのは静馬一人であり。
 皆と同様に私を非難すればいいじゃないっ、と食って掛かるように言われながら
 極当り前に『皆と一緒』を拒否し、フィオナの言葉を否定できるのも、静馬一人だろう。

 もし仮に、あの時静馬がフィオナを諭し否定した言葉を、公の場で皆が聞いたとしても、大衆の心情はフィオナには傾かないであろう。
 静馬の言葉に踏みとどまり、改めて考える者は極わずかで、静馬の言葉は『静馬の』言葉であるがゆえに、真剣になど受け止められないからだ。
 それでも、少なくともフィオナを否定する声は今少し減ってはいたはずだが、それとてフィオナにとってはどうでもいい。

 何故なら、それは現実に起こりえなかった仮定の話。

 ――と言う事ではなく、フィオナがそれを望まず、そもそも其処に価値を見出していない。
 今更周りの有象無象に、理解してもらいたいだの、認めてもらおうだのと、フィオナは思ってなどおらず。
 なにより応援も非難も、二人の少女騎士にはもはや耳に届かぬ、雑音でしか無いのだから。

 二人の背負う圧に挟まれた空気は押し潰され、次第に会場中から声を、音を駆逐していく。

 昨日の静馬の決闘でも、雑音は押しのけられた。
 だが、今日の静まり方と昨日のソレとでは、訳も質も大きく異る。
 ある意味においては、正反対の現象により、同じ結果へと行き着いただけ。
 其処に類似性を求める類のものでもないし、求める意味も又ない。

 研ぎ澄まされ過ぎ、張り詰めたような昨日とは違い、伸し掛かり押し潰そうとして来る今日の空気の重さ。
 それで互いに相手を押しつぶそうとしている、二人の少女騎士達だけが心地良いと嘯いて見せる。
 
「槍を」

 フィオナは、思ったよりも低くなった自分の声に驚きながらも、そう促すことによって動きを止めていたベグライター役の少女に自分の仕事を思い出させ。
 槍を受け取って、開始位置へと馬足を進めて目を閉じる。
 雑音に続き視覚からも周囲を切り離すことで、不思議と怒りに青く燃えるココロは、ゆらめきを止めた。

 むしろフィオナ本人が疑問に思えるほどに、落ち着きリラックスできていて。
 試合直前なのだからもう少し緊張しなくていいのかと、少々自分の現状に呆れつつ、その原因もフィオナにはわかっていた。
 この会場の何処かで見ているだろう相手へ、試合前の今は探すつもりも気にする気もないが、フィオナは小さく舌打ちをしてみせる。

 きっちりかたきを討ってから、真正面から感謝の言葉叩きつけてやるわよベルティーユ先輩?

 だから、その為にも絶対負けない、敗けないためにも今は他のことに目を向けない。

 静馬先輩は私が勝つって言ったけどリサは天才だ、油断なんか出来ないし、綺麗になんか勝てるはずがない。



 だってリサを『そうした』のは私なんだから。



勝手に憧れて、リサに天才少女騎士になってもらったのだ
 今まで楽勝だった相手にも負ける、そんなスランプ地獄の泥沼に蹴り落とし。
 聞けば何でも答えてくれて、挫けそうになれば励ましてくれる、そんな相手と引き剥がして。

 今までのジョストで、リサが感覚で流していた部分を、悩んで考えて計算して動く様に……無理矢理に。

 だから謝らないし、許してもらえなくってもいい。

 私がリサのために用意できる、最後の一つは、倒すべき敵だけ。
 
 ここでリサが私に勝って自信を取り戻せば、リサの槍はスィーリア先輩に届くのかもしれない
 そうなれば、我が身を踏み台にしてリサを成長させた、なんて綺麗でいいお話で終わるかもしれない……
 でも、踏み台なんてまっぴらゴメンだし、態と負けるなんて死んでも出来ない。

 お涙頂戴の称賛も、周りの理解も誤解も要らない。

 石に噛じりついてでも、泥を這いずってでも、無様でみっともなくともっ

 『乗り越えるべき天才少女騎士』――リサを倒して、私が勝つ!

 眇めた眼の奥に鎮座するエメラルドの瞳は、リサの姿を完全にとらえ。
 躍起になって、視線をその全身の細部に至るまで鋭く駆け巡らせる。
 静馬が今までフィオナにしてみせ、フィオナが吸収したこと、その最初の一つ

 ほんの些細な違和感を、決して見逃さ無いこと。

 躓く前に、まるでそこで躓くのが判っていたかのように、静馬は誰に対しても庇うように動いてみせた。
 それどころか、相手が立ち止まることにも事前に察知し、まるで当り前のように対応してのけたのだ。
 動作に対しては、仕草や体重移動という部分に注意して見れば、察せられるかもしれない。

 だが静馬のアンテナは、言葉の端々にすら向けられ。
 常に情報を収集し、分析し続けていた。
 フィオナが仕組み、動かした状況の根拠は、静馬が口にしたリサへの評価。

 『感覚的に戦うのではなく、論理的に正解を導き出す時間と指標が必要なタイプ』という言葉。
 
 フィオナはそれを根拠として、そうなるべく動いた。
 故に、静馬にはフィオナの狙いは隠し果せることは出来ない。
 そして静馬は、フィオナの行動を止めなかった。
 つまりは、そういうことなのだ。
 
 私が今、同じことを不特定多数に出来るなんて言わない

 でも、特定の個人になら、ずっと見続けてきた……リサにだけなら

 出来ないなんて、泣き言は言っていいはずがない。

 若干下がった左肩は、怒りで力がこもっている、手綱捌きにラグがわずかでも出る可能性。
 唇を噛み締めた表情と眇められた眼、それからやや前のめりの体勢は、攻撃性が何時もより強くでてる。
 体勢が全体的に前傾しているせいで、お腹に力が入っていない、飛び出しで体制を崩してもたつく?
 
 よし、取り敢えずは様子見

 ……なんてしないっ、最初から取りに行くっ



 * * *



「随分と、その、あからさまな攻め気ですね」

 ミレイユがわずかに言いよどみながらも、両隣に座るグラマラスな美女二人へ、控えめに意見を求める。
 自身が騎士でないとは言え、ジョストの好きさ加減ではそこらの騎士に劣らないだけあり
 バイザーに隠れ表情が見えないというのに、フィオナが腹をくくって最初から仕掛け様としている事を、ミレイユは看破してのけた。

「ああ、それは師匠が悪い。
 そういうものを相手に見せるなと教えず、甘やかし放題で褒めた結果だ」

 額に手を当てわずかに俯けたスィーリア、声も言葉もあきれ果てているのだが、その表情は苦笑い。
 なにしろスィーリアはその『師匠』に、直接止められたのだ。
 フィオナの魅力を損なうから、そういうアドバイスをしないようにと。

「だが……」
「ええ、完全に呑んでますわね」

 スィーリアの言葉を受けてベルティーユが応える。
 呑んでる?と、ベルティーユの言葉についていけないミレイユが、眉をしかめてみせるのを、ベルティーユが華のような微笑みをもって受け止めた。
 「場の空気をですか?それとも相手を?」と問い掛けるミレイユの言葉に、ベルティーユはゆったりと首を振り、優しい微笑みの中、澄み切ったサファイアの瞳だけが深い色を見せる。

「いいえ、覚悟の槍をですわ」

 その説明だけではまだ良くわからない、ミレイユの表情が雄弁にそう訴えるのを、ベルティーユが無視するはずもなく。
 だが僅かに頬を染め、どこか照れたように小さく笑みを零し、言葉にしづらそうな顔をする。

「感覚的なもの、ということでしょうか?」

 ミレイユに純粋無垢な瞳を向けられ、ベルティーユが更に困ったような顔になっていくのを、スィーリアが笑いながら助け舟をだした。

「いやそうではなく、いまフィオナがやっているのが、フィオナからベルティーユへの告白のようなもので。
 ベルティーユとしては、心底うれしいながらも少々面映いと、まあそういうことだ」

 確かに自分自身でそれを説明するのは、何かの罰ゲームかというくらいに羞恥心を煽るのだが、誰かにそれを説明してもらうえば恥ずかしくないわけではない。
 ましてや、本人が目の前にいる状況での説明は、ある意味で自分自身で説明するよりいっそう恥ずかしい面もある。
 スィーリアがそれに気づかぬはずもなく、判っていて尚そのまま説明を続けたことに、ベルティーユはわずかにすねたような目を向けて可愛らしく睨むも、スィーリアはそれを笑って受け流した。

「それで、水野さんはスィーリア様と組まれたのですか?」

 話題を変えつつ、逆襲としてスィーリアに話しの矛先をベルティーユが向けると、ミレイユが会場を一巡り視線を巡らせスィーリアの方へと顔を向ける。
 決闘の結果、リサのベグライターから外された以上、貴弘を誘っていた誰かのベグライターになった。
 ミレイユの様子から、ノエルが貴弘をベグライターとして受け入れたとは考えられず、それならば最も可能性は高いのがスィーリアだと。

 ベルティーユは、極自然にそう思考が流れた振りをして、上品な笑顔を保ちながら話の水を向ける。
 スィーリアも、ベルティーユが『わからない振り』をして、態とそう返してきたことを察せないほどに鈍くはなれず。
 苦っぽく笑いながら軽く手を振り、それ以上お互い攻めるのは止めようと、無言のままベルティーユとの休戦協定を提示し、ベルティーユがそれにイタズラっぽい笑みを浮かべつつも同意した。

「貴弘は今更誰かに鞍替えなど出来ない、少なくとも残り二試合しかない今大会中では不可能だ。
 決闘の取り決めが『大会中』と期間の区切りない以上、再びリサのベグライターになれるかどうかは、フィオナにきいてみてその返答次第だな」
 
 言いつつ、スィーリアもベルティーユも、その許可をフィオナが出すことはないだろうと半ば確信している。
 それでも態々口に出してそう言ってみせたのは、理解できていないであろうミレイユへの気遣い。

「そう……ですね。まだ観客席に座っている、というのが答えですか」

 少し悲しそうに瞳をかげらせながら、ミレイユが視線をフィオナへと移し、誰にも聞こえないようにそっと小さなため息をつく。

「切っ掛けがあったからといって、物語のように早々人は変われないものですわミレイユ様。
 『今まで通り』が通じる間は、変化を受け入れることも、ましてやその為に自ら動き変えようとも、なかなか出来るものではありません」

 ミレイユの小さなため息を見とがめたベルティーユが、ごくごくさり気なく窘めた。
 年齢の割にミレイユは利発であり、彼女は貴族の令嬢で、かのアスコット卿の御息女なのだ。
 彼女の中に年齢分だけ築いてきた、貴族令嬢としての心構えと高潔なる志、ベルティーユはそれを感じ取り心の内で賞賛する一方で、彼女の中では当り前のそれを、広く一般に求める事はできないのだとも理解していた。

 なによりミレイユは少々、いや結構な静馬贔屓で、その分貴弘への評価が辛くなりがちでもある。

 感情的を前面に出すことが悪いとは言わないし、その根底にある貴弘の周りにいた大人達への嫌悪感もわからぬでもない。
 ベルティーユとしては、共感できる部分も少なからずあるのだが。それをこんな不特定多数の前で晒すような、はしたない真似をしてはいけないと、一般論を表に出しながら柔らかく促した。
 相手は自分より年下であるのが、家としての格や爵位でははるかに相手が上である、公然と直接指摘したり注意をしたりするような事は、相手を侮辱することにもなり出来ないのだ。

 聡くベルティーユの言葉の意味を察したミレイユが、素直に少し恥じ入った表情を浮かべ、恥ずかしそうに小声で同意するのを微笑ましく見つめてから。
 ベルティーユは視線を、闘場に立つそんな素直な反応をしない一人の少女騎士へと向ける。
 
 囲み護っている騎士達はもう居ない。
 支え包んでくれる天才騎士も、フィオナの騎士が押しのけた。
 貴女の前に立つフィオナは、お転婆姫をやめていまはもう立派な少女騎士

 舞台は完璧に整いましたわ、さぁ今こそジョストを始めなさいなリサ。

 でないと私の義妹が……一閃で試合を終わらせてしまいますわよ?

 睨むような真剣な眼で見つめベルティーユは、今大会において自身を打ち倒したリサに向け、心の内で語りかけるようにエールを送る。
 否、それは単純なエールとは少し色彩の違う想い。
 届かない警告、聞こえない勇気づけ、リサと対峙するもう一人の少女騎士への称賛。

 そして、険しい道を切り開き、この場をリサとフィオナの二人きりにしてみせた
 自分の友人である一人の騎士を、ただただ誇らしく思う気持ち。

 あまりフィオナばかりを構っていては、私少し拗ねましてよ静馬さん。

 2016.01.01




 ☆ ☆ ☆



 新年あけましておめでとうございます、今年も読み手の方に何かを残せるものが書けるよう頑張ります。
 毎年正月休みの期間だけ飲酒をするため、怪文書にならぬようかなり気を使います。
 相変わらず気分の斑で、更新がまちまちですが、 本年もご愛顧いただければ幸いです。 


   

~ Comment ~

非常に面白いです。 

初めてコメントさせていただきます。
一昨日の夜にこの小説を偶々見かけまして、余りに面白く昨日は仕事なのに朝方まで全て一気読みしてしまいました。主人公の三枚目的な飄々とした性格と、フィオナの孤独思考といいますか、相手を傷つけてしまうハリネズミのような性格がピッタリハマっていて掛け合いが楽しいです。勿論ベルティーユとの大人で優雅な会話や、歯に衣着せないようなエマ、アンとの応酬、純真なミレイユと話すときいつもの気障なセリフがそのときは妙に空間にマッチしており、主人公が飄々とした感じから優しいお兄さんみたいに感じられるのも好きです。実の所私は原作のワルキューレ・ロマンツェは未プレイなのですが、公式のキャラ紹介を見ながらこの小説を読んで、原作もプレイしてみたいと思い始めました。ですがとある批評サイトを見た所、フィオナへの酷評がかなり目立っており、ああでもよく考えればこの主人公だからこそフィオナが魅力的に見えてるけど、ただの主人公では扱いきれないなあとも納得(笑)。同時に、勿論原作で静馬はいませんが、プレイした際にフィオナが出てくれば裏に静馬との掛け合いが妄想できて、悪態も可愛く見れそうな。原作を知らないので、このお話がどこまで続いているのかは分かりませんが(静馬の騎士関連の話やフィオナとの関係が一区切りついたからそろそろ終盤なのかなぁ)、ぜひ最後まで読ませてください。
ちなみに、私はミレイユが好きです。純真で身内にちょっと御茶目なところとか可愛いですね。なのでヒロインにはミレイユを押していたのですが、そこはフィオナに譲るとしても、もっと静馬との絡みは見てみたいですね。

それでは、次話も楽しみに待たせていただきます。

Re: ニッケルさん 

 コメントに感謝を。

 こうして楽しんでいただけ、そのことをコメントいただけましたこと、大変嬉しい限りです。
 投降サイドになど上げていない以上、反応を求めてしまうのは贅沢だとは思いますが、誰か一人でも楽しんでいただけているという手応えを感じ、モチベーションを上げていただきました。
 原作は未プレイとのことですが、本作は原作が好きな方が求めている二次ではない様な気もします。

 アニメではマイルドになっている気もしますが、フィオナは多分原作では一番の嫌われキャラなのではないかなと。
 でもフィオナ側から見ると原作はどう見えるの?という私の妄想で、今後原作をやることになった時に、もし本作を読みフィオナのがわに一歩でもよってみていただけたら、嬉しい限りです。
 ミレイユは、ノエルも言っていた通り天使です。可愛らしくかけていたのでしたら、こんなに嬉しいことはありません。

 今後ともご愛顧いただけましたら、嬉しい限りです。
 
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