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歪んだパズルのつなげ方

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天使とダンス

天使とダンス第二十話「接触」

 
 天使とダンス 第二十話「接触」

 てててとすぐにも走り出しそうなインフィニティの手を握り、ルーテシアは薄暗い道を一歩一歩確かめるように歩みを進める。その足取りはゆっくりで、表情同様に僅かも焦った様子は見受けられない。
 淀んだ空気と濁った匂い、照度の確保されていない場所だというのに、楽しそうにきょろきょろと周りを見回しているインフィニティも、やはり焦った様子はなく此方もいつもの通り。

「でもいいのルーティ、早く見つけないとダメなんでしょ?」

 子犬のようにルーテシアの周りを、前に後ろにとつないだ腕の許す範囲で動き回るのにも慣れたもので、ルーテシアもいちいちそんなインフィニティの行動に文句をいうこともない。どころか親しい人間以外には見分けることは難しいが、唇の端に薄っすらとだが笑みが香っている。

「平気、大体の場所わかっているから」

 ルーテシアの返した返事に小さく首を傾げながら、そうなの?と視線を右上に上げるながら問い返す。ただし問いかけた相手はルーテシアではなく、問いかけられた方も自分への問いかけだと正確に理解し、澱みなくすぐさま解を伝えるあたり、すっかり阿吽の呼吸となっている。

《Route to the destination has been determined.Mylord》

 なんだそっかーと返しながらも、相変わらず落ち着きのない様子のインフィニティにルーテシアが小さく笑い声をこぼすのも一瞬、直ぐにも笑みは無表情へと変わったがそれは『いつもの』ではなかった。
 普段から年齢以上に落ち着いた行動を取るルーテシアだが、その足取りが何時も以上に慎重で、視線を配る早さも鋭さも一瞬にして増しながら、足を止め繋いだ手を背中側へと少し強めに引いたのは無意識の行動。

 ルーテシアが毛を逆立てた猫の様に神経をとがらせているのは、今いる場所の足場の悪さや照度の低さもさることながら、最も大きい要因は距離である。
 もっとも、外から見える変化はほんの微細なもので、気付けない大多数にとっては『いつもの』といってしまえるほどの些細な違いでもあったが、当然ながらインフィニティはその変化に気がついた。

 気がついていながら、相変わらず今にも鼻歌でも歌い出しそうな脳天気な表情で、直ぐ後ろに控えていた黒衣の竜人へ、にへへと笑いかけているのを、気がついていると言い切っていいのかどうかは判断の難しいところではあるが。

「インフはなにか感じた?」

 ルーテシアの問いかけに、金の長い尻尾が二条横に揺れる。
 こう問い掛けるということは、ルーテシアは異変を感じ取っている――いや、正確にその詳細までを掴んでいるのだが、インフィニティは一体何を察知したのかと問い返す素振りもない。
 相手が何を聞きたいのかをわかって、わざと意地悪でそうしているのではなく、会話を打ち切るために素っ気なく返事をしているのでもない。
 『なにか感じたか』と聞かれたので、素直になにも感じていないとだけ返したのだ。

 ルーテシアもインフィニティの反応に、なにも含むものがないことは十分理解しており、そこで気分を害すことはなく。ちらっと鋭い視線をインフィニティの更に後方へ控えているガリューへと送り、言葉も無いほんの微かな視線のやりとりだけで黒衣の竜人はわずかに顎を引き、地を蹴って音もなく前方へと駆け出す。

 その行動でガリューも正確に現状を把握していることが見て取れる。
 二人が掴んだのはわずかに伝わる空気の振動、そこから遠過ぎはしない距離での破壊音。
 つまりは闘争の音響を聞き取っており、鋭敏な知覚能力は其処に魔力の色を見たか匂いを嗅いだか、その場で何が起きどんな結末を迎えたのかを理解していると、遠ざかる無言の大きな背が物語っていた。

 言うまでもなく、戦場の気配を察知していないインフィニティには、ガリューが突然走りだせば後を追いかけるように走りだし。
 直後、繋がれたままのルーテシアの手によって引き止められ、すっ転びかける。
 
「ルーティ?」

 零れた呼びかけは、不平ではなく疑問。
 
「私達が近くにいたら、ガリューが戦いにくいから。少し時間をずらす」

 危ないから戦闘に参加するなと言われれば、いくらルーテシアの言葉でもインフィニティは反発しただろう。
 あるいは彼女の標的がその場に居なければ、思い留まらせることも可能かもしれないが、逆を返せば彼女の標的がその場にいれば、どんな状況であれインフィニティを止めることが出来ない、ということである。
 何故なら少女は、ただその相手と戦い勝利することだけのために創られた兵器……として育てられてきたのだから。

 だがガリューが先行し、状況を有利にするための戦術行動だと説得されれば、まだ相手の姿を確認していない今なら、反発すること無くちゃんと我慢出来る。

 ルーテシアの読み通り、インフィニティは文句ひとつ言わず頷いた。
 予想していた通りの反応が帰ってきたというのに、無表情の仮面の奥でルーテシアの胸がチクリと痛む。
 それはすなわち、いまだインフィニティは兵器として生まれた呪いの軛から完全には解き放たれてはおらず。インフィニティは人間だと言いルーテシアが名前と友達という立場を与えてもまだ、救われては居ないということだから。

 僅かに苦い表情で頷き返したルーテシアだったが、直後予想外な展開にその表情は一層苦味を増し。

 どころかごく珍しいことに、感情的に舌打ちまでさせられる。



『ありました~!』



「ブルームーン!」

《Yes, my lord》

 細く高い声が進行方向より反響して耳に届いた瞬間、ルーテシアの小さな体はあっさりとインフィニティの手に引かれ地を離れる。
 天井が高いといえど地下の密閉空間、それも光源が乏しいだけでなく、常用的に人の利用しない為に機能性が人の移動性や安全性に優先されている狭い通路での、人一人を抱えた超低空飛行。
 通常どれほど飛行技術も空間把握能力が並外れて高くとも、こんな所を飛ぼうと考える様な人間は居ない。
 ましてやバリアジャケットもないインフィニティにとってみれば、一歩間違えば死に直結するような曲芸である。

 だが、インフィニティは迷わずそれを選択し、実行した。
 なぜなら彼女は、兵器として創られ、兵器として育てられて来ており。
 戦時において、安全を気にして行動を選択するような、学習をしていない。

 彼女が生き残るために学んだことは、例えば――
 奇襲は相手が安心した一瞬の隙に、最も効果を発揮するだとか。
 故に、勝利を確信した瞬間が最も危険であり、奇襲を仕掛けるのには効果的である、だとかで。

 勝利するためには、敵のミスを見逃さずに可能な限り利用しろ。

 戦闘で勝利出来るモノが、生存の価値があるモノである、ということであった。

 戦闘における初歩的な原理原則、相手より有利に立って戦闘をすること。
 相手の声色から緊張感の抜けきっていることを、インフィニティはもはや本能的と言っていい程自然にに嗅ぎとった。
 なにより勝利条件が『目的のものを確保する』とあれば、相手が確保し警戒態勢に入る前、すなわち今この時を逃せば時間経過とともに難易度が跳ね上がると理解しての急襲。

 チンクへ捨て身のダイブをした時の速度をわずかに下回るほどの高速飛翔に入った事を、後方より伝わる空圧より察したガリュー。
 こと此処に至ってはインフィニティを止めることは出来ない、瞬時にそれを悟り。
 また同時にインフィニティの思惑をも理解して、インビジブル状態で有ったにも関わらず、静音性を無視して床を壁を蹴りつけて加速し先行したのは流石の一言に尽きる。

 完全奇襲を仕掛ける事は失敗したが、敵の目をインフィニティから逸らさせるという、当初のルーテシアの思惑はガリューの行動により完遂される。
 いや完遂ではない、ルーテシアの思惑ではインフィニティが現地につく頃には、ガリューによって敵性体は全て抹殺され、安全が確保されていたのだから。

 もっとも相手が同じ機動六課でも、隊長や副隊長であればこの急襲は失敗し、ともすれば手痛い反撃をもらっていただろう。
 実戦経験の薄いフォワード陣が相手であったのは幸運であった、いやそれすらも経験則からくるインフィニティの無意識の判断だったというのは贔屓目か。
 密度の高い戦闘訓練により、実際のところフォワード陣の戦闘能力自体は、ルーテシアの考えていたようにガリュー一人で圧勝出来るというほど低くはない。

 だがそれも、敵を敵として認識してのあくまで戦闘『訓練』であり、今回のように不意を突かれ敵を認識して居なければ、実戦経験の薄い彼らにはその戦闘能力を生かすことが出来ない。
 それは彼らの能力が低いのでも、教官であるなのはの怠慢でもない、あえて誰の罪かと問うのであれば実戦経験豊富な指揮官を付けずに、彼らだけでやらせた者――すなわち指揮官の罪と言うことになるだろう。
 あるいは機動六課の戦力を分析しつくして、大量のガジェットを地下水路以外に投入し、経験豊富な指揮官を同行できぬよう戦力分散させた、スカリエッティの側が巧いと言うべきかもしれない。

 レリックが入っているであろうケースは、ガリューの突貫とも言える急襲により、発見者である幼い少女の手より吹き飛ばされ。皆の意識がガリューに向いている中、芸術的や天才的では足らず変態的とでも言うような姿勢制御で、超低空飛行から身を捻り上げるようにして綺麗に目の前に着地したインフィニティ。
 その腕の中から抜け出し、ルーテシアがそっと拾い上げる。

「インフ帰ろう」

 ケースを小脇に抱え、インフィニティに右手を伸ばすルーテシアに気付いた少女が駆け寄る……途中で、目を見開き動きがとまる。

「フェイト、さん」

 少女の驚愕によって漏らしたつぶやきは、無理からぬモノながら、決して漏らしてはならない一言でも有った。

 少女自身の動きはもとより、少女を庇うようにガリューと対峙しデバイスである槍を構えた少年、少年少女達よりは年長の二人までもが、思わず動きを止めてインフィニティの方へと視線と意識を向ける呼び水となった。
 そう、目の前に居る脅威から一瞬とはいえ、視線も意識も外してしまったのである。
 此処は戦場だというのに。
 戦場では、命を失うのに一瞬は十分過ぎる時間だというのに。



 そして何より、インフィニティに執着するルーテシアの目の前で――事実は違いながらも、ルーテシアの中での真実は――インフィニティを『偽物』扱いされたのだ。



 片眉を小さく跳ねあげ、インフィニティへと伸ばしていた右手は、そのまま薄桃色の髪をした少女の顔へと向けられる。
 「邪魔」という一言に、一体どれだけの思いが込められているのか、無表情のままに薄桃色の髪の少女・キャロに向けて放たれた攻撃魔法は、ほぼ接射という位置からの殺傷攻撃。

 正確に表するのであれば、ルーテシアにはその時、キャロを殺すつもりなどなかった。
 ただ相手を目の前から消したいとの思いのままに、可能のであればその存在ごと全てを消してしまいたい、とは思って居たが。
 相手の存在が、見知らぬ誰かにとって、『自分に取ってのインフ』かも知れないなどと考えられる程に、ルーテシアはまともに育てられてはいなかった。

 ルーテシアは純粋で子供らしく、無自覚で無邪気に非情で残酷であったし。

 なにより、表面上は無感情なままだが、その内面は感情の嵐が轟いていた。

 本人は自覚すらしていないが、インフィニティを奪おうとするなのはに対し激しい殺意を抱いていた、だがいまキャロに向けらているのは、それの比ではない。
 彼女の世界において、住人は彼女自身とインフィニティだけで。事もあろうにその片方を、目の前で『価値がない』と断定されたのだ。
 これは大げさではなく、ルーテシアの住んでいる世界を揺るがす変事であり。
 それを口にしたキャロは、ルーテシアにとって許すことの出来ない侵略者である。

 だが、胸に渦巻く感情をなんと呼ぶのか、ルーテシアはまだ知らない。

 そして、それが何に基いて沸き上がってくるのかも。

 とっさにバリアを晴れたのは、まさしくなのはによる訓練の賜物で、間に合わなければキャロは即死していただろう。
 だが、ルーテシアの見た目からこれほど強力な攻撃が来るとは思わなかったのか、キャロが咄嗟に展開した防御魔法はシールドではなくバリアで――弾き返すのではなくまともに攻撃を『受け止めて』しまい――当然の帰結ながら合成ベクトルはキャロの後方へと矢印を向け。
 バリアごと吹き飛ばされるキャロの小さな体が、そのまま背後のエリオを巻き込んで柱へたたきつけられる。

 それが結果的に、エリオの命を救った。

 エリオが対峙していたガリューは、一対一の戦闘でゼストを倒したチンクをして、油断ならぬ相手と警戒されるほどの戦闘能力を持つ。
 そのガリューを前に、一瞬とはいえ完全に無防備を晒したのは完全に失策で、年長組からフォローが入るには距離がありすぎた。
 故にキャロの意図しない挑発が、結果的にはベストとは言わぬもののベターな選択であったとも言える。

「ガリュー、それまだ生きてるよ」

 インフィニティの全く場にそぐわないのほほんとした指摘に、ぞわりと背筋に悪寒が駆け年長組が我にかえる。
 続けられなかった言葉を、スバル、ギンガ、ティアナの三人は誤解なく聞いたのだ。

『だから、早く殺さないと』

 最初に行動したのはやはり最も爆発力のあるスバルだった、対峙していたエリオの居ないいまガリューは完全にフリーで、そのままであればインフィニティの言葉の通りとどめを刺せる。
 一気に距離を詰めるための移動と攻撃を同時にこなすため、選択したのは飛び蹴り。
 大振りでわかりやすい攻撃だが、受け止めるにしろ躱すにしろ、相手がエリオ達へ向ける意識を自分へと引きつけられる、ただし大振りな攻撃は大振りな分だけ攻撃後の隙に直結し一気に危機へと変わる――スバルが単身で切り込んだのであれば、だが。
 スバルの突撃を躱した直後のガリューへ、まるで事前の打ち合わせが有ったかのようにギンガが追撃を掛け、受け止めた見かけよりはるかに重いギンガの攻撃に、ガリューの両足が地に二条の溝を刻みながら後方へと吹き飛ばされ、ルーテシア達との距離を離される。
 
「それ危ないから触っちゃダメ、こっちに渡して」

 ルーテシアが説得に応じるわけもないが、未だ正体も目的も知らないスバルとしては、武力を持って投降を呼びかけるべきだったのかもしれない。
 しかしルーテシアとインフィニティ、二人の言葉のはしばしから伺えるエリオ達とは違った幼さ故に、投降の呼びかけではなく説得に出てしまったのは、甘さと言うよりは面倒見の良い人柄で。
 インフィニティの手を握ったルーテシアが、わざわざ足を止めてスバルへ向き直り、「いや」と返事をしたのもそれを感じ取ったからだろう。

 ルーテシアの首筋に、魔力刃が押し当てられたのはその直後だった。
 ぴくりとルーテシアがその身を竦め、握られた手によりインフィニティがようやく異変に気づく。

「ごめんね乱暴で、でもそれ本当に危ないものなんだよ」

 三人目の年長組は、そう言いながらオプティックハイド――光学スクリーンによる不可視化を解く。

 最初に動揺から立ち直ったのは、実はティアナが最初であった。
 それは冷静な性格と指揮官である責任感故では有ったものの、他の者達よりもフェイトとの関係性が強くないという理由も大きい。
 動揺から立ち直った直後、息を殺し気配を消して、幻術により姿までをも消した。
 スバルの派手な突撃を予測でもしていたのか、きっちりと敵の目を引く囮として利用し、自分の存在を相手の意識から消したからこその完全奇襲が完璧にはまったのだ。

 銃口を向けての警告ではなく、魔力刃を押し付けられては、シールドやバリアで防ぐことも出来ない。
 スバルとは違い、説得ではなく有無をいわさず結果を得るという、指揮官としても管理局員としても冷静でベターな選択をした。
 全ては、確かにティアナの予測線上に沿って現実は進んでいた――この時までは。

 ティアナのミスは、手を繋いでいる少女達の内、レリックを拾い上げた方、即ちルーテシアを抑えたこと。
 ティアナの不幸は、フリーにした方の少女が、人間ではなく兵器であったこと。
 脅しや警告では、コマンドを与えられた兵器に、戦闘中止行動をさせられない。

 直後に起こったことは、完全にティアナの予測線上の遥か彼方の出来事だった。

 横から伸びたインフィニティの手が、ルーテシアの首筋に当てられていた魔力刃を、無造作に掴んだのだ。

 傷つけるつもりの無かった、どころか完全に投降するものと思い込んでいたティアナが、反射的に手を引いてしまう。
 しまった!と思った瞬間にはもう遅い、握られた刃を引けば切れ味と握った側の防御力にもよるが、下手をすれば指が落ちる。
 当然ながらティアナの発生させたブレードは、非殺傷設定でそんなことにはならないのだが、常識人であるティアナは思考より先に視覚情報により、一瞬体をすくませ。

 その目の前で、魔力刃は砕け散り、オレンジ色の欠片となりはてる。

「……うそっ」

 相手を傷つけずに済んだ安堵の吐息とともに、あっけにとられ思わず漏れでた呟きに、かぶせるように大音響と閃光が空間を塗りつぶしていった。
 それは所謂スタングレネードの様な効果を持つ魔法で、念話で事前に知らされていたルーテシアとガリュー以外が無力化され。
 ルーテシアはティアナの拘束を抜け出すまでもなく、強く目をつぶり銃型デバイス・クロスミラージュを持ったまま耳を抑えてうずくまるティアナに一瞥もくれず、右手を引いて歩みを再開する。

 右手の先から返ってくる反応が、わずかに重く鈍くなっていることを怪訝に思い、肩越しにインフィニティを振り向いた
 其処に、ふらつきながらもティアナがクロスミラージュを構えているのも視界に入らず、小首を傾げる妙に可愛らしい仕草で、インフィニティにものといたげな視線を向ける。
 とうのインフィニティはといえば、相変わらず脳天気な笑顔のままルーテシアの隣で、遅れて足を止めた。

「大丈夫インフ?」

 囁くような静かな問いかけ、背後でガリューがティアナを蹴り飛ばす轟音が鳴ろうとも、ルーテシアの視線はインフィニティから一瞬足りとも外れない。

「どうしたのルーティ?はやく行こ」

 返ってきたのは微妙に質問の答えになっていない言葉、その段になってルーテシアは気づく。
 そもそもおかしいのだ、目的のものが手に入ったのなら――そして目的の相手が居ないのなら――インフィニティが此処にとどまる意味がなく、それこそ来た時同様に安全性を無視したような高速離脱をインフィニティなら選んでいるはずで。
 故に、こうして手を引かれているインフィニティが、態度こそ何も変わっていないように見えて、実はスタングレネードの効果をもろに食らっているのだと。

「アギト、どうしてインフに意地悪するの?」

 上空から降りてくる、手の平に乗れるサイズのアギトに向かって、ルーテシアの目が非難の色をにじませる。

「なんだよルール―、アタシはちゃんと警告したぞ、通信拒否したのはそいつの方だって」

 頬をふくらませながら、腰に手を当てアギトが指さしたのは、インフィニティ――の髪飾り。
 実際アギトは、出会いの時に『いらない』と言い放ち、その後も言葉通り興味すら向けないインフィニティに、助けてくれたルーテシアやゼスト達ほどには恩も情も感じていない。

 ルーテシアを利用するスカリエッティの一味とまでは思っていないが、スカリエッティ同様の理解し難い変人と言う評価である。
 ただ、恩も情も感じているルーテシアが、ありえない程に大事にしている相手であるため、無視も意地悪もすることが出来ないでいたのだが。

 アギトの行動は、インフィニティに対する最高の仕返しとして、見事に効果を発揮していた。

2015.05.09


   

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