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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第二十三幕 「お姫様は槍を持たずにご覧あれ」

 
 再びカウンターを喰らったのだと、焦って振り向いたフィオナの目に飛び込んえきたのは
 二ラウンド目、ベルティーユ側の欄に2ポイントの表示

 なーんだ、自分は全て解っていますみたいな顔をして、偉そうなことを言っても

 ベルティーユ先輩は、堅実にポイントを取りに行った

 静馬先輩が思ってるほど、馬鹿じゃないってことじゃない。

 明らかに相手を馬鹿にした表情を、隠す素振りもなく
 小さく鼻を鳴らした・・・否、鼻で笑ったフィオナが
 意地の悪い笑みを浮かべて、静馬を下から見上げる。

 あんなに自信満々に褒めちぎったベルティーユ先輩が、日和って逃げた今

 一体この気障男は、どんな顔をして、どんな言い訳をするのかしら。

 口に出さずとも、そう思っていることがわかる、小憎らしい表情を向ける
 それは、相手がそんな顔をすれば、どう思うのかがわからないというのではなく
 むしろ、どう思うのか解った上での、挑発。

 逆を返せば、そんな態度に出ても
 静馬が感情的に手を上げたりはしないと、解っていてやっているだけに
 余計にたちが悪いとも言えるのだが・・・

 静馬の反応は、フィオナの予測したどれとも異なっていた。

 その目は一瞬だけベルティーユの方に向けられ
 直ぐ様カイルのいる美桜側へと振り向き
 さて、これを一体どう評すべきかと、少々困惑した表情を浮かべていた。

「なぁに、黙っちゃって。
 似合わないから、そんな悩んだふりするのはやめたらどうですか?」

 ぼそっと漏らした、不満気なつぶやきに発言者の方へと視線を戻し
 何処か申し訳なさそうな表情をして
 掴まれていない左手で、フィオナの白ベレーを軽く抑える
 
「すまない、とても良く似合ってるよ、そのベレー帽」

「そんな事聞いてないです!」

 嫌味たっぷりに当てこすっていたにも関わらず
 ほんの一言であっさりと・・・完全にペースを崩されてしまい
 何処か冷めたような厭味ったらしい挑発ではなく、反射的に言い返してしまう。

 その感情的な自分の声に、周りの注目を再び集めてしまい
 フィオナは、ベルティーユを指さしながら
 周りに聞こえるように、わざと大きな声で静馬に話し掛けた。

「ベルティーユ先輩は、またフェザーズフライを狙うって先輩言ってましたけど
 なんだかんだで、今回ポイント取りに行ったじゃないですか。
 一本取れないあたりが、ほんとベルティーユ先輩らしいですけど」

 なんとか言葉だけは、普段の嫌味を載せてはいるものの
 その声も、表情も、仕草も、相手を誂う様な普段の態度とは違い
 焦って、無理にも別の話題を振っているのが透けて見え

 静馬の表情から、それを見て取ったフィオナが
 更に言葉を重ねて、自分からどんどん墓穴にはまっていくという悪循環に陥りかけるのを
 肩をすくめた静馬が遮った、いや・・・押し留めた、というべきか。

「いや、彼女はフェザーズフライを狙った、予測が外れた言い訳ではないよ。
 思い出してみて欲しい、槍が鎧を捉えた音が、随分と軽くはなかったかな」

 その一言でフィオナと、こちらを伺っていた生徒全員のざわめきをも止めてのけ
 
「もしかして、フェイントにあたった?
 あっ・・・フェイントに、わざと当たりに行った
 でもなんで?わざわざ相手にポイントをあげるような真似」

 フィオナの答えに因って、再び周りにざわめきを呼び起こす。

「勝つために、勝負に出たのだろうね。
 二回連続で外せば、ベルティーユ嬢もフェザーズフライを狙わなく成り
 次に彼女が狙うのは・・・」
「落馬で一本勝ち?」

 自信なげにまゆを寄せた表情のフィオナが、小首を傾げながら答えるのに
 無言なままに静馬は首肯してみせる。
 
「そうなれば、地力での差がはっきりと出て、美桜嬢に勝ち目はないだろう」

 なにしろ、彼女には絶対的に経験が足りないからね、と告げる静馬の言葉に
 今度はフィオナが、こくりと頷いて無言で先を促し
 それに頷いて笑み返し、静馬が言葉を続ける。
 
「美桜嬢のアドバンテージは、ベルティーユ嬢が何処を狙ってくるのかが、わかるという事
 カイル、水野に龍造寺女史、それから先日お会いした美人のウェイトレス嬢
 彼ら四人がまず間違いなく、ベルティーユ嬢の次の狙いを読んでくる」



 ・・・ずるい



 無意識に零れ落ちた呟き。
 噛み締めた桜色の小さな唇は、やや白んで震え
 視線は、遠い四人に向け、鋭さをます。

 かも知れない

 静馬の声も静かにそれに賛同したが
 続く言葉は、逆接の接続詞をもってつながった

「しかし、ベルティーユ嬢が口を出さない以上、それは彼女にとってフェアなんだ」

 苦っぽい笑みを浮かべ、目を閉じて大きく頷く。

 たとえ、自分が相手に手玉に取られ、試合に負けたとしてもね

 彼女は美しいと、君も思わないか?

 無言の訴えを、誤解なく受け取ったフィオナ

「だから・・・」

 小さく途切れる問い掛けに、はっきりと頷いて返し
 ベレー帽の上に置いた左手で、優しく数度フィオナの頭を抑えると
 ふわりと柔らかな金髪が揺れ、それに伴い微かな柑橘系の香りが舞う。



「なにも言えない。
 彼女の誇りを汚す事は、私には出来ないからね」



 振り仰ぎ、ベルティーユを見つめる静馬の目は、何処か誇らしげで。
 誰に言われた言葉よりも、虚飾がなかった

 第二ラウンド、二本目の合図が鳴り
 気合の掛け声とともに走りだすベルティーユ
 輝き流れる金色の髪に、負けないほどに輝く姿に、フィオナの視線が釘付けと成る

 一時も目を離さないと、食い入るような真剣な表情でベルティーユを見守るフィオナの耳に

 小さな苦笑のようなため息の音とともに、言葉が流れこんでくる。

「私が美桜嬢のベグライターなら、この一本で一か八かの勝負に出る。
 引きつけてぎりぎりの所で、フェザーズフライを仕掛ける」

 騎士にとって最大の屈辱である負け方
 自分であれば、それを狙うように指示を出すといいながら
 その危険性を、友人には伝えられないジレンマ

 飄々とした、溜息混じりの苦笑の陰に、静馬が隠した心が

 フィオナには、ほんの少し垣間見えた気がした。

 * * *

 短く鋭い呼吸でタイミングを測り、槍の間合いに入った瞬間にベルティーユが仕掛けたのは
 二本目とは丁度真逆に、フェザーズフライ狙いと見せかけた、胴への突き
 シュルターシルトに阻まれなければ、腕、胴の何処にあたっても、先の2ポイントとあわせて第二ラウンドを勝ち取る。

 ベルティーユは常に先の先、自ら前に進んで切り開く。

 対する美桜は後の先、相手の攻撃をかわし出来た隙に攻撃を仕掛ける

 フィオナが指摘した通り、第一ラウンド一本目のベルティーユが繰り出した槍を
 美桜は綺麗に見切ってかわし、カウンターを決めた。
 正しく、あれこそが美桜の戦い方を凝縮したもの

 即ち、実戦経験の絶対的に足りない美桜のアドバンテージは

 友人四人によるバックアップだけではなく・・・その目。

 貴弘はその切り札に気付かれないように
 槍を突き出すときには目を瞑らせ、フェイントの胴突きにわざと当たるなど
 十重二十重に防護線を張り、ひた隠しに隠してきた。

 そして、この勝負どころで、切り札を切った。

 美桜に出した指示は、静馬とほぼ同じ、ギリギリまで引きつけてからの攻撃
 ただし、静馬はフェザーズフライを狙うというのに対し
 貴弘の出した指示は、左胸と左肩の間・・・一本目と同じ、落馬狙い。

 それぞれの思いと思惑を乗せ、一瞬にして交差する槍

 だが、此処で誤算があった。
 美桜が指示され、その通りに動くことに慣れすぎた為に
 指示に出されていなかった、予定外のベルティーユのフェイントに、一瞬身体が固まった

 それでも落ち着いて冷静に、フェイントそして本命の突きをかわしたのは
 完全にベルティーユの槍の動きを、捉えてみせた目のおかげ
 だが、カウンターで繰り出した槍は縮こまった身体の分だけ遅く、短く

 短い引っ掻くような金属音が小さく鳴る。

 美桜の繰り出した槍先が、かろうじてベルティーユの腕を掠めた。
 此処に来てのまさかの失策。
 仕込みに仕込んだ切り札が、勝負を決めきれず

 手の内を全て、晒してしまった。

 沈んだ空気が隠しようもない美桜の陣営から目を切り、ベルティーユが小さく首を振る。

 もういいでしょう?希咲美桜さん

 さあ、私達騎士二人でジョストを始めましょう

「四人のナイトに護られたお姫様のままでは、ジョストになりませんもの」

2012.05.04


   

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