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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第四十三幕「少女の選択」

 
 ずっと凪いでいた心に吹き込んだそれと、時を同じくして優しく撫で付ける様な暖かい風が、金の髪を弄って行くのを頬に感じ。
 フィオナはもう一度ヘルムの留め金を意識して指でなぞった。

 そう言えば、最初に会ったのもこうしてヘルムに手を掛けていた時だった。

 周囲を見回し、目当ての人物がゆっくりと歩み寄ってくる姿を見つけて笑みを浮かべ掛け
 直ぐ様その表情が、普段以上に不機嫌な藪睨みへと変わる。
 件の人物が、一人ではなかったために。

 なんでベルティーユ先輩と一緒なのよ、いやらしい。

「そう怖い顔をしないでくださると嬉しいのですけど
 私、今日は友人としてフィオナの試合を応援に来ただけで、敵情視察と言った意図はありませんのよ?」

 たおやかに微笑みかけられてしまえば、先日の食事会の失態を思い出し、フィオナの方も僅かな赤面と反発は浮かぶものの、肩透かしをされてしまう。
 そも最初からフィオナはベルティーユに対して、反発的な態度をとるつもりはないのだ。
 数度の会話より学習している、この眼の前のふんわりと笑っている女性を評するのに、学園で噂されている言葉では表面しか表せては居ないのだと。
 どれだけ強く当たろうとも、全てが暖簾に腕押し、ふんわりとその笑顔のように受け止められてしまう。

「別に、そんなふうに思ってなんかないです
 探りたかったら好きなだけ探ればいいです、そんなことしても意味が無いでしょうし。
 それと、怖い顔は生まれつきです」

 顔を背けて鼻を鳴らすフィオナに、曲げた人差し指の背を自らの唇に軽く触れさせながら、鈴の音のように明るい笑い声をベルティーユが返す。

「そんな事はありません、フィオナが照れた可愛らしい顔を私は知っているのですから。
 でも、そう言われた以上、探りはしませんが・・・見せて頂きますわ。
 静馬さんの勝利の女神、その強さを」

 声は柔らかく、口調は優しいまま
 ベルティーユは笑顔を浮かべたままの、真剣な瞳で
 馬上のフィオナを見つめ、問う

「相手は貴女より実力は劣っているようですが。
 独りで戦って、勝てるのですか?」

 ベルティーユにも解ったのだろう、一年生それも入学してまだ間もないというのに
 安定感とも安心感とも言えるものを、フィオナの馬上での鎧姿から感じ取れることを。
 フィオナは既に、強い騎士特有の雰囲気を身に纏っていると。

 であるのなら、既にパートナーも決まり万全であってしかるべきである。
 だというのに、練習試合とはいえ大会も近いのに、フィオナの側にはベグライターの姿がない。
 現状が、自分に自信を持ちすぎた為に慢心し、ジョストを侮った初心者の姿なのだと

 故に、フィオナの言葉に、自身の思い違いに気付かされる。

「独りじゃないです。私には、翼がある」

 優しく愛馬の首を撫で付けながら、ベルティーユに真直ぐに目を向け、きっぱりと断言する。
 僅かに驚いた表情を浮かべたのも一瞬、ゆったりと頷き返し、ベルティーユは笑み返す。

「では、その翼がどれ程素敵なものか見せていただきます。
 そして、貴女がその翼を得て、どれ程翔べるのかも」



 * * *



 試合の結果は、圧勝というほんの一言で言い表せるものだった。
 開始直後、相手の身体が緊張で硬くなっている所を、胴への先制2ポイント
 それによりさらに焦りで余裕がなくなった所で、フェザーズフライ。

 たった二本での、正しく電光石火で試合を決めてしまった。

 余りにも一方的な完封に、見物人の理解が追いつく前に試合は幕を閉じる。

 敗者に声どころか、視線を向けようともせず。
 己の勝利に浮かれるでなく、傲るでなく。
 フィオナは、見慣れた何時もどおりの姿で馬を歩ませて戻ってくると、黙って静馬を見下ろす。

「やあ、おかえりフィオナ」

 軽く片手を挙げ、静馬はそれだけを告げた。
 それをジトッとした眼で睨みながらも、ベーッと子供のように舌を出し、黙って静馬の腕に槍を押し付ける。
 ごく自然にフィオナの手から槍を受け取ると、静馬は代わりにタオルを手渡した。

 実況の少女が、インカムに向かい興奮した口調でまくし立てる声も、どこか遠くに
 フィオナが投げつけるように、手綱を放り出す。

 やっぱり・・・何も言ってこない・・・

「静馬先輩となんか、話すことはないです」

「それは奇遇だね、私も別段此処で話すことはないよ
 ただ、君の勇気と決断に感じ入っていたところだ」

 肩をすくめ、試合を褒めるでなく
 かと言って、そのやり方を非難するでなく
 常と変わらぬ飄々とした態度で静馬は背を向け、手綱を引いて歩き出す。

 やっぱりだ・・・このお節介男が試合前に何も言わなかったのは、やっぱりそういうことだったんだ。

 静馬先輩は、私がこうするって・・・わかってたんだ。

 二人のやり取りは早朝練習の時のまま、余りに自然に行われるそれに周りが唖然としている間に、その場を後にする。
 しばらく無言のままに、ただ馬の地を踏む規則的な足音だけが二人の間で流れていたが、沈黙の重さに遂にはフィオナが音を上げた。

「・・・言いたいことがあるなら、言えばいいじゃない」

 そっぽを向くようにして投げかけられたのは、ともすれば聴き逃してしまうほどに小さな声で
 静馬はといえば、軽く肩をすくめただけで、フィオナの方を振り返ろうともせずに、そのまま歩を進める。

「見ていたなら解るでしょ、観客の何人かは言ってた。
 全部、戦い方も試合の運びも、全部リサのコピーだって。
 そんなことしないで、騎士らしく正々堂々戦えって・・・言えばいいじゃないっ」

 試合会場でのざわめきは、ほんの二本で試合を決めた圧倒的勝利に対することへのものだけではなく
 フィオナの言葉の通り、チェンジオブペースから、試合の運び、そして槍の軌道に至るまでフィオナのそれは全てリサの動きだったことへの驚き。
 それがフィオナが騎士であると認めた静馬が、騎士らしくはないと思うであろう行為への、消極的な非難の渦。

 ふむっと顎に手を当てながらようやく足を止め、馬上のフィオナを見上げる。

「それの何処が悪いんだい?」

「・・・え?」

「こうもあっさり試合に勝利した者に非難しろというのかい?
 しかし、折角言いたいことがあれば言えとお許しが出たのだし、1つだけ。
 明日の放課後、ケーキでも食べに行きませんかお嬢さん、一人で行くには少々恥ずかしいもので」
 
 あーもー、忘れてた・・・静馬先輩ってこういう奴だった。

 まともな非難なんてするはずがないのよね。

 ごく普通の反応を求めた私が悪かった・・・反省

「それじゃ聞きますけど、今のは静馬先輩的には有りって事なんですか?」

 目の前で、ゆっくりと男の人が笑顔に変わるのなんて、初めて見た。

「君はたった二本で試合を決めた、これは現実的な最短とはいえないほどのはやさだ。
 その試合を非難するというのであれば・・・『何故一本目でフェザーズフライを決めなかった?』と言う以外にない。
 まさか私に、そんな非常識な発言を期待していたのかな、フィオナ姫は」

 全然似合わない気障な仕草で片目をつぶってみせる静馬に、フィオナが面食らって言葉を告げられず、それでも首を振ってみせると
 よろしい、と言わんばかりに静馬は大きく頷き、笑みを深めた。

「もてる最高の選択だった、と言う事は結果が示している。
 であるのなら、それ以外を選ぶことこそ、手を抜いたということになる。
 ならばそれこそが、相手への、そしてジョストへの侮辱と私は考えるのだが、どうだろう?」

 それとも・・・と、わざと大仰に腕を広げながら首を傾げ、静馬はフィオナの瞳を見据える。

「『それはリサのスタイルだから』などと幼稚な物言いをする、と思われるほど私は君の前で情けない姿を見せていたのかい
 物事の習得は須く模倣より始まる、自分より秀でたる相手から学び身に付ける、それを学習と成長と人類は名付け、それらを促進させる施設として、学校なんてものを創ったんだ。
 その学校で、学習をし成長をしたものを、非難しろと言われたのは初めてだ」

 静馬先輩には、多分本当に言いたいことは特別になくて
 私が言われるだろうと身構えている言葉だけを綺麗に潰していった。
 そうされてしまえば、私は本音をさらけ出してしまわざるをえないからだ・・・

 この状況に持っていったこと自体が、静馬先輩が私の本音を解っているという証で
 つまりは・・・目の前の変態気障男は、嫌ったらしい仕草より一層気障なことを無言で言っているのだ。
 『私の前だけなら、一人で抱え込んでいる本音を、言ってしまっても大丈夫だよフィオナ』と

「なんで、怒らないんですか?」

 問い掛けに帰ってきたのは、肩をすくめた仕草と静かな声

「怒られたいのかい?」

 言われた言葉が耳から入り、頭に届いた時点で頬に血が上る。
 自分が誰かに、真正面から非難して欲しがっていたのだと。
 それに怒鳴り返して、自分は間違っていないと、自分に強く言い聞かせたかっただけなのだ、と。

「盗むという言葉面に騙されて人は本質を見失い、非難するが
 見て、真似てみて、己のものにするという行為は、習うよりも一段深い会話をすることになる。
 『技を盗むためにリサの側にいたのか』と理性を捨て去って、感情で怒鳴れるほど、私には誰かの技をあっさりと身につけられる才能はない」

 第一、と一旦短く言葉を切り静馬は小さく首を振る。

「君がどれだけの努力をして身につけたのかを、私は毎朝見ているからね」

 静馬の手がそっと差し伸べられ、無意識にその手を取りながら、ようやくフィオナは自分に割り当てられた厩舎の前に着いていることに気付かされる。

「・・・上体を屈めてもらえると、助かるかな」

 言われるがまま、素直に従うフィオナの手が手綱を離れるのを確認して、静馬は両脇に手を差し入れてフィオナの細い身体を軽々と持ち上げ、そのまま横抱きに抱き上げる。

「わっ、バカ、スケベ、変態!
 なに勝手に人を抱き上げてるんですか!
 普通そのまま下ろすでしょ、信じらんないっ」

 すぐ耳の側で顔を真赤にしたフィオナに、耳鳴りがするほどの大声で怒鳴りつけられ、さすがの静馬も顔をしかめ僅かに顔をそらすも、すぐに苦っぽく笑みを浮かべて肩をすくめる。
 
「ヘルムを受け取ろうと伸ばした手を握られたのだから、これくらいの勘違いと役得は許してもらってもいいのではないかと、いち男性として主張したいのだが。
 暴れると危険なうえ、余り大声を上げると誰かに見られる可能性が跳ね上がると、忠告しておくよ」

 その一言で、フィオナは怒鳴るのも暴れるのも止め
 顔を真赤にしたまま、腕の中から恨めしそうに睨みつける。

「さ、さっさと厩舎の中に行ってください。
 此処にたったままじゃ、それこそ誰かに見られますから」

 声を潜めて急かすフィオナと、彼女の愛馬の鼻面に背を押され、静馬はフィオナを抱き上げたままどこか鼻歌でも歌い出しそうな程上機嫌に厩舎の中へと歩を進め・・・すぐに、その足を止めた

「ところで先程の返答は何時もらえるのかなフィオナ」

「は?何のこと、あっ・・・全部先輩持ちでなら、ちょっとだけ一緒に行ってあげなくもないです」

 小さく鼻を鳴らしてそっぽを向きながら、フィオナがわずかに目を細める。

 翌日、予想していた倍以上のダメージを静馬の財布が受け
 その晩、体重計からフィオナがそれ以上の反撃を受けたのは、また別のお話。

 2013.02.10


   

~ Comment ~

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Re: 鍵付きコメントさん 

コメントに感謝を。

ご指摘箇所修正いたしました。

頭も悪くないし、なんでも小器用にこなしていきそうなのに
何処か子供っぽいのに大人ぶり、人との付き合い方が酷く不器用で怖がりと
リサとの共通点が多いように私のフィルターを通すと見えるフィオナですが

原作と全く別物ではなく、角度を変えるとこう見えるのか、程度に楽しんでもらえたら嬉しい限りです。

おもしろかったです! 

恋姫のアフターを期待して日参していたのですが、
原作は知らないものの、この方の書いたものならと読んでみて正解!
とても楽しませてもらいました。更新楽しみにしています。
恋姫めあての同士たちが、こちらの作品のおもしろさにも気付くことを祈りつつ。

Re: NoNameさん 

コメントに感謝を。

悲恋姫と違って、こちらの方は原作を知らなくてもある程度解るように気にして書いているつもりなので、コメントに大変勇気づけられております。
更にいうと、ちょっと残念なことながら原作ファンでない方のほうが実は抵抗なく入れるのではないかなとも思ってもおります。

私はフィオナが他のヒロイン達と同等にすごく可愛いと思うんですが、それは私のフィルターをとおしてなので
私に見える様をプラス・アルファで魅力を描けたらと思っております。
今後ともご愛顧いただけましたら嬉しい限りです。
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