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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第五十一幕「気遣いと距離感」

 
 第五十一幕「気遣いと距離感」

 空気は氷のように張り詰め、振れる肌をひりつかせていた。
 吹きすさぶ風は、桃色の小さな花弁を散らしながら通りぬけ
 ただ静かに今から始まる騎士同士の戦いを、見守ることを決めたかのように
 一度、一際大きく吹き抜けると、舞っていた桜吹雪は、どちらにも引かれること無く
 ただゆっくりと地に吸い込まれていく様に落ちていく。

「因縁の対決って、先輩の国では言うんでしょう?」

 口角を吊り上げながら、凄味のある笑みを浮かべるフィオナ

 その身は既に鎧に包まれ馬上にあり、ヘルムの留め金を自分自身に教えるように、大きな身振りで音を立て掛ける。
 視線の先には、静馬ではなく一人の少女騎士の姿
 いや・・・一人の少女騎士と、その周りを囲むように取りまく友人達の姿が有る。
 故に、フィオナは、そういう顔で笑う事を選び、そうするしか無いのだ。
 たとえその内心で、どれだけリサが調子を戻したのか。
 敗北のショックから立ち直れたのかを、心配していようとも。

「いいや、それは私の祖国に対する間違った認識だね。
 うちの国ではこう言う、『赤い糸で結ばれた運命の二人』とね」

 吹き出しかけるのを慌てて手で抑えたのは、隣に立っていたスィーリア。
 一瞬きょとんとした表情を浮かべたフィオナが、次の瞬間には真っ赤な顔をして静馬を睨むが。
 静馬は飄々としたいつもの態度のまま、物理的に今にも噛み付いてきそうなフィオナに、いかにも涼し気な顔をして軽く肩をすくめる。

「恋する乙女とその想い人との、大観衆の面前での逢瀬なのだから
 私は何も間違ったことは言っていないよフィオナ」

 それはいつもの静馬が口にする軽口の類・・・と、静馬に近しいものなら聞き流しただろう。

 だが、学園側から割り当てられただけの、ベグライターである一年生の女生徒が、悪名名高い『無敗の騎士王』の事など詳しく知るはずもなく。
 どこか気まずそうな表情を浮かべつつも解らないように、一歩二歩とゆっくり後ずさる姿にフィオナが焦って両手と首を振り、身をかがめ静馬の耳を引っ張りながら、小声で怒鳴りつける。
 
「ちょっと先輩!?大きな声でそういう誤解を生むようなこと言わないで下さいっ
 私そっちの趣味はない、普通の女の子ですからっ」

 あっさり悪ぶっていた態度を静馬に崩されるフィオナに、遂に耐えられなくなったスィーリアが、春の青空のように晴れやかな笑い声を上げる。

「レッド・・・流石に、っく・・・それはフィオナが可哀想だ・・・あはははは」

 落ち着いた大人っぽい面しか見たことのないスィーリアの、実に少女らしい楽しげな笑い声に
 フィオナのみならず、ベグライターの一年女子も、此方の様子を伺っていた生徒たちも皆、目を丸くして驚き
 親しげに静馬の肩を叩く姿に、更に驚きを重ねる。

「これから試合をする後輩に、もっとなにか言うことって無いんですか?」

 憮然とした表情を浮かべ、憎々しげに睨むフィオナだが、顔の赤みはまだ引いておらず
 だそうですが?先輩、と両手の人差し指でスィーリアにしれっと対処を押し付け、スィーリアの笑いの発作を止めさせるが、そこは流石にスィーリア
 フィオナとは付き合いの長さが違うのか、あっさりと静馬に逆襲をしてのける。

「なんだ、レッドともあろうものが、こんなに可憐な少女の願いを叶えないのか?」

 此処で反論してしまえば、フィオナを侮辱することになりかねないと早々に悟って、静馬もあっさりスィーリアの反撃に降伏し
 態とらしくため息を付いて見せながら、軽く肩をすくめる。

「ジョストの世界には、こんな諺がある『ドラゴンは騎士を育てるが、騎士はドラゴンを育てない』
 この言葉には色々解釈が有るんだが、さて君の解釈はどうかなフィオナ?」

 ・・・ああそれから、と槍をフィオナに差し出しながら、代わりにタオルを受け取り。
 さもついでのように軽い口調で静馬が付け加えるように言葉をつぐ。

「リサの仕上がりは完璧だそうだよ。
 私にも・・・リサはスランプから完全に復調している様に見える、恐ろしいことにね。
 なのでまぁ、君なら軽くストレート勝ちをするだろう」

 大仰な仕草で優雅に一礼をし、なれた仕草で片目を瞑って見せ
 
「何しろ君は、私の勝利の女神であり。
 ドラゴンすら倒す騎士になるのだそうだから」

 そんなフィオナの試合が始まろうかという直前の会場、静馬の隣に並んで見学していたスィーリアの元に、一人の女生徒が早足に近寄ってくる。
 額にはじっとりと汗をかき、息を軽くあえがせながら、やっと見つけましたーと脱力したように告げる相手の脚がもつれるのを、静馬の手が抱き留めるよりはやくスィーリアの手が支え。
 二言三言、小声で言葉を交わすうちに潜められたスィーリアの声の調子が変わり・・・ちらっと静馬の顔をどこか睨みつけるように一瞥した後、女生徒の肩を抱くようにしてフィオナと静馬から距離をとるよう歩き出す。

「済まないが少し席を外す、その間に始まってしまったなら私の分も応援を頼むぞレッド」

 それを見たフィオナが、心底楽しそうに意地悪く笑いながら、態と聞かせるために吹き出してみせた。

「静馬先輩、その腕どうするんですか?」

 まだ伸ばしたままの、空を切った静馬の右腕を、顎で示して見せながら。
 珍しく来た反撃チャンスを見逃さず、これ幸いとばかりにニヤニヤと小憎らしい表情で、止めまで刺しに来るフィオナ。
 残念ながら彼女は騎士で、武士の情けは持ち合わせていないらしい。

「勿論、次なる御婦人の危機に使うつもりだよ。
 そういえば以前フィオナに、そういう時は私の名前を呼んでくれとお願いしたことが有ったね」

 あっさりと追撃をかわし、動揺もない様には一片の曇もない。
 未だこういう言い合いでは言い負かすことは愚か、影を踏むことすら出来ないでいる

「っ!スケベ、何時まであんなこと覚えてるんですか!」

 軽く顎に指を当てながら、静馬が目をつぶる。
 
「うん、今考えてみたのだが・・・きっと私は死ぬまで忘れることはないだろう」

 真正面から凄くいい笑顔で、穏やかに笑われ
 ようやく赤味が引いてきていたフィオナの顔を真っ赤に染めたのは、怒り故かはたまた羞恥か
 八つ当たり出来る物も、投げつける物も近くには何もない馬上で有るため、フィオナはきゅっと手を握りしめ身体は小さく震えていく。

「あぁ済まない、どうにも私はデリカシィというのに欠けて・・・お手をどうぞ」

「トイレ我慢してるんじゃないわよっ!この変態っ変態っ変態っ!」

 うら若い乙女が、トイレなどという言葉を大声で怒鳴りつけてしまえば
 予選に参加する騎士も、それを観戦に来ている一般生徒も、いったい何事かと一斉に声の方を振り返り
 其処かしこで、クスクスと笑い声が漏れ出すのは、当然の結果で・・・

「ちょっとっ、はやく助けなさいよ先輩っ緊急退避!」

 馬上から手を伸ばし、理不尽に静馬に文句をつけるフィオナに、文句を言い返そうともせず
 手慣れた様子で軽々と抱き留めると、人垣をするすると駆け抜けて静馬は人気のない場所までフィオナを抱えたまま走って抜けた。
 本戦とは違い予選での試合会場は、野外の開けた闘技場であるため選手控室や、試合場と観客席の敷居が曖昧である。
 それでも馬の控え場やランスラックの辺りは、出場選手以外立ち入らないという暗黙のルールがあり。その辺りまで来てしまえば、衆目も歓声も少し距離をとれるのだ。
 コンセントレーションを高めたい選手が、この辺りには多くいるのもそんな理由である。

 つまりはこの辺りで騒いでしまうと、周りの選手たちからは恨みの目で見られる。
 なにより緊張でガチガチに成っているのだから、周りの事など眼にはいらないという計算と共に
 文句を言いたいフィオナを連れてくるには、静馬的にも都合が良かったのだ。

 

 そういう複雑で入り組んだ状況により、こうして参加選手でもなければ、ベグライターでもない静馬が、フィオナの直ぐ側に居れるのだが
 逆を返せば、そうでなければフィオナはあんな恥ずかしいことを、公衆の面前で怒鳴ることもなく・・・
 まぁ結論から言えば、静馬に引っ掛かってしまったフィオナが悪い・・・主に運が。

「リサにはこの間の美桜嬢の様に、『ベグライター集団』が付くのだろうが、フィオナはそれに抗議するつもりは・・・どうやら無い様だね。
 私もそれが正解だと思う、『ベグライター集団』を引き連れている限り、リサはきみには勝てないしスィーリア嬢にも勝てない」
 
 ・・・え?

 相変わらず、どうしてそういう結論が出るのか、全く途中経過が不明だが・・・
 唐突にまともなことを言い出した静馬に、面食らったフィオナがぽかんと口を開けて凝視する。

「どうして・・・ですか?」
 
「天才という言葉に皆が騙されているが
 リサは励まされて勢いに乗って押すタイプでも、感覚的に戦いをこなしていくタイプの騎士でもないからね。
 冷静に整理して論理的に正解を導き出す時間と指標が必要なタイプで・・・
 『頑張れ』や『大丈夫』『自分を信じて』と言われれば、言われた分だけ自分の内に迷いを残すタイプだ」

 我が麗しのベルティーユ嬢であれば、逆に勢いに乗っただろうから、予選で当たらずに良かった。

 片目を瞑って見せながら、静かに紐解いていく謎掛けの答え
 だから静馬は言ったのだ、軽くストレート勝ちをするだろうと。
 ジョストのことに関しては、ふざけも嘘もない

 それが絶対の真実かどうかはわからない、が少なくとも静馬の中では事実なのだ。

「ベルティーユ先輩を侮辱するなら怒りますよ。
 あの人は、相手にそれを許すから、自分もそれをやるなんて事はしない。
 じゃなかったら、あんな馬鹿みたいにフェザーズフライ狙いに行くはずないでしょ」

 トーンの下がった声で、鋭い眼差しを向けてくるフィオナに、静馬の口角が吊り上がる。
 その表情を目にした瞬間、フィオナは悟った・・・この会話もまた罠だったのだと。

 ・・・っまた、やられた!

「だっ、第一静馬先輩はリサの試合を見てないんでしょ!
 なのに無責任にそんなこと言って、一体何を根拠に・・・」

 反射的に思わず反発していってしまったのだが、言葉を口にしながらフィオナもだんだん、自分の言葉がそれ程間違っていないことに気づく。
 静馬自身が以前言ったのだ、リサの試合を見たことがないと。
 ということは、静馬が騎士としてのリサを見たのは、謹慎明けのフィオナとの試合だけ。
 あの状態のリサを見て、全部わかった気になっているなら、リサを見誤っている。

 本当のリサは、あんなものじゃない!

「確かフィオナも一緒に居たはずなんだが・・・
 『子猫のように可愛いね』と挨拶をしたら、彼女は真っ赤になって
 理由を見つけてその場から離れた事があったのを覚えているかな?」

 フィオナが思わず頭を抱える、一体どこの世の中に『子猫のように可愛いね』が、挨拶だと思う女性が居るのだろう。
 それなのに、言った本人は挨拶だと言いはるどころか、疑問にも思わず、自分がおかしな事を言っているという自覚すらないときた。
 怒っていいのか呆れていいのか、罵ればいいのかすら解らず、深い溜息が思わず突いて出る。

「・・・ええ、ありましたね」

「いや、そんな感心した目で見られるほどのことではないよ」

「かっ!・・・んんっ、感心なんてしてません。
 もうどうにもならない変態気障男なんだなって、ちょっと同情しているだけです。
 それで、その挨拶が何か?」

 怒鳴りかけたのを何とか抑えた反動で、声も口調も投げやりな感じに成る。
 先輩に向かってあまりにも失礼な態度なのだが、静馬はそんなことを気にした風もなく
 いや、まいったなぁ、などと頭を掻いて少し視線を落とした。

「いまのが答えだったんだが、なんと言えばいいのか。
 上手くは説明できないが、仮にフィオナに同じことを言ったら、場所にもよるが照れて大声で言い返してくるだろう?
 だが、リサは『理由』を見つけてから、その場を『離れた』んだ」

 たった一言の――本人曰く――挨拶を交わしただけで

 試合を見たこともない騎士の傾向を・・・見抜いた?

 なにそれ?えっ?静馬先輩って・・・もしかして、凄い騎士なの?

「本気のリサを相手にして勝ちたいのなら、本戦で当たるしかない。
 この間の試合のように、『リサの戦い方』で勝つのではなく『フィオナ』が勝ちたいのならね。
 リサが予選通過することを祈ってるよ、君のために」

 遠く歓声が上がるのが聞こえ、フィオナが我に返り、理解する。
 前の試合が終わったことを告げるその歓声は、勝者と敗者が生まれた事を示し
 次の試合の選手は直ぐ入場になるので準備して下さい!と、大会運営委員らしき女生徒の声に二人は並んで歩き出す。

「なに、そんなに緊張することはない、相手はたかが天才だ。
 私の勝利の女神が負けるいわれがない。
 まぁ・・・」

 と横を歩く静馬が、フィオナの顔からゆっくり視線を下げて、有る一点で止まり目を逸らす。

「ちょっとっ、なに目を逸らしてるんですか!
 違いますからね、リサより私のほうが勝ってますからね!」

「ああ、いやそうだきっと勝ってるとも、鎧の上からでは判り難いだけで」

 相変わらず目を合わせずに、全く信じていないような口調で、頷いてみせる静馬の態度
 まるで熱り立つ子供を宥めるように、ただ合わせているだけにしかフィオナには見えず
 セクハラ発言に羞恥心が煽られたためか、全く自分の言うことを信じない態度に対する苛立ちか

 真っ赤な顔のフィオナが、乾いた音とともに

 手の平の大きさ分だけ、静馬の頬に顔の赤さを共有させた。

 2013.08.21


   

~ Comment ~

更新御疲れ様です 

身体の調整から帰ってきたら2話も更新されてた・・・
まるで狐につままれたような思いですw

他の話にも手をつけられてるようで、お疲れ様です

しかし、静馬もその手を話をするとは・・・
紳士だと思っていたら、微妙に違うようで、ちょっと残念です
変態には磨きはかかっておりますがw

改めまして、更新御疲れ様です

Re: NoNameさん 

コメントに感謝を。

他の書き手の方も大きくは違わないかと思いますが
基本的にお話の大まかな筋、そこへ至る展開、それぞれの心情の変化は
頭の中で組み上がってから書き始めるので、使える時間と気分が乗ればと言う感じです。

問題は別のことに興味や時間を取られると、回せる労力がなくなるということと
時間とともに自分の中では細部までお話が出来上がるので
『書かなくてもいいかな』と思い始めるということですね。

こうしてコメントいただけると、見ている方が居ることを実感でき、続ける原動力とさせて頂いております。

『その手の話』が胸のことでしたら、静馬にはベルティーユさんの胸を真正面から凝視したという前科が
思春期の健康な男子なので魅力的な女性を前にすれば、多少なりとも視線が言ってしまうのは自然といえば自然ではないかと思います。
それを誤魔化さずに宣言し、凝視するのは流石にいかがなものかとは思いますが。 

読めてよかった 

初めまして。
この作品の二次SSがある事にまず驚きました、そしてこの主人公の台詞周し。
よく思いつくなと、感心してしまいます。
特にベルディーユとの友情といいますか、意思疎通の部分は、信条を持つ者の凄みを感じますね。

フィオナは原作では、いまいち小憎たらしい少女としか映りませんでした。
しかしこの話を見ていくと、新しい視点に気付かされます。

この物語のフィオナがどういう結末を迎えるのかは、非常に興味深く、楽しみにしています。

Re: mmkさん 

大変遅くなりましたが、コメントをいただけたことに感謝を。

WRは、とても面白いお話ですし、出てくるキャラもとても魅力的であるのに、SSを余り見かけないのが残念でなりません。

少々うがった見方や、角度をつけた視点でWRという作品を私のフィルターを通してみると、こう見えましたというお話なので私本人としては捏造も改変もしていない『つもり』では有ります。
ただ、貴弘という主人公の視点からみれば、ああみえるというだけで。
ベルティーユさんは原作でもやはり麗しいですし、フィオナは原作でもやはり可愛らしい、そう思っています。

読んでくれた方が『あれ?もしかして』と思って、もう一度WRをやり直してくれたら、ちょっと嬉しいですね。
そして、公式で出していただけたmore&moreで、ベルティーユさんの可愛らしさも堪能してもらえたら、嬉しいかぎりです。
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