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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第二十五幕 「ドン・キホーテに掛けるべき言葉」

 
「なにをボケーッと、ベルティーユ先輩の大きなお尻見てるんですか、いやらしい。
 まったく、これだから男って・・・
 もしかして、胸の大きさで勝ったとか言うんじゃないですよね?」

 また、訳の分からない言を言い出した・・・

 誰がどう見たって、勝ったのは美桜先輩じゃない

 思い切り疑わしげな、訝しむ目を向けていたフィオナだった
 瞬時に我に返り、一瞬にして顔から血の気を失う

 混乱で、すっかり頭の片隅に追いやられていたが・・・
 静馬が重症を負っていることを思い出したのだ。

 きっと唇を引き結び
 その表情を、見せ無いよう小さく首を振り
 震える声に鞭をあて、表情に『呆れた』というバイザーを下ろす

「ほぉらっ、試合は終わったんだし早く養護室行きますよ先輩。
 お尻は次の試合まで待てばまた見れるんですから
 だいたい、あのベルティーユ先輩なら、本人に頼めば見せてくれますよ」

 付き合いきれない、というようなフィオナの声は
 焦燥に炙られている心を隠しきれるほどには上手く演じきれておらず
 何とかして、少しでも早く静馬に手当を受けさせようとしていた

 不器用な優しさと

 生真面目な気遣い

 負傷の原因に、彼女はなにも関係がないというのに
 負傷という事実を忘れていた、という一点で少女は静馬に負い目を感じ
 軽蔑と嫌悪を向ける相手の身を気遣い、焦る。

 だというのに、その対象は・・・ほんの一言で
 演技ではない、本心からの軽蔑の眼差しを、少女から引き出してみせた。

「それは少々難しいかな
 先日の事だが、ベルティーユ嬢の胸を凝視し過ぎて、流石に怒られたところでね」

 苦笑しながら頭をかく静馬に、むけられたのは当然ながら

 虫けらでも見るような蔑む視線と、吐き捨てるような冷たい声

「・・・変態」

 それでも少女は手をのばし、負傷した腕ではなく上着の裾を掴もうとして

 ・・・試合中から自分がずっと

 静馬の右手を、握りしめていたことに、ようやく気がついた。

「この期に及んで、ベルティーユ先輩のところに行きたいなんて言ってもダメですからね。
 折角こうして、他の女の子にちょっかい掛けないように私が捕まえていたのに
 ここで自由にしたら、また手当たり次第に声かけるんでしょうから」

 ふいっと顔を背け、ずんずんと力強い足取りで手を握ったまま歩いて行く

 手を握っていたのは、ちゃんと理由があるのだと
 怒ったような背中で無言の言い訳をし
 それでも、手を離そうとはせずに、腕を引っ張らないように歩調はゆっくりにとる
 フィオナとはそんな少女であった。

「もしかしなくても、結構嫉妬深い性格なのかなフィオナは」

「はぁ?いきなりなにを言い出してるんですか先輩は
 気障で変態なのはもういいですけど、妄想癖まであるんですか?」

 歩みを止めず顔だけ振り向け、見上げたフィオナの表情は
 呆れたでも訝しんだでもなく
 ちょっと怒ったような、可哀想な人を見る目で
 まるで静馬に仕返しするかのように、肩をすくめてみせる。

「いやなに、先ほどの愛の告白はなかなかに情熱的だったものでね」

 飄々と言い返す静馬の態度に、自分の言葉が頭の中で繰り返され・・・

「?・・・っ!」

 確かに、そう受け取れないこともない
 いや、そう受け取るほうがある意味自然だという事実に
 羞恥と動揺のあまり、ぎくしゃくと身体が思うように動かず
 なにもない所で、脚が絡まり躓く

 だが、まるでフィオナがつまずくのを予想でもしていたように
 自然に静馬がつながれていない左腕で、フィオナの細い体を抱きとめ
 静馬の腕の中で・・・フィオナの身体が硬直する。



 頬に咲いたモミジの紅葉を深めた静馬に、左手を引かれる形でとぼとぼとついてくるフィオナ

 まるで何か失敗をしてしまった小さな子供のように、しょげかえって視線を落とし
 小さく揺れる金糸の髪も、何処かいつもの元気がない。
 それはそうだろう、自分の不注意から転びそうになったのに

 それを静馬は怪我をした腕で助けてくれたのに

 自分はその恩人を・・・

 驚いて、反射的に引っぱたいてしまったのだから。

「ねえ・・・どうして先輩は怒らないんですか?」

 問い掛けと言うよりそれは、自責の念に押し出された苦鳴
 
「怒る?
 助けるという名目で、美少女を抱きしめるという役得を得た私が、犠牲者であるフィオナをかい?
 平手打ち一つで良いのなら、ぜひ危機の際には私の名を呼んでほしい
 いつでも駆けつけて、存分に役得を甘受させてもらう」

「私は、真面目な話をしているんです」

 暗い沈んだようなフィオナの声に・・・
 心底心外だと言う表情を向け、静馬が足を止める。
 真面目くさった表情を浮かべた顔を近づけ
 真直ぐに、フィオナの深緑の瞳を見つめながら

 まるで世界の真理を告げるように、そっと小さな声でフィオナに語りかける。

「君は解っていない、いいかいフィオナ。
 フィオナ・ベックフォードという少女は、非常に口が悪く
 ・・・十人中九人が生意気だと言ったとしても
 抱きしめて、平手打ちだけで済むほど、安い美少女ではない。
 気障、ナンパ男の言葉など君は信じられないかもしれないが、これは事実だ」
 
「・・・変態が、抜けてますよ」

 目を逸らすために顔を背けた為に、ふわりと柔らかな金髪が広がり
 真っ赤に染まった耳が正面を向いてしまったことに、フィオナは気付かない。
 
「その件に関しては、フィオナの男性像への幻想だ、と・・・これは前にも言ったかな。
 むしろ私は、魅力的な女性を前になにも思わないほうが
 よっぽど不健全で変態だと、そう思っている」

「ベルティーユ先輩の、胸とかお尻とかを凝視するより・・・しないほうが変態?」

 いや、と極端な答えを提示するフィオナに、笑いながら首を振り
 実際に行為に移すかどうかではなく、そう思うことは普通だと
 そこでわずかに言いよどみ、小さくひとつ頷いて見せ、おもむろに

 別の話をしよう、と切り出した。

「先程フィオナは、私が『称えている勝者はベルティーユ嬢だ』と告げた時
 また、訳のわからないことを言い出した、と言う顔をしていたね」

 目をそらしたまま、こっくりと頷くその仕草が、静馬の笑いを誘う。
 そんな、緩んだ空気を敏感に察知したのか
 振り向き、フィオナの目が真直ぐに静馬を見つめる。

「大丈夫、話はそらさない。
 確かに、試合の勝敗ではベルティーユ嬢は、ほぼ一方的に敗れた。
 だが、彼女は試合中はもちろん、試合の後も・・・
 誇り高き騎士であり、ベルティーユ・アルチュセールであった。
 私はそんな彼女が、眩しく麗しく思うし、そんな彼女の友人であることを誇りに思う」

 一つ大きく息をつき

 何故なら・・・と、言葉は続いた。

「我が麗しのベルティーユ嬢は、真正面から相手の策に立ち向かい
 その全てから逃げず、彼女が彼女であることを曲げず、貫いたのだから。
 だから、私は試合の前から胸を張って言えたんだよ、『彼女は、勝者である』と」

 彼女は試合の勝敗とは、別の次元で闘っていたのだから。

 ジョストという競技での戦闘行為ではなく

 騎士の誇りを
 貴族の誇りを
 ベルティーユという少女の誇りを

 全て護る闘争に

 己の弱気に流れる心との争いに

 気高さを示すべき、内なる闘いに
 
 故に、スィーリアに劣らぬ騎士であると静馬が告げたのだ
 公爵家の令嬢であるスィーリアに並ぶほどに
 ベルティーユが本物の貴族精神を持っていると信じるが故に

 静馬の寄せる絶対的なまでの信頼に、ベルティーユは見事に応えた。

「それって、負けた側の詭弁ですよね」

 フィオナが口をとがらせて、胡散臭げに呟く声に
 静馬はこれ以上はないというほどに、楽しげな声で大笑いして
 フィオナの白ベレーの上に手を置き、子供をあやすように撫でた。

「全くもってその通りだね。
 この問に、画一的な答えなど無い、フィオナにとっては詭弁でしか無いのかもしれない。
 しかし、君が疑問に思っているだろう一点
 ベルティーユ嬢が何故、最後にフェザーズフライを狙ったのか、の答えでもある」

 まただ、また静馬先輩は・・・

 私が突っかかっていったのに

 怒りも、呆れも、否定もせずに

 私の言葉を肯定して、笑った。

「相手が4人もベグライターを集めてずるをしたんだから、試合に負けたのもしょうがない
 っていう、いいわけじゃダメなんですか、それ?」

 静馬先輩は、他の人とは全然違った対応をする・・・

 スィーリア先輩とも、茜先輩とも、カイル先輩とも

 ・・・リサとも

「フィオナ、君は私等よりずっと立派な騎士だ。
 それでも、一つだけ私のほうが君に勝っている点がある」

 眉を顰めるフィオナに、静馬は片目をつぶってみせる。

「私は君より・・・一つ歳が上だ。
 というわけで、偉そうに語ってみようと思う。
 君が騎士であるのなら、負けた理由を相手の中に探すな」

2012.05.06


   

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