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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第三十三幕「交差するそこに」

 
 早朝の爽やかな日差しの中、少女騎士が基礎訓練を繰り返す姿
 その伸びやかで、まだ成長の階段を踏み出したばかりの
 何処かたどたどしい槍使いも、手綱捌きも、細い腕脚も

 それを見ている男二人が肩を並べて見守っている姿より、遥かに潤いに富んでいた。

「あの子がカイルの見つけてきた子か」

 どう見ても・・・
 いや、何処をとってもまだまだ未完成の騎士
 ジョストを知るものであれば
 少しかじった程度でもそう評するだろう程に
 技術的な問題は山済みで・・・

 はっきり言葉を飾ること無く言うのであれば
 始めたばかりの素人に毛が生えた程度で・・・
 先日ベルティーユと戦った美桜といい勝負という感じにしか見えない
 その上に、どちらも素直そうな愛らしい少女ではあるが
 美桜とは、決定的な差がある。



 身体の作りが、女性と言うよりは少年に近い。



 子鹿のようにすんなりと伸びた脚も、ほっそりとした首筋も
 健康そのもので魅力的ではあるものの、かけらも色気を感じさせない
 鎧に隠れてはいるが、まず間違いなく胸部においても同様であろう。

 そういった意味で、如何にもカイルが好んでベグライターを引き受けそうなタイプである。

 念の為に言っておくと、リサやフィオナへの態度からもわかる通り
 カイルの性癖は至って一般的であるし
 騎士とベグライターの関係を、そういうものと勘違いしてもいない。

「お前のことだから、くだらん恋愛絡みの勘ぐりは言ってこないだろう?
 それと念の為に言っておくと、ミアータは新入生で・・・はっきり言って荒削りな原石だ。
 だが、二年先には学園大会を優勝したっておかしくはない」

 黙々と地味な基礎練習を嫌な顔ひとつせずに繰り返す自分の騎士を、何処か誇らしげに眺めながら
 いつもの通り、いやいつも以上に自信満々に言い切るカイルに
 珍しく静馬は黙って頷かず

 静かに、だがきっぱりと首を横に振った。

 そのリアクションで気分を害したのか、カイルの表情が険しくなったのも一瞬
 すぐにもその行動が、何を言っているのかを悟り、小さく苦笑う。

 静馬が首を振ったのは、視線の先にいるミアータが
 二年後に騎士としてそこまで成長することを否定したのでも
 カイルの騎士を見る目を否定したのでもないのだと

「例の、勝利の女神か?」

「彼女、ミアータ嬢は、リサやスィーリア嬢のような天与の才は無い。
 だが、素直で真面目で努力家と言う、騎士にとっては天与の才に勝るとも劣らない至宝を、三つも備えていることは認めよう。
 将来、立派な騎士になるであろうというのも否定はしない・・・いや、全面的に賛同する。
 だが残念ながら、二年後に優勝することだけはありえない、といっておこう」

 静馬の態度は湖面のように穏やかで
 客観を以って、カイルが担当するミアータを褒め、認めながら
 それを否定する言葉は、主観の塊のような根拠による断定。

 カイルは、静馬の言葉に耐え切れず、吹き出して笑う。

 突然パートナーのベグライターが大笑いしたことに、ミアータが練習の手を止めて
 心配そうに伺ってくるのに対し、カイルが手を振って、なんでもないと笑いながら示し
 何やら納得の行かないような表情のまま、ミアータが練習を再開する。

「ん?それは私の言葉が信じられないという笑いかな。
 そうであるのなら構わないが、フィオナを笑うというのなら
 私は君を許すことが難しいぞ、カイル」

「いや違うんだ、誤解をさせたな。
 だが、ミアータが優勝を狙えるという言葉と
 お前の勝利の女神が優勝すると言うというのは、別に矛盾せず両立するだろう?
 オレが笑ったのは、別件だ」

 両手を挙げるカイルの胸に、静馬は人差し指の先を向け
 片方の目を器用に瞑ってみせる
 それはごく自然になされながらも、酷く似合わない仕草。



「リサ・エオストレ」



 当然といえば当然の回答、二人成らずとも答えには行き着く。
 二年後、フィオナとミアータが最上級生と言うことは・・・
 当然、あの天才・リサも最上級生なのだ。

 むしろカイルは、静馬が平然とそれに答えたことにこそ驚いた。

 何か遠回しに、リサは別格と言い出すか。
 或いはうっかり失念していたとでも返って来るものと、信じ込んでいたのだが・・・

 この答えが返って来た意味

 それに気づき、カイルの背筋を歓喜と寒気が駆け上る。
 即ち、静馬はこう告げているのだ。

 二年後には、フィオナはリサに勝つ。

 リサをスィーリアに並ぶほどの天才と、諸手を上げて賞賛し
 スィーリアの実力を、多分誰よりも高く評している静馬が
 かも知れない、などと言葉を濁しも迷いもせずに、断言した。

 言い換えるのであれば、凡人が天才を凌駕すると
 ミアータを見出したカイルを前に、言い切ってみせたのだ。

「お前にそこまで言わせるのか、あいつは」

 どこか嬉しそうな表情をしながら、素直に感心してみせるカイルの態度に
 むしろ静馬のほうが肩透かしを食らったような顔をしてみせる。

「むしろ、私の騎士を見る目を、カイルはまず疑ってくると思っていたのだが
 正直、リサは十年に一人と言って良い程の天才だ。
 凡人の私が計りきれるはずがない、と言われてしまえば否定はできない
 天狗になってもおかしくはない才能の塊みたいな子だよ」

 軽く肩をすくめて見せ、私ならまず挑もうという気にすら成らない。

 あっさり、悪びれもせずに白状してみせる静馬の態度に
 
 つまり、そんな天才が居るというのに
 今現在、全くといっていいほどに無名のフィオナが
 二年後に勝つ等と言われ、素直に信じられる方がおかしい。

 静馬がそう言っているのだと、理解が及び逆にカイルの表情が引きつる。

「まぁな、悪いが俺もそれについては完全に信じちゃいない。
 それに、何より・・・真っ向否定とまでは言わないが
 そう言われても信じない奴を、俺は一人知っている」

 人の悪い笑みを浮かべて
 もう一度答えを当ててみろと、無言で促すカイルに。
 向けていた人差し指の先端を上に跳ね上げながら、五指を広げて
 お手上げと言わんばかりの表情を浮かべる静馬に

 カイルが意地の悪い笑みを浮かべ、口を開きかけたところで

 静かで穏やかな深い声が、その笑いを止めた。

「水野貴弘。
 ジュニア時代に、大会荒らしとまで言われ・・・
 あのスィーリア嬢の兄に、唯一弟子として認められた、天才騎士」

 知り合いか?と、唖然としながら尋ねるカイルに、まさかと静馬は首を振る。

 同じ日本人だから、もしかして、程度の問いかけに静馬の笑みは苦味を含みゆく。

「私が一方的に知っているだけさ、イエスやブッダを知っているという程度の意味で。
 出る大会出る大会、次々と優勝をさらって行く・・・
 誇らしかったよ、同じ日本人であることが。
 情けなかったよ、同じ日本人でありながら、勝つことの出来ない自分が」

 肩をすくめ、両手を広げてみせる。



「そして、憎くもあった。
 一度の敗北で、騎士を廃業した彼が」



 眉を寄せ、伺うように視線を向けてくるカイルに、静馬は笑みを浮かべながら首を振る。

「それも過去の話だ、今は私も多少の分別がついた。
 人は人、自分は自分と思える程度にはね」

 いい言葉だろう?
 日本人は子供の時から親にこう言われて育つんだが・・・
 なぜか、私のような変わり者は嫌われるんだ。

 そういいながら、ため息を付いてみせる静馬に、カイルが再び笑いの発作に襲われる。
 
「水野がリサに肩入れしていることは知っている
 それがベグライターとしてか、一人の男としてなのかは解らないし
 自分のなし得たであろうことを、リサの中に求めているのか
 あるいは、ジョストを愛するものとして、才有る者が埋漏れることを危ぶみ、憂いてのこと
 ・・・なのかは、私には判断できない」

 何しろ、リサがそのまま成長すれば、スィーリア嬢とも互角に戦えるだろう才を持っていることも

 天才の挫折がどれほど深い傷に成るのかを、貴弘自身が一番解っていることも

 そして何より、リサが類まれな美少女であることも事実

「だが、それでも私はフィオナの勝利を確信している。
 彼女は相手がどんな強い騎士だろうと・・・
 いや、相手が強ければ強いだけ、フィオナは強くなり、勝利するだろう」

 そう告げると静馬は、不意に真面目な表情に戻り。
 カイルの耳に顔を寄せ、そっと誰にも聞こえないような声で
 極秘事項をこっそりと打ち明ける。



「なにしろ、彼女は勝利の女神なんだ」



 しかし、そんな二人の姿を遠くで見つけたフィオナに
 もしかしてあの二人・・・などと、非ぬ嫌疑をかけられたことを
 当の本人たちは知る由もない。

 2012.09.17


   

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