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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第十九幕 「言葉の持つ力」

 
「そこまで自分の勝利を信じてもらえるなんて、ベルティーユさんは幸せね」

 そんな一言で、場を綺麗にまとめようとする、玲奈の大人な判断に神経が逆撫でされる。

 聡いフィオナは気付いているのだ。
 自分が静馬にした過大評価こそが
 まさに自分が心の中で静馬にぶつけた罵詈雑言

 自分の知り合いを、身内贔屓した、願望や盲信なのだと。

 故に、玲奈の言葉はフィオナの胸を抉り
 その痛みに耐えられるほどの経験のない少女は
 痛みを飲み込めず、言葉として吐き出す。

「それでも言い過ぎです。
 玲奈先輩だって怒っていいんですよ、だって静馬先輩は・・・
 ベルティーユ先輩の方が、玲奈先輩より上だって言ったんですから」

 その痛みをぶつけても、受け止めてくれる人を
 無意識に悪者にすることを選んで。

「あら、どうして私が怒る必要があるの?
 静馬君にとってベルティーユさんは、それだけ信じられる大切なお友達ということでしょう?
 友達を誇る事は、そして誰かを褒めることは、別に腹をたてることではないし
 仮にそれが静馬君の贔屓目だとしても、誰かに非難されるようなことではないでしょ」

 穏やかに返答する玲奈の声は、普段より幾分高く明るく聞こえた。
 それは事実としてそうだったのかもしれないし、フィオナの思い込みだったのかもしれない。
 だが、フィオナにとってそう聞こえたのは真実で・・・

 それ故に、玲奈の言葉はフィオナにとって、諭すと言うようには聞こえず
 心の中に反発が芽生え、反射的に噛み付こうとしてしまう。

 友達をつくることを、無理にも耐えて

 独りで勝たねばならないと、自らに課した少女にとって

 玲奈の言葉は、鋭く痛かった。

 口を開き、八つ当たりとも、言い掛かりとも言えないような
 不快感と感情の反発による言葉の羅列をフィオナが解き放つ
 その寸前、割り込んだのは飄々とした男の声。

「貴女の美しさに、そして聡明なることに敬意をひょうします。
 ただ、一つだけ訂正を・・・
 我が友人、麗しのベルティーユ嬢は、誇るべき騎士であり
 スィーリア嬢に並ぶ騎士であることは、贔屓目でもなんでもなく、厳然とした事実。
 試合をするまでもなく、彼女は勝者であると断言します」

 完全に間を外され、開いた口、溢れ出す感情のぶつけ先を失ったフィオナが
 それを止めることも出来ずに、目の前の相手に感情の流れるままにぶつけようとして
 静馬の言葉の内容に、背筋を冷たい物が走り、一瞬にしてフィオナは冷静な心を取り戻す。

 唯でさえ悪い意味で有名人の静馬が
 ベルティーユが学園最強騎士であるスィーリアと並ぶ騎士だなどと
 スィーリアというこの学園で一番の有名人本人に面と向かって言い放ったのだ

「誰でも彼でも、視界に入った女の人を口説き回ってる先輩の、友だちになれる女性って時点で
 ベルティーユ先輩がすごい人なのは解りますから。
 それより、試合始まっちゃいますよ先輩、こんな遠くから眺めてないで
 自分に正直に、最前列で凝視するついでに応援したらどうですか」

 静馬の腕を引っ張って、意識を玲奈から自分の方へと無理矢理に向けさせる。

 別の誰かが言ったとしても、バカなことを言うやつだで終わるか
 スタイルと外見であれば、と消極的な賛同を得られるかもしれない。
 それが、『無敗の騎士王』の言葉となれば、話が多少違ってくる。

 あるいは、このタイミングで無ければ、発言者が静馬であったとしても問題はなかった
 
 静馬は先程スィーリアに対し、芝居がかった冗談とはいえ
 決闘を仕掛けるかのような物言いをしたのだ。
 両方が重なった今、理由は何でもいいから、静馬をここから引き剥がさなければ・・・

 フィオナがそう判断したのは正しかった。

 そして、残念なことにその判断を下すのが遅すぎた

 耳をそばだてて伺っていた、周りの生徒達から、一直線に美桜の元までその発言は伝わる。
 当然のことながら、伝わる間に事実は変質し、元の姿からかけ離れていく。

 希咲美桜が、ベルティーユに勝てるはずがない。
 結果は、スィーリアを前にしたベルティーユと同様
 実力差が歴然としすぎていて、勝負をするまでもない、と。

 * * *

 その言葉が両陣営に瞬く間に伝わり及ぼした影響は、決して小さくはなかった。
 お祭り気分で浮かれていた試合会場は、各陣営の空気の変化を敏感に感じ取ったのか
 僅かに、雲行きが怪しくなる。

「勝負をするまでもないと、そう言ったのか」

 小さく漏れた貴弘の声は、ほっとしたような響きで・・・
 その口角は、小さく、だがはっきりと吊り上がった。

 直接的な面識はないが、静馬とベルティーユの親交が深いことは知っていた。
 その静馬が言ったとなれば、それが伝わった今、ベルティーユが慢心する可能性が高く
 自分が考えていたタクティクスにとって、極めて有利な流れ。

 それでも・・・

 口の端を吊り上げ浮かべた笑いは

 悔しさに握り締められた手までは、ほどいてはくれなかった

 貴弘はいまでこそベグライター科の学生ではあるが、元々は騎士である。
 それも、ジュニアの世界ではそこそこ以上に名の知れた・・・
 つまりは、自分に自信もあり、その実力に見合うだけのプライドも、野心も有った。

 試合中の怪我が元で、引退したその時まで。

 既に騎士を引退したとはいえ・・・
 否、だからこそ、くすぶり続ける火種が胸にある、不完全燃焼で舞台を後にした元騎士
 その貴弘が、彼の幼馴染である美桜をバカにされて、何も感じないはずもなく
 その上、貴弘は今、美桜のベグライターなのである
 自分のパートナーが見下されて怒りを覚えないベグライターなどいない。

 何故ならベグライターとは、パートナーの騎士の隣に立つ者

 パートナーが積み上げた努力も
 怯み、戸惑い、絡みつくような苦悩の様も
 それらを振り払い、踏み出した勇気も
 何もかもを、一番近い所で、見守り、励まし、支え、共に歩んできたのだ。

 故に、パートナーを侮辱されれば、まるで自分が侮辱されたかのように
 いや、それ以上に怒りと屈辱をおぼえる

 駄目だ貴弘、怒りを静めろ・・・

 怒りで曇った目で、一体何をアドバイスできる

 美桜が勝つ手助けのために、お前はここに居るんだろ

 その怒りは、手に入れる勝利によって拭い去ればいい。

 今は勝つことだけを考えろ、それ以外は試合の後で考えればいい。

 拳を握り、奥歯を噛み締めて
 それでも、無理に浮かべた余裕の笑みは崩さず
 貴弘は、ベルティーユのいる正面に、油断なく目を向けていた。

 * * *

「山県静馬がそんな事を言う筈がないでしょう」

 取り付く島もなく、冷たく断定の言葉を口にしながら
 軽くメガネを押し上げ、呆れ果てたと言わんばかりのため息を漏らしたのはエマ
 水を飲んでいたベルティーユは、敢えて口を出す事をさけ、エマの続く言葉を黙って待った。
 
「あれは確かに、どうしようもない女ったらしのナンパ野郎ですが
 ジョストを愛していますし・・・
 なにより、ベルティーユ様を侮辱するような事を言う筈がありません」

「ちょっと待ちなさいよ
 なに?今の言葉って、ベルティーユ様が負けるって言ってるってこと?」

 アンが絡んで来るのも想定の内だったのか、軽く首を振り即座に否定する。

「そうじゃないわ
 『試合をするまでもない』相手に、ベルティーユ様が決闘を申し込む・・・なんてことをする筈がない。
 山県静馬はそうおもっているし、なにより『試合をするまでもない』なんて
 これから戦う騎士も、ジョストも馬鹿にする様な事を言うはずがないでしょ」

 つい先程、静馬がベルティーユを姫扱いすることを避け、戦いに挑む騎士として扱い
 その勝利を確信していると、告げて去った姿を思い出し、アンが納得の表情で頷く。

「まぁそうね、もっともアイツなら・・・
 美人で胸が大きいほうが勝つ、とか真面目な顔して言ってても、違和感ないんだけど」

 口に含んでいた水を派手に吹き出し、涙目でむせ込むベルティーユが、その姿を鮮明に脳裏に結像したのは言うまでもなく。
 隣で肩を震わせながら、必死に両手で口を押さえるエマもまた、そうなのだろう。

「アン、貴女・・・それは流石に、静馬さんが聞いたら・・・おっ、怒りますわよ」

「だぁぃじょぶですよベルティーユ様
 これくらいで怒るわけ無いですって、毎朝アレだけアタシが言って鍛えてるんですから」

 あっけらかんとした笑顔で笑い出すアンに
 エマとベルティーユのふたりも、ついには堪えきれなくなって
 二人の口からこの上なく楽しげな笑い声があがり、微妙になりかかっていた空気が
 少なくともベルティーユ陣営側だけは、払拭されてしまう。

「まったく、あなた達二人は・・・
 私これから試合をするというのに、こんな緩んだ心では醜態を晒してしまいますわ」

 はにかんだようなベルティーユの笑顔に
 アンとエマが顔を見合わせ、くすくすと笑い出す。

「それはないです、何しろ相手が弱い時のベルティーユ様は
 かなり強いですから、自信を持ってやっちゃって下さい」
「その点に関しては、山県静馬の言うことが全面的に正しいです」

 てんでバラバラなことを口にする二人が、同時に振り向き
 口にした言葉も、同じ



「美人で胸の大きいほうが勝ちます!」

2012.04.25


   

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