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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第四十幕「基準線」

 
 リサが水野先輩を再び拒絶した。
 原因は言うまでもなく、この間私が教えた
 水野先輩が元騎士だったということを、彼がリサに黙っていたことだ。
 
 なんだか凄い眼で水野先輩は私を睨んでいたけど、そんな物は八つ当たりだ。

 散々リサに向かって、信頼関係がとかなんだとか言っておきながら、その本人がリサに隠し事をしていた。

 それで一体何を信じろというのだろう?
 その隠し事を白日のもとに晒した私を睨む?
 馬鹿じゃないの、自業自得でしょ?
 
 辛い過去だから、言いそびれてました?
 そんな言い訳は、恋人相手だったらいいんじゃないの
 同情でも慣れ合いでも、何なら二人で乗り越えて、なんて薄ら寒いお涙頂戴でも好きにやればいい。

 でも、ベグライターとしたら最低だ。
 
 だって、ベグライターって
 孤独に戦う騎士の絶対の味方として、支える為のものなんでしょ?
 今回の水野先輩の裏切りは、その『絶対』を、『信頼』を真っ向から否定した。
 自分でたっても居られない人が、天才のリサを支えますって・・・
 ふざけた言い訳、誰が信じられるかってのよ。

「その騎士を裏切って、おまけに不信感まで背負わせて戦場に送り出すなんて
 ただの足手まといよりたちが悪いじゃないですか」

 そう尋ねてみると、静馬先輩は相変わらず似合わない気障な仕草で肩をすくめた。

「極端で辛辣な評価だが、概ね賛成だよ。
 しかし、最初から完璧な信頼関係などありえないし
 同様に、完璧な人間など一人も居ない。
 失敗をどう取り返す事が出来るか、見るべき点はそこだろうね」

 先日、綾子女史も言っていた通り、学生は正解を手さぐりするのが仕事なのだし。

 日課の早朝練習の最後に、そっと付け加えられた静馬先輩の言葉に、心臓が跳ねた。
 言われるまで気付かなかった、いや・・・忘れていたのだ。
 つい何日か前まで、私は必死に静馬先輩を遠ざけようとしていた。

 酷い言葉を投げかけ
 友達だからという理由でベルティーユ先輩を侮辱し
 考えられる限りの、静馬先輩が怒り呆れるだろうことをやってきた。

 だというのに、それ程手段を選ばずに嫌がらせをされた静馬先輩は相変わらず笑い掛けてきて
 別に直接何をしたわけでもない水野先輩は、凄い怖い目で睨んでくる。
 ほんと、世の中良くわからない。

 いや、多分そうじゃなくて、静馬先輩が変わり者というか・・・変なのだ。
 だって、茜先輩も暴力男も、水野先輩と同じような反応を返してきたんだから。
 だから、心の何処かで理解してしまったのだ。

 この変な先輩は、きっと何を言っても、こっちの都合なんか無視して

 ヘラヘラ笑いながら、全くいつも通りに接してくるのだと。

「所で、その制服は一体何なんですか?
 はっきり言って、全っ然似合わない上に見ているだけでも恥ずかしいですよ」

「その件に関しても、やはり概ね賛成するんだが・・・
 私としても、着ないという選択肢を選べない事情があってね。
 ああ、もちろん心配せずとも、我が女神様に繕って頂いた制服は、大切にしまっておりますのでご安心ください」

 大仰に一礼してみせる静馬先輩は、戯けた風もなく大真面目な表情で・・・だから余計にどうしようもない。
 冗談であると思っていた時なら、人を誂うなと突っぱねられたのに、今はわかってしまった
 この人は真剣で本気の気障ナンパ男なのだ。

 そういう事をするなというのは、普通の人に息をするなというのと同じで、相手の存在を否定してしまう。

 ・・・ありていに言ってしまえば、いい加減慣れてしまったのだ。

「で、そんな真っ白の制服を着ている理由って、何なんですかいったい?」

「実は、とある女性から入学時に頂いたおくり物でね。
 当時は皆この色なのだと思い、何の疑問も持たずに門をくぐったんだが
 現実は君も知っての通り、という訳だ」

 何処か楽しげに、余裕の笑みを浮かべた静馬の説明に、フィオナの顔が引き攣る。
 静馬に向けたフィオナの眼は、哀れみとも同情とも付かない色が互いに席を譲り合っている。

 それって、すごく手の込んだドッキリというか・・・嫌がらせ?

 静馬先輩だから笑い話にしちゃってるけど

 普通の人なら、不登校になってもおかしくないトラウマじゃないの、入学初日から。

 それとも、静馬先輩から一般女生徒を守る為の、緊急防護措置か何か?

 一人百面相をしながら、かなり失礼なことを考えているフィオナを前にして、静馬が苦笑いを浮かべる。

「フィオナは、今少しポーカーフェイスを身につけたほうが、駆け引きで有利を取れるかもしれないね。
 いやまてよ、ありのままである事がフィオナの美しさの根幹なのだし、それでは魅力を損なってしまうか。
 そも私のような凡夫が、女神の有り様に口を挟むべきか否か・・・」

 言葉どころか、声にもならない悲鳴を上げ
 フィオナは自分の頬が上気するのをはっきりと意識した
 ・・・と同時に、少し前の自分を呪った。

 慣れる訳ないじゃない、こんなのっ!

「それって、ベルティーユ先輩ですよね?」

 普段であれば、悪口の一つも口を突いてでたのだろうが、今のフィオナには、そんな余裕が有るはずもなく

 ド派手なというか、もはや罰ゲームではないのかと疑うレベルで悪目立ちしている
 全く似合わない白制服姿の静馬を睨みつけながら、不機嫌なそうな表情を浮かべ
 鼻を鳴らしながら嫌そうな声を出して、内心の恥ずかしさを取り繕うのが精一杯であった。

 下手なというのも憚られる、何もごまかせていないあからさまな誤魔化しだが
 静馬はこれにも何か混ぜっ返すようなことは言わず、軽く肩を竦めただけで流した。

「麗しのベルティーユ嬢と知り合ったのは、この学園に入学してからだよ。
 つまり、この学園に入学できなければ、ベルティーユ嬢とも、そしてフィオナとも出会えなかったという訳か。
 これは、スィーリア嬢に感謝しなければならないね」

「・・・は?
 それって、先輩がスィーリア先輩をストーカーして、此処に入学したって言う自白ですか?」

 そう尋ねると、少し驚いた顔をして静馬先輩は此方を見たが、面白そうに笑い出し
 ついにはお腹を抑えて笑うのを必死に我慢しながら、タオルを差し出してきて
 それを黙って受け取ると、そのまま手綱を引いて厩舎の方へと歩き出した。

「それはまた、ユニークな発想だね。
 だが事実は小説より奇なりだ、私が進路を決めかねていた所で、スィーリア嬢に誘われたのだよ。
 いや少し違うな、この制服を送ってきてこう言ったんだ。『此処に来て馬に乗れ』とね」

 奨学生の印なんだそうだよ、この妙に目立つ制服は。

 あっさりとした態度と笑顔で付け加えられた静馬先輩の言葉を、私は素直に頷けなかった。
 それはそうだろう、だって目の前にいるこの人は、学園最強の騎士であるスィーリア先輩に誘われて入学したと自分で言いながら
 去年の大会には参加もせず、それだけじゃなくて、槍を持つ姿すら見せたことがないのだ。
 それが、よりにもよって奨学金をもらって入学をしてきた騎士科の生徒だと言い出せば・・・誰だって頷けっこない。



 つまりは、スィーリア先輩とのコネで学園生活は保証されている
 だから、今年の大会にも参加が危ないというのに、態度に余裕があるんだ



 ・・・そう、思い込ませようとしている。
 ほんと、ベルティーユ先輩はこの人のことを見事に言い表した
 静馬先輩は、誠実な詐欺師だ。

 だって、たとえスィーリア先輩・・・公爵家のコネがあったとしても
 静馬先輩なら、絶対にそんなコネで入学なんかしないから

 でなければ、矛盾している・・・
 コネを使うなら、今頃はスィーリア先輩の名ばかりのベグライターになっていたはずで
 そちらを断って此方のコネを使うというのは、行動に一貫性がない。

 なにより、そういう事をこの人は一番嫌がるから。

 つまり、先輩は態とそう誤解されるように言いながら、ただ事実だけを言っている。
 スィーリア先輩に誘われて、奨学生としてウィンフォードに入学した
 そして、白制服を送ってくれたのはスィーリア先輩、事実はそれだけ。
 『贈った』のではなく『送った』がきっと正解、ほんと詐欺師だこの気障男

「それより、フィオナは何故そんな難しい顔をしているのかな?
 リサは再び『ベグライターはいらない』と言い出して、水野を遠ざけたと言う話を小耳に挟んだので
 今日はてっきり、満面の笑顔で迎えてくれるものだとばっかり思っていたんだが」

 フィオナが望んでいた状況になったのだろう?
 振り向く静馬の目が無言でそう問いかけていながら、どこか優しく笑っているのをフィオナは見逃さない。
 二人の不和を招いたのがフィオナだと、気付いていない筈など無いのに
 そこには、非難の色も苦笑すらもが一欠片も混じっていない。

 まただ、また静馬先輩は・・・他の人なら怒る所で笑う。

 また、私の世界の外に居る。

「どうせ理由は解っている癖に、私の口から聞きたいってことですか?
 決闘、申し込まれたんですよリサが・・・玲奈先輩に」

 自分でも嫌悪感が滲んでいるのをはっきりと感じる声に、静馬先輩は片目をつぶって見せ
 そのまま眉を片方だけ跳ねあげて、驚いたようなふりが出来るほどに、やっぱり知っていて。
 それでも態々言わせようというのは、つまりは・・・相変わらずお節介が治っていないってことで

「玲奈先輩のベグライターについたんですよ、水野先輩が。信じらんない・・・」

「信じられない程失礼な行為をしても、何故か水野はモテるのに
 同じようなことをしている私がさっぱりな事に、フィオナは義憤に駆られた、と」

「ちーがーいーまーすー、ていうかなんですかそれ?
 そんなの先輩の普段の行いが悪いからでしょ、馬っ鹿じゃないの?
 もしかして、それで水野先輩をかばってるつもりなんですか?」

 それは残念、と少しも残念そうじゃなく微笑む静馬先輩に、練習用の槍を持ってもらってヘルムを脱ぐ。
 悔しいけど、静馬先輩のお節介にのってしまおう
 此処で吐き出せるものははきだして、思考をフラットに戻せってことだし。

「また裏切って、よりにもよって敵についた人を信頼?
 やってることが支離滅裂でしょ、力尽くで相手に勝っていうことをきかせる?
 理由や原因があるんでしょうけど・・・それって、水野先輩だけの都合で考えた、勝手な言い訳ですよね?」

 そう言うと、静馬先輩は突然口を抑えて吹き出した。
 非難の目を向けると、軽く首を振り小さく息をついてみせる。

「失敬、まったくもってその通りだね、フィオナに彼らのやり方は受け入れられない。
 何故なら、彼らのやり方は余りに稚拙で一方的だからだ。
 しかしながら、フィオナは・・・前にも言ったが、人に幻想を抱きすぎている」

「・・・幻想ってなんですか」

 不機嫌になるのを自分でも自覚する、その感情を抑えることが出来ず
 抑えようとも思わず、そのまま視線に乗せてフィオナは静馬に投げつけた。

「確かに私や水野の方がフィオナより一年多く生きている。
 だからその一年分を希望するのは、フィオナにとっては正当な権利だね
 でもねフィオナたった一年なんだ、聖人君子や完璧を望まれても、正直困る
 我々は所詮ただの学生で、感情に流されもすれば、自分の都合で物事を判断する」

 噛み付こうとするフィオナを見上げながら、軽く肩をすくめてその言葉を止め
 静馬は変わらず歩を進めながら言葉を続ける。

「それはね当然なんだ、だからフィオナが不快に思うのも正当だが
 他の方法を選ばなかった彼らを、非難し過ぎてはいけない」

 静馬の投げ返した穏やかな声は、フィオナの胸に突き立った。

 無意識に求めていた完璧

 結果論で理想の解を示して、それと少しでもずれていれば
 気付けない相手を見下し、或いはおかしいと非難することが
 手持ちの情報だけで、決断を下し行動した相手に対し
 負けない戦を仕掛けること、即ち卑怯な行いだと意識すらしていなかった。

 出来ないことも、失敗することもある・・・か

「誰もが君のように、当然の結果と
 歯を食いしばってでも受け止めるわけではないんだ、残念ながらね」

 2013.01.02


   

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