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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第三十九幕「竜に立ち向かうのはやはり騎士」

 
「リサのこと、良く知りもしないで。
 憶測で断言するの止めてくれませんか
 大体、負けたことがないから勝てないっていうのなら、せっ・・・」

 暗い目をして静馬に低く反論したフィオナが、慌てて手で自分の口を抑えて顔を伏せる。

 それは、あからさまに自分の態度が急変した事を、相手から隠すこと
 即ち、自分の飲み込んだ発言が、一体何だったのかを相手から隠すことよりも
 目線を伏せ、細い前髪に隠れる様に、恥じ入る心を優先させたのかもしれない。
 もしくは、自分自身のやろうとしていたことに気付き、ただショックを受けただけなのか
 僅かに見開いた眼には、はっきりと怯えの色が浮かんでいた。



 私は今、何を言うところだった?



 話題の焦点はリサだ、それでは端的に過ぎるというのであれば
 スィーリアに、リサが敵わないという事実についてだ。
 であるのにのに、今フィオナが口にし掛けた言葉は・・・

 関係ない先輩を、反射的に侮辱しそうになった?

 口を抑えながら、フィオナは身体をかすかに震わせながら、見る間に瞳から明るさを失っていく
 そう、茜に、カイルによって、大上段から厳しく諌められた侮辱という行為の重さ
 フィオナは反発心からか、学ぶことはなく・・・どころか相手への憎しみと軽蔑を引き出された。
 それが今、君は怒るかもしれない、いや怒るだろうと思う、と前置きされて語りかけてきた静馬の、湖面の様に穏やかで静かなに言葉によって、フィオナの心を動かした

 ・・・と言う事ではない。

 フィオナは、静馬に向けて今まさに口を突いてでようとしていた言葉も
 今まで散々掛けていた言葉も、侮辱だと理解している。
 理解していながら、それを使うことの危うさを把握していないだけで。
 では、何故フィオナが言葉を呑み込み、怯えたのか

 こんなの、反論でも何でもない。

 相手の言うことが正しくて、何も言い返せないから・・・
 黙っていたら、リサがスィーリア先輩に勝てないという
 静馬先輩の言葉を、自分が信じてしまいそうだから

 八つ当たりで、静馬先輩に酷いことを言って、話題を止めたかっただけだ。

 そう自分の行動に、気がついてしまったが故。
 彼女は確かに口が悪く、生意気で、子供っぽい。
 だが、静馬が言うとおりに、頭がよく、誇り高く、優しい少女ではあるのだ。

 保健室での時のように、先輩を傷つけてでも突き放し、距離を取るためでも何でもない。

 先輩が何か悪いことや、私に酷いことをしたわけでもない。

 ただ、自分の気分が悪いから、嫌な気分を吐き出したいから

 そんな理由で、私は・・・

 八つ当たりで相手を酷く傷つけかけたと気付き、自己嫌悪に沈んだ表情で俯くフィオナ。
 その横顔に、静馬は微かに笑を浮かべながら、優しい眼差しを向けていた。

 フィオナが何を言いかけたのか、それに静馬の思考は容易に至ったが
 手で口を塞いでまで、飲み込んだ言葉を先回りして答えるような真似はしない
 そうしてしまえば、折角フィオナが寸前で飲み込んだ言葉は、口に出したのと同じ事になってしまう。
 故に、静馬はあえてそこには触れようとしなかった。

 なにより、静馬は今、それ以上に興味深い事実に心惹かれていた。

 リサを庇うためには、しかたがないことだと割りきらず
 自分自身に対して、そう言いわけすることも許さず
 まっすぐに八つ当たりだと受け止めて

 フィオナは、八つ当たりで相手を傷付けることに、怯え、罪悪感を抱いている。
 問題は、フィオナが落ち込んでいるのが、酷いことを言おうとしたという点でなく
 それが『八つ当たりであったこと』であると言うこと。

 つまり・・・フィオナは相手を傷付けることに対して
 必要な、或いは正当な理由があるなら、そこを躊躇わないということだ。

 言い換えるのなら、『酷いことを言う』という行為自体は、フィオナにとってはフェアで・・・

 そこに『正当な理由もなしに』という部分が、今回引っかかったということか。

 生き方が不器用というのではなく
 周りに合わせようという気がないのでもなく
 それが、フィオナという少女にとっての、心のフェアライン
 そこを越えるこういを、フィオナは許せないということ。

 即ち、静馬のリサに対する酷評は、理由を説明されたフィオナにとってはフェア

 でありながら、今回私に噛み付いてしまったその理由に、フィオナが届く前に・・・



「なるほど、確かにフィオナが言うことも最もだね。
 では、こういう言い方ならば許されるかな?
 今年の大会で優勝するのは、スィーリア嬢か君だ」



「なっ・・・」

 短く呻きを漏らしたのは、一体誰の唇だったのか。

 静馬の言葉に、時は空間に固定される。

 勿論フィオナは大会に優勝するつもりで居る。
 しかし、目の前に立ちはだかる現実は、それが夢物語だと
 そんな事は不可能だと、フィオナを押し潰そうとのしかかっていた。

 フィオナ自身が、リサとの実力差というものを痛切に感じ

 それを乗り越えることの困難さを、絶望的に感じている

 スィーリアは、そのリサが絶対に勝てない相手だと静馬は断言し
 同じ口で今、優勝するのはスィーリアかフィオナだと言い切った。
 つまりは、フィオナにならスィーリアを倒せるかもしれないと言う事で・・・

 俄には信じがたい内容であるが、フィオナにとって静馬という人物は、非常に複雑な立ち位置に居る。

 フィオナは静馬を、心底腰抜け変態気障ナンパ男だと信じており
 おせっかいで、変わり者で、唾棄すべき存在と疑いもしないが
 静馬を『騎士』として見ている、この学園でもかなりな少数派でもある。

 ジョストの事では、いい加減なことは絶対言わない
 
 その信頼を向けている相手が口にした言葉が、フィオナ本人の事であるのに
 フィオナの現実認識と、大きくずれている為に信じ切れないのだ。

「私とて全ての騎士の事を知っているわけではないし、勝負は水ものだ、違う結果が出るかもしれない。
 だが、それでもこの言葉を撤回するつもりは無いよ」

「リサは・・・茜先輩・・・玲奈先輩だって、ベルティーユ先輩だって参加するのに」

 テーブルの上で小さな真白い手を握りしめながら、フィオナが返したのは、余りにか細い抵抗。
 普通であれば、意識して拾い上げなければ喧騒に紛れてしまう程に弱々しい声。
 だが、その抗議の声にのった言葉に、フィオナ自身が問うている答えが乗っている事に、気がついている。

 静馬が、優勝候補としてベルティーユの名前を挙げなかったのだ。
 故に静馬の下した評価は、身内贔屓でも、願望でもなく
 とても信じられないことではあるが、静馬の視点から見える冷静な評価。

「最強の騎士であるスィーリア嬢に勝つ者が居るとすれば、ドラゴンしか居ないと前にも話したね。
 フィオナが挙げたのは騎士の名ばかりで、唯一才能で及びそうなリサは風車を相手に一人で戦っている。
 それでは誰もスィーリア嬢を倒すことは出来ない」

 スィーリア嬢にとっては、実に不幸なことにね。
 そう付け加える静馬の穏やかな声に、フィオナの背筋を悪寒が駆け昇る

 自分に見えない認識を以って説かれた理は、まるで不気味な魔術のよう
 理解には及ばない、共感するには余りに異質でありながら
 それでも、フィオナには、それが秘められた真理のように聞こえる。

 巧みな話術か、それとも自信に裏打ちされた静馬の態度か
 
「私が勝てるという、根拠は何なんですか」

 呻きと言うには、それは余りにか細く
 まるで泣いているかのような、繊細な心の軋む音

 ドラゴンであることを望み
 誰よりも・・・大会ニ連覇を成し遂げたスィーリアよりも、リサに勝つことを望んだ少女は
 静馬が自分を『騎士では勝てない』相手に唯一勝てる存在と認識している、その根拠を求める。

「君は勝利の女神だ、誰よりも高く空を翔ける翼を得ている。
 だが、今のままではスィーリア嬢の足元までもたどり着けない。
 しかし、ただ一人君だけが、スタートラインに立っているのも事実だ」

 謎かけのような言葉

「お願いします・・・教えてください先輩。
 私だけ、他の人と何が違うんですか」

 素直に頭を下げ、すがりつくように静馬の袖口を握りしめながら、それ以上にすがりつくようなフィオナの眼に
 静馬は、優しい笑みを浮かべながら、ゆったりと頷いてみせた。

「勝利に向けた執念だよフィオナ。
 他の騎士達がスィーリア嬢の絶対的な実力を前に、無意識に彼女に勝つことを・・・彼女と戦うことを最終目標に置き換えている。
 ただ一人君だけが、スィーリア嬢を『ただの障害』として見ている」

 君だけが、彼女を君臨する絶対強者ではなく

 彼我の戦力差をしっかりと把握していながら

 倒すべき一人の敵と認識できているんだよ、フィオナ。

 自分の事であるがゆえに、フィオナ自身では気付けない差異
 それがどれほど異質で、ありえないことなのかを、フィオナだけが理解できないでいる。
 リサやスィーリアという天才を目標から外し、ただの通過点で障害と見るということが

 即ち、敵を倒すこと、戦って勝つことだけを目標にして、彼女達を他の騎士と同列に見倣すということ

「そんな君だからこそ、他の騎士には出来ないことをやれるだろう」



「ジョストは個人競技ではないわ、騎士とベグライターと馬、その三者による団体競技
 それを、真っ向否定するようなことを言うのね貴方は」

 不意に掛けられた声は、何処か不機嫌なような
 それでいて、何処か楽しい玩具を見つけた子供のような
 優雅で余裕の含まれた艶っぽい女性の声。

「団体競技であることは、否定しようもないところだね。
 自分で走って槍を振るう訳にはいかない、それはジョストのルールにも明確に定められているのだから。
 先日の洗練された立ち居振る舞いから、貴族の御令嬢かと思っていたが騎士・・・それも相当の実力者らしい。
 貴女の美貌とメイド服姿に惑わされた、ということかな?」

 全く驚く風もなく、飄々と切り返してみせる静馬に、ノエルも苦笑いを浮かべる。
 彼の眼の前に居る金髪の子供っぽい少女は、リサの友達で、そんな彼女に気を使うように静馬がわざと、ノエルの口にした三者からベグライターを外して答えたことに気づいて。

 ノエルの言った言葉の意味を理解していながら、わざと論点をずらして返した答え。

 ノエルはこういったのだ、その子がどれほど特別でも、一人では何も出来やしないでしょう?
 リサは独りでなんでも出来るとたかをくくっていた傲慢を、貴弘と組むことで矯正しようとしている
 それなのに、貴方はその子に独りでスィーリアに挑めというつもりなの?・・・と

 静馬はそれを受けて、こう応えたということ。

 ベグライターの重要性を感じているということは、貴女はそれを身をもって掴んだ騎士だ
 つまり、実体験として自分で必要性を感じるまでは、貴女とてそれが掴めなかったということ
 押し付けた所で、理解も共感も得られるものではない。

 そして、ベグライターは居るに越したことはないが

 必ずしも、だれにでも必要なわけではない、と

「優しげな顔をして、随分と酷い詐欺師なのね。
 確かに貴方の言うことも一々頷けるだけの論拠がある。
 でも、一つだけ修正させてもらうわね。今年優勝するのは私よ」

 2012.12.24


   

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