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歪んだパズルのつなげ方

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天使とダンス

天使とダンス 第十六話「光指す道を進め」

 
 天使とダンス 第十六話「光指す道を進め」

 椅子の背に預けるに委せた身体
 光を遮るために力なく顔にあてられた腕
 今にも床に引きずりそうな投げ出されたままの髪。

 照度の落とされていない室内であるが、そのまま意識が飛びそうになる。

 まとまった睡眠をとったのはもう何日前だろうか。
 短い仮眠を重ねて押した無理に、体は悲鳴を上げ今にも反乱を起こしかけていた。
 しかしそれでも、このまま眠り込んでしまうことを、体の主は拒絶する。

 何かに突き動かされるような焦燥に駆られ、自分でも完全なオーバーワークだと自覚しながらも、フェイトは今回の事件に取り憑かれたように取り掛かっていた。
 眼の下に滲むまだ薄いくまも、このまま無茶を続けるのであれば、そう時間はかからずに化粧で誤魔化せる範囲を超える。
 そして、当然のことながら彼女の親友二人の耳には、直ぐにもその手の情報は流れこんだ。

 つい先程まで連続して二人から休め休めと、それこそ母親のようにお説教をされたのだ。

 実はそれ自体はフェイトにとって、煩わしいよりも嬉しいに分類される出来事である。
 真剣に心配する二人のお説教は、精神的疲労を溜めるより、張り詰めすぎていたフェイトの心を癒してすら居た。

 執務官、それも子供の絡む凶悪犯罪に関わる事の多いフェイトは、時に人の善意を見失いかねないほどのモノを見せつけられる。
 そこに掛けられる『ただ心配だから』という動機の、混じりっけない善意の説教は、心に溜まる闇を追い散らす光で、今も昔もフェイトを救う。
 だというのにフェイトが止まれないのは、ひとえに鑑識から送られてきた先日の結果故だ。

 生体ポッド

 それも自分の姉とも、自分自身とも言える存在が入れられていたものと同系列の代物。
 その意味は明白で、使用用途はほぼ間違いなくフェイトの予想した通りだろう。
 なにしろ、フェイトの予想を裏付ける物証まで出た。

 ――いや、わざと残されていた。

 まるで、そこにフェイトが来ることを知ってたかのように、見せ付けるように、嘲笑うように。
 破壊され、放棄された無残な残骸を、置いておいた。
 何故わざわざそんな真似をしたのだと問うたところで、理解できる答えが返ってくるはずもない。

 人間の尊厳と倫理を踏みにじるような違法研究を行う者が、まともな理性を有してなど居ないのだ。

 腕で顔の半分を覆ってなお、隠し切れない純度の高い怒りの表情をうかべ、フェイトはギリギリと歯を噛みしめる。
 普段は柔らかい雰囲気の、穏やかな女性である彼女を、こうまで変貌させるトリガーは。
 山積みに打ち捨てられた、実験体のものを映さぬうつろな瞳か
 研究資料として保管された、『少女だったモノ』達の悲惨な姿か。

 なのはに救われた自分が、次は彼女達を救う番だったのに……

 悪いのは単純明快、違法研究者たち以外ありえない。
 だというのに、多分に内罰的な傾向の強いフェイトは、そうやって自分を追い込んでしまう。
 こればかりは如何に並列処理で思考を巡らせようと、単純に解決していくわけではない。どころか複雑さは増していき、袋小路にとらわれ思考がとまる。



 なのはのように強くない――なのはにはなれない自分には、結局誰かを救う事なんか出来ないんじゃないか。



 疲労から弱気に陥った思考が、ついそんなことを考えてしまうのを、頭を振って追いやり椅子を軋ませながら身を起こす。
 そんなところは、なのはに救われた直後に直面し乗り越えている。
 結局自分は自分以外にはなれないのだ、たとえ容姿や遺伝子が同じであっても。
 だから誰かになる事を望むのではなく、自分を磨き高めるしかないのだと。

 皮肉にも今更そんな思いが湧き出てきたことが、フェイトに自身の凝り固まった身体と思考を自覚させた。
 肩を上下させるほど大きく三度、深く息を肺に落としていき、モヤの掛かった頭をクリアにする。
 くまが滲み窶れた容貌の中にあって、眼だけが澱みなく輝きを増すフェイトは、自らが薄っすらと笑みを浮かべていることを知らない。

 それは妄執に囚われた病的なものではなく、意地と決意と覚悟を刻みつけた決意の笑み。
 これを見ていれば、親友二人も早々にお説教を切り上げていただろう。
 普段は物腰が柔らかく、どちらかと言えば押しの弱い感のあるフェイトだが、やり遂げると心に決めた時には絶対に曲げず、譲らないと知っているから。

 救ってくれた手は優しく暖かくて、世界は残酷で冷たいばかりではないことを、思い出させてくれた。

 受け取った優しさとぬくもりを、次の誰かに伝えるためにも、いまは立ち止まってなんて居られない。

 
 
 ☆ ☆ ☆



 インフィニィはこのところ、ずっとまっすぐに歩くことに困難をきたしていた。
 今少し正確さを表現に求めるのなら、座っていようが、歩いていようが、寝ていようが、風呂に入っていようが、常に重心が崩れていた。

「……置いてっちゃうの?」

 感情の色のない硝子のような声がこぼれ落ちたのは、そんなインフィニティのすぐ隣から。
 向けられたのは、見上げた視線の先に有る岩のように大きな背。
 焔の爆ぜる音にも鼻をつく燻る煙にも、誰も反応を示さないが、三人を取り囲む情景は正常の範疇ではない。

 重厚な建造物の構造体であった部分は、今や破壊され崩れ落ちた物言わぬ瓦礫であり。
 電力が生きているのか、所々で炎とは違う光を発しているスパークが、漠然とした不安を周囲へと振りまく。
 全ての光景が、廃墟に訪れたのではなく、廃墟を創りだした事を示している。

「しばらすくれば騒ぎに気づいた管理局がやってくる。あれは純正の融合機だ、粗雑には扱われないだろう」

 口にした傍から塗装が剥がれていくような、子供だましの嘘にも成り得ない下手な説得。
 男の目はルーテシアについで、少女に横からしがみつかれたままの生活を強いられている、インフィニティへと向けられる。
 視線に気づいたインフィニティは、ゼストの方へと顔を向け、まっすぐに目を見あげた。

「なに?」

 今日まで長くはないが、共に生活をしてきた相手であるのに、インフィニティはチンクやルーテシアに対するような、あるいはガリューに接するような気安さがない。
 かと言って普通の子供が持つような、大柄な男性に対する恐怖感というものも全く見えない。
 ゼストに遠慮したり機嫌を伺ったりと、恐怖を感じている素振りが無いのだ。

「お前も、連れて行きたいのか?」

「いらない」

 ぶんぶんと首を振り、おくれて金の房と青空色のリボンがゆれ、あっけらかんと実に無邪気に即答した。

 子供は無邪気であるが故に残酷である。

 自分の興味があるものには、周りが見えなくなるほど熱中するが
 興味のない対象には、尋ねられることにすら嫌悪を向けたり意識にすら登らず
 そのことを少しも隠さずに、悪気なく平気で直線的な言葉にする。

 たとえそれが、今では失われた技術の結晶で非常に希少価値があり。
 再現することですら難しく、それが理由で今まで延々と実験を繰り返されてきた
 同情や憐憫を感じて然るべき相手であろうとも。

 興味の対象外であれば、飽きたオモチャと同様の存在でしかない。

 言われた相手が傷つくかもしれないとも、自分を嫌いになるかも知れないとも警戒せず、ただ無邪気に素直に思ったことをそのまま口にするのだ。
 それは子供の罪ではなく、諌め正さぬ大人の罪であり、学ぶ機会を与えられていない子供の不幸である。

 そうか、とだけ答えたゼストが歩き出すと、インフィニティは返事もせずにその横に並んで歩く。
 嫌っているわけでもなく、お互いに興味が無いわけでもない、ただ決定的に関心がないのだ。
 二人からは、すでに結論は出ており、先程の話題は終わったものとして心の内で処理され、欠片も気にもとめていないことが伝わってくる。

 インフィニティにしがみついたままのルーテシアは、二人とは違い赤髪の少女の存在に後ろ髪をひかれながらも、インフィニティと離れないためには寄り添って歩く以外になく。
 どちらを取るかと選択に迫られれば、やはり子供故に残酷に、迷わずインフィニティをとった。

 ちんまいインフィニティと、大男のゼストが並んで歩けるゆっくりとした歩調、どちらが相手に合わせているのかは語るまでもない。
 だというのに、ゼストの掛ける言葉は余りに足らず、注意らしきものをする素振りもない。
 つまりは気遣いが出来ぬのではなく、小さな子供の歩調には気づかえても、心の成長にまでは気づかえぬ不器用で実直な――その見かけの通り武人なのである。

 それ故に、インフィニティとまだ一緒に過ごせているというのは、皮肉にしてはスパイスが効きすぎているが。

 仮にゼストが諌め正そうとインフィニティに干渉すれば、その瞬間から彼はインフィニティの世界から消され、呼びかけや存在がそれ以降、彼女に感知されることはないだろうから。

 あるいは、たった今話題の焦点になっている『あれ』と同様に、インフィニティはゼストに向かい、あっけらかんと「いらない」と言うだろうから。

 だが薄氷の上に立つような関係を、どちらも上手くやろうと気を使わず、危ぶんですら居ない。
 踏み抜いてしまってもいいのだ、どちらにとっても。
 言い換えるのなら、次の瞬間何の躊躇いもなく殺しあうことも出来るのだ、それに見合うだけの理由があるのなら。
 今は争わないだけの理由があり、たとえ踏み抜いたとしても殺し合いはしない、そういうことだ。
 二人はある意味で似たもの同士であり、実力に天と地ほどの大きな隔たりがあろうとも、心理的に対等の関係なのである。
 
 その二人の間に不意に湧き上がった魔力光。

 『あれ』と呼ばれた手の平大の赤髪少女の力なく横たわる体の下に、ミッド式でもベルカ式でもない魔法陣が描き出されるや。
 同じ物が浮かんでいた、ルーテシアの上を向けた手の平の上に、一瞬にしてその小さな体が現れる。

「連れて行く。独りは……寂しいから」

 掠れるような小さな宣言に、異を唱えるものもやはり居ない。

 正解は多分ゼストの示した行動だろう。
 研究施設と思しき出来たての廃墟は、機能を完全に停止して入るものの、その研究内容や実験データをサルベージが不可能なほど徹底した、完全な『消毒』が行われたわけではない。
 となればデータのもととなったはずの、純正ユニゾンデバイスがその場になければ、襲撃者の手に渡った可能性は当然考慮され、そこから捜査の糸に絡みつかれる危険性が上がるだけだ。

 だが正解が常に最適解ではなく。
 正しいものが常に選ばれるわけでもない。
 たとえ正しくなく、最適ではないと判っていても、別の選択を選びたい時もある。

 確率より感情や可能性を優先して、迷わず選択することは子供の特徴で、特権とすら言えた

 ルーテシアが、インフィニティにしがみついているのがまさにそれだ。

 立っている時も寝ている時も、風呂に入っている間ですら、クラナガンでインフィニティが行方不明になりチンクが無事に保護して以来。インフィニティが生体ポッドから出てきた時とは比べ物にならぬほど執拗に、ルーテシアはその手を離さなくなっていた。
 その行動は正解でも最適解でもない、だがそうすることがルーテシアには必要で、それ以外の選択を選ぶことをルーテシアの心は拒絶した。

 管理局のお膝元では強力な探知魔法は使えず、使えたとしてもインフィニティをそれで見つけることは出来ず、念話も出来ないインフィニティが大都市部に消えた恐怖。

 ルーテシアは、チンクという他人と共同生活を送ってきても独りだった。
 今までもこれからも、当り前に続いていくと思っていて。
 その事に疑問を持つどころか、意識に上ることすらなかった。

 ルーテシアは、自分が孤独であることを知らなかった。

 孤独の意味すら知らず、凪いだような心は何も感じず、全ては通り過ぎていく事象でしかなかった。

 だというのにインフィニティは、頑なに孤独で居るルーテシアの心に、まるでスキップでもするような気軽さで踏み込み……
 いや、ルーテシアの目の間で、地雷原をスキップで通り抜けるような危なっかしい姿を見せつけ、ルーテシアの心に感情の芽を芽吹かせ。
 心配させ、恥じらわせ、怒らせ、ついにはケンカまで成立させてしまった。

 その代償と言えばいい方が悪いなら、ルーテシアの凍りついた心を溶かすことと引き換えに、しがみつかれることを強いられている。
 これを不幸や不自由と呼んではなるまい。
 そもインフィニティ自身がそれを不幸だとも、強いられているとも感じていない以上、周りがとやかくいうべきものでもない。

「そう言えば、この間のもハズレだったんだよね?」

 インフィニティが振った話題は、見事にルーテシアが『あれ』を転送で引き寄せた事に全く触れず。
 ルーテシアも手の上に乗る赤髪の少女の存在よりも、インフィニティの言葉に注意を向けた。

「あれはドクターからのお願いで、ちょっと手伝っただけだから」

 直ぐ横で同じホロ・スクリーンを見ていたはずなのに、全く話を聞いておらず状況を理解していなかった事を、普通に告白するようなインフィニティの問に、ルーテシアが薄く笑う。

 くぁ~と妙に可愛らしく伸びをしながらあくびをし、口をむにゃむにゃさせながら目を瞬かせ。
 ちょっと眠そうな様子のインフィニティが、ついで投げ掛けた言葉に、ゼスト、ルーテシアという無表情の権化とも言える二人は、あっさりと目を見開かされる。

「それじゃルーティは何を探してるの?」

 言葉通りに受け止めるのであれば、生体ポッドから出てより今まで、インフィニティは目的のものを知らずに、ルーテシアの探しものに付き合っていたということになる。
 スカリエッティが今この場にいれば、手を叩いて笑いながら、涙を流して大喜びしただろう。

 インフィニティは別に、ルーテシアの探しものに興味が無いわけでも、真面目に探さなくていいやと思っているわけでもない。
 『それを手に入れれば、心を取り戻せる』という、最初に出会った時のルーテシアの言葉を忘れるはずもなく、ルーテシアのためにごくごく真剣に探しものに取り組んでいた。
 先のあくびも、退屈や飽きから出たものではなく、ここ数日で色々と考えて眠りが浅いのと、常に自分の体に誰かが触れているという状態に対する疲労故。

 つまりはルーテシアが原因として大きいのだが、インフィニティ本人がそれに気づいていないのか。あるいは気づいていて尚、それを告げて引き剥がすことを嫌がったのか。
 兎にも角にもルーテシアに一日中へばりつかれながら、ルーテシアの心を取り戻すための探しものをするという、ルーテシア中心にインフィニティの生活は昨今成り立っていたのは間違いない。

 そこで、この発言である。

 インフィニティのルーテシアに対する、無条件の味方っぷりに呆れればよいのか。
 今までの時間を一体何を探していたのかと、訝しめばいいのか。
 それとも一番最初に尋ねるべきことを、今まで放置していたことに、怒ればいいのか。

 ルーテシアはそのどれでもなく、ごく普通に小さな声でささやくように答えた。

「No.11のレリックを探してるの。それが見つかれば、お母さんが目を覚まして私は幸せになって、心が生まれるんだって。ドクターがそう言ってた」

「ルーティ、それはウソだよ」

 フニャッと笑ってインフィニティはそう告げる。

「…………え?」

 ルーテシアとゼストの二人は、再びインフィニティの言葉に振り回される。
 完全に動きどころか表情までも固まり、声ひとつあげられない二人に構わず、インフィニティは言葉をつづけていく。

「ドクターが『レリックがあれば』って言ったんなら、別の何かでも代用できるもん。代用がダメでも同じものを創るとか出来るよ、ドクターが本気なら」

 何を根拠にしてかをまるで説明せず、それでも何故か自信満々に言い切るインフィニティ。
 だが、その言葉の内容を子供の誇大妄想だと笑い飛ばす事は、スカリエッティと言う人物を知っていれば知っているだけ難しくなる。
 
「何でそんなウソつく必要がドクターにあるの?」

 ポツリと返すルーテシアの言葉には、インフィニティに言われた事を、否定どころか前提として進められており、ゼストはそれを否定も肯定もせず言葉を挟まなかったが、苦い表情を浮かべる。
 
 実験体の稼働データを収集するためだ。

 呪い殺すような呻きを、ゼストは胸中に留めて漏らさない。
 自分たちが実験用のモルモットなのだなどという残酷な現実を、突き付けられる訳がない。
 その扱いが残酷だと、理解も出来ない程に幼い少女になら尚更だ。

「う~ん、ちー姉たちの安全のため?」

「どういうこと?」

「いっつも同じ攻撃だと、相手に読まれて待ち構えられるから危険でしょ?」

 インフィニティは、そんなゼストの気遣いもあっさりと踏み越え。
 もっと悲惨でより残酷な答えを、ルーテシアに手渡した。

「だからルーティとかゼストとか、別の攻撃手段が欲しいんじゃないかなぁ」

 手段の多様化による犯人像の撹乱と、対応策の予測範囲や想定範囲の拡大を狙った煩雑化。
 スカリエッティの狙いはそこだとインフィニティは言いながら、同時にそれは別にルーテシアでなければならないわけではなく、幾らでも代替の効く代物。
 つまり、いいように使い捨てられる捨て駒だと、自分を含む全員の立場を言いながら。

 本人はその事を、全く気にもしていないのだ。

「お前はそれでいいというのか?」

「別に目的のじゃまにならないからいいよ?」

 スカリエッティがやらせようとしていることが犯罪――それもかなりの重犯罪の片棒担ぎ――で、管理局の目どころか矛先を向けさせる為の、わかり易すぎるデコイ。

 古強者のSクラス魔導士と、レアスキル持ちの幼い少女魔導士

 魔法を基幹に据え、それをもって平和を維持する守護者の立場にいる管理局にとって、最も気に障る犯罪者像であり、放置することはもとより後回しにすることすら出来ない相手。
 管理局が二人を注視し、その正体が知れれば知れる程、向けられた視線は強固に二人に拘束され、外すことの出来なくなる蟻地獄。
 更には、PT事件を知るものであれば、すぐにもその正体を訝しむ少女まで行動を共にしているとなれば、最優先で処理すべき三人組である。

 行き倒れていた所を救われ、高性能デバイスまで貰ってしまった恩があるのだ。

 多少の無茶は聞くのはわかるが、矢面に立つことになると、本当に理解しているのか?

「恩返しのためというだけなら、そこまで巻き込まれることはない」

「恩返し?」

 不思議そうに首を傾げるインフィニティは、澄み切った瞳をゼストに向ける。
 そこには何の虚飾も誤魔化しもなく、それ故にゼストは気づきえた。
 インフィニティは本当に、恩返しのためにやっているのではなく。
 それどころか、恩を感じると言う精神作用自体を理解できない……『知らない』のだ、と。

「そろそろ会えると思うんだぁ」

 インフィニティの無邪気な笑みとともに漏らした言葉に、ルーテシア誰にとも聞き返せず体は無意識に震えた。

 2015.01.11


   

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