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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第二十二幕 「沈黙は金」

 
「腕は・・・平気なんですか?」

 背中越しに投げかけられた声は、素っ気なさを装おうとして・・・
 完全には成功せず、心配の色が滲んでいた。
 そして、その小さな背中には返って来る答えがわかっているということも
 どこか諦めに似た気配とともに、はっきりと感じ取れた。

 そう、決まっているのだ、かえってくる答えなど

 この隣に立つ男は、馬鹿で、変態で、気障で・・・

 どうしようもなくお節介な、格好つけなのだから。

「なんなら、ベルティーユ嬢にしたのと同じ事を
 今此処で貴女にやってみせましょうか、フィオナ姫?」

 ほら、やっぱり馬鹿だ・・・

 平気な顔をして柵に載せている腕は、動かないのに

 騎士なら、鎧を着たことがある者なら誰だってわかる。

 ただ置いてある五十キロの石より・・・
 馬上から落っこちて来た、鎧を着た騎士を受け止める方が
 断然、重いのだということくらい。

 絶対に、平気なはずなんて無いのに

 それに私が気がついている事も知っているのに

 それなのに、平気な振りなんかして、本当に馬鹿

「・・・なんで、ですか?」

 まるでフィオナがそう問いかけるまでの、心の内まで知っていたかのように
 静馬の答えは自然にフィオナの言葉につながる。

「嫌嫌ながらも、こうしてようやくフィオナが付き合ってくれて
 兎にも角にも隣にいられるという、貴重な時間が出来たのに
 それを自分から切り上げようとは思わない、というだけなんだが・・・おかしいかい?」

 軽く肩をすくめて見せるその仕草には、別段不自然な所はなく。
 実は本当に、なんでもないのではないかと、うっかり騙されそうになる。
 少なくとも、静馬はそれを望んで平気なふりをしているのだ

 何のために、そんな無茶をしているのかは解らない。

 でも・・・涙ぐましい努力に、ちょっとぐらいなら騙されてあげてもいいわ。

 小さく頭を振って、フィオナはそう自分に言い訳をし
 何時もの不機嫌そうな顔をして見せながら、静馬の方へと振り向き
 美桜の控えている方向に指さしながら、憎々しげな声を意識して出す。

 何時もの、生意気で厭味ったらしい後輩を演じるために。

「あの暴力男が、なんで美桜先輩の陣営にいるんです?」

 * * *

 フィオナが指を差した男は、歯を噛み締めて静馬を睨んでいた。

 言うまでもないことながら、ベルティーユが落馬して負傷することに因って
 美桜の勝率が上がる所を、静馬が助けてしまい邪魔した、という理由などではなく

 ベルティーユ、フィオナという、少なくとも外見だけで言うのなら
 学園でも上位にはいる美女、美少女二人と・・・
 端から見れば、仲よさげにしていることへの嫉妬などでもない。

 あの馬鹿・・・なんて無茶なことをした!

 一言で言うのであれば、つまりはこういうことなのだが
 カイルと静馬の二人が友人同士である、という事実は
 ベルティーユと静馬が友人同士である、という事実ほどには知られておらず
 
 カイルの怒りの理由を、周りの友人達は正確に誤解した。

 結果的にカイルの態度が、静馬が試合に介入し、ベルティーユを助けたことに対する苦情を封殺した。
 もっとも、美桜の側は公式戦ではないということから
 友人連中が軒並みベグライターの如く、寄って集って美桜にアドバイスをしている現状で

 試合中の馬場へ、という非常識では有るものの
 静馬の介入に対し、ベルティーユ側に抗議をするという行為は
 ・・・恥を知る者にとって、とても出来ない代物で。

 非公式とはいえ、ジョストでの決闘である以上、決闘をしている二人は、騎士である
 であるのなら、騎士の誇りにかけて、その様な恥知らずな要求は出来ない
 
 ましてや、静馬は早々に観客席へと戻ってしまったのだ
 それに因って、静馬の介入はあくまで第三者の・・・観客の乱入
 抗議できる対象は、ベルティーユではなく、静馬個人と言う事になる。

 
 
 その上で、元々がカイルがジョストに関することに、厳しい態度をとるという下地があり
 貴弘は今回の試合を前に、カイルにベルティーユの情報を集めてくれと頼み
 カイルがそれを承諾して、思った以上に詳細な情報を手に入れてきていた事から

 カイルと静馬が友人同士という関係だなどと・・・事前に知っていなければ、全く予測もつかない事ではある。

 一般的な話であれば、友人の友人同士が試合をするにあたって
 片方側に、対戦相手の情報を求められても、二つ返事で了承などしない。
 逆側の友人に対して、不義理になると断ったとしてもおかしくはないのだが・・・

 静馬も、カイルも、そしてベルティーユ本人もだが、その辺りに全く頓着しないせいか
 カイルが美桜側へと、ベルティーユの情報を流すことを全く気にもせず
 逆に、美桜側の情報を同じだけよこせ、などということも一切要求しなかった。

 ベルティーユにしてみれば、相手が誰であろうがやることを変えないのだし
 静馬にしてみれば、ベルティーユがそうである様を美しいと評しているのだから当然で
 こんな変わり者達を、一般論で測ること自体が、無謀である。

「カイル先輩。
 なんだか静馬先輩を睨んでますけど・・・もしかして、フィオナに気があるんですか?」

 薮睨みな視線とともに投げかけられた同種の声に、カイルが発言者であるリサに振り向く。

「生意気な後輩二号になぞ興味はない。
 それより、なんだってリサが静馬のことを知っている
 お前、ああ言うタイプのヤツは嫌いだと思ってたんだが」

 普段通りのカイルであれば、相手が相性の悪いリサであっても、今少し言い回しに気を使った。
 しかし、静馬の無茶に怒りと焦りを覚えていた最中に、全く以て的はずれな
 色恋沙汰という・・・危機感のないリサの誤解に、ついつい言葉に嫌味を混ぜ、八つ当たり気味になってしまったのは否めない。

 自分が、生意気な後輩一号などと呼ばれていたことを思い出し
 むっとした表情を素直に出しながらも、リサがカイルの言葉に鼻を鳴らす。
 
「別に好きではないです。
 でもまぁ、カイル先輩よりはよっぽど好きですよ」

 * * *

「カイルは美桜嬢とも、ベグライターの水野とも友人で
 あのグループの一員なのだから当然あそこにいるだろうし、いるべきだ。
 私に変な義理立てをして、あちらに行かなければ友達としての縁を切っていたところだね」

 フィオナが怪訝な顔をして、小首を傾げる。

 静馬の友人感というものが今一掴めない、のみならず
 それでは何故、静馬がベルティーユの側に残らず、態々自分の所に戻ってきたのかが、どうにも理解できない
 何処か小動物的なフィオナの愛らしさに、思わず笑みをこぼしてしまう静馬に気が付き
 フィオナが鼻を鳴らして勢い良くそっぽを向く。

「それで、一本取られて圧倒的不利なベルティーユ先輩に
 静馬先輩はどんなアドバイスをしてきたんですか?」

 浮かべた優しい笑みに、気恥ずかしくなったのか。
 静馬への心配が隠しきれなかったのか・・・
 普段の何処か誂うような、ちょっと刺のある発言からすっかり毒が抜け
 
 自然な、フィオナの問い掛けに

 静馬の返事もまた、極自然な穏やかな声

「なにも」

 肩を軽くすくめるでなく、真剣な眼差しで
 静馬は、今にも走りだそうとする、馬上のベルティーユをみつめていた。
 遠いその表情からなにを見て取ったのか、何処か満足気に大きく息を吐くと

 まるで、ベルティーユの考えに賛同するかのように、小さく頷いてみせる。

「なにもって・・・何にもアドバイスをして来なかったんですか!?」
 
 目だけを横に並ぶフィオナに向けて、微かに笑いを浮かべながら、小さく頷く。

「彼女は私なんかよりよっぽど立派な騎士だ。それはフィオナにだってわかっているだろう?
 彼女の相棒が、意志のこもった強い目をしている、バイズ・ローゼンもわかっているんだ
 我が麗しのベルティーユ嬢は、もう一度フェザーズフライを狙いに行く」

 静馬の言葉に、今度こそフィオナは言葉を失う。

 そんな事ってありえるのだろうか・・・

 一度、たった今失敗してカウンターで落馬させられたのに

 もう一度、フェザーズフライを狙いに行く?

 少しでも狙いがそれて、ヘルムに槍が当たったら・・・ペナルティで試合を落とすのに

「だって、美桜先輩はさっき避けたんですよ
 たまたまじゃなく、確りと軌道を見切って
 なんで・・・なんでその事を教えてあげなかったんですかっ!?」

 ちいさく息をつきながら、静馬が口元に浮かべた笑みには、苦味が漂っていた。
 フィオナの方へとゆっくりと向き直り、怒ったような顔の少女の頭に
 その上にちょこんと乗っている、純白のベレーの上にそっと手を置いた
 
「考える事を放棄して、相手に尋ねてはいけないよフィオナ
 偏見と虚飾を拭い去った目で、もう一度彼女を見てご覧
 本当の、ベルティーユ・アルチュセールを」

 なによ、本当のベルティーユ先輩ってっ!

 私がなんにもわかってないみたいに・・・

 誰に聞いたって、派手好きな変わり者としか言わないでしょ!

 頭の上に置かれた手を振り払おうとして、零れ落ちる真紅の雫に思いとどまり
 それでも、そのまま子供扱いされている事を受け入れられずに、両手で掴んで頭上から引き剥がす。
 エメラルドの瞳で静馬を睨みつけながら、何か言い返してやろうとフィオナが口を開いた瞬間

 試合開始の合図が鳴り、二人の騎士が気合の掛け声とともに、槍を携え、愛馬を駆って走りだす。

 皆の目がそちらに向く中、切り取られたように見つめ合う静馬とフィオナ

「私は・・・結婚でも申し込まれるのかな?」

「ばかーっ!」

 静馬の左頬が鳴るのと同時に、槍先が鎧を捉えた金属音が鳴り響いた。

2012.05.03


   

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