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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第十八幕 「本心を隠すものは」

 
 どうして、この変態気障男に関わると、毎回毎回恥ずかしい思いをするのだろう

 フィオナは割と真剣にそんな事を考え込んでいたために
 さして混乱もしていない会場で、あまりにも目立つ人物の接近を見逃した。

 一応彼女の為に弁護するという立場で物を言うのであれば
 フィオナは否定するだろうが・・・彼女が静馬に抱きついた事によって
 周りからの注目度が、まだ始まっていないベルティーユと美桜の試合より
 フィオナと静馬の方が高くなってしまい・・・

 恥ずかしさの余り、外界の情報をシャットダウンした

 所謂、現実逃避のために、無意識に思考の海に潜ったということなのだが
 何分、無意識での逃避行動であるために、フィオナ本人にとっても、全く自覚がない。

 重ねて言うのであれば、声を掛けてきたのは目立つ人物であるのだが
 目立つことを本人は嫌っており、周りもそれを知っていて・・・
 極力騒がないようにと気を使った、と言う部分もフィオナが気づけなかった原因として、小さくはない。

 だが、ようやく試合が始まるかという空気に、フィオナから視線が戻ろうとしていた所に
 周りじゅうが知っているような、そんな目立つ人物が声を掛けてきたために
 唯でさえ、悪い意味で有名人な静馬と一緒にいるフィオナに
 ・・・人々は、興味を隠そうともしない視線を向けた。

「流石に、私闘の類とは言え試合になれば見に来ているかとは思ったが
 まさかレッ・・・静馬と一緒だとは思わなかった。
 これは、この前の噂は風聞ではなく、実は一大スクープだったということかな、フィオナ」

 少し意地の悪い問を、とびっきりの笑顔を浮かべながら口にするスィーリアに
 隣を歩いていた玲奈が、驚いた目を向けたのも一瞬で
 心底楽しそうな笑い声を上げてしまってから、ごめんなさい、と小さく謝罪するも・・・
 その声は笑ったままだったために、フィオナが顔を真赤にしながら、二人の方を睨みつける。
 
 そんなフィオナを二人の視線から庇うように、一歩前に出ながら左腕を水平に伸ばし
 声を掛けてきたスィーリアに対峙するように、静馬が真正面から視線を受け止める。

「彼女の名誉の為に言っておくと
 フィオナは先日の謝罪のために、今ここに居るだけで
 根も葉もない噂を貴女が広めるというのなら・・・
 我が誇りにかけて、貴女を止めると此処に誓おう」

 言葉だけを聞いてしまえば、決闘の申し込みに他ならないのだが
 その態度、言い回しのどれもが芝居がかっていて
 なにより静馬の表情が、柔らかく微笑みを浮かべている通り
 スィーリアと本気でやりあうつもりはなく、こう言えば相手が引くと知っている

 そんな言葉の、一種定形のやり取り・・・なのだが

 スィーリアを筆頭に、玲奈、フィオナと美女ぞろいの中で、明らかに静馬が役者不足であるために

 笑いも、上品なジョークという側面よりは、苦笑と失笑が多くを占める。

「良いだろう『無敗の騎士王』殿、受けて立とう・・・と言いたいところだが
 学生会としては、今回の決闘騒動により、今後は私闘の類を厳しく禁じる方向に力を入れねばならない。
 それを学生会会長自ら破る訳にはいかないので、ここは素直に退いておこう」

 応えるスィーリアも何処か芝居がかった言い回しで、オーバーなジェスチャーをしてみせることで
 周りの生徒達に、これは結果の分かった茶番でしかないと示してみせながら
 対峙する二人の騎士は、顔を見合わせ同時に破顔する。

「調子はどうだ静馬、と聞くまでもないな」

 隣に愛らしい女性が居て、調子が悪いなどと、死んでも言わん

 そういう男だったな、お前は。

 スィーリアの飲み込んだ言葉まで含めて、聞き間違うこと無く静馬は頷き
 玲奈の方へと改めて向き直り、典雅に礼をしてのける。

「美女二人連れを前に、たとえ体調が悪かろうとも挨拶もせずにいられるほど、私は涸れてはいないので。
 こうして正式に御挨拶するのが遅れたことに謝罪を、山県静馬といいます、騎士科の二年です。
 残念ながら、貴女の美貌に相応しい程の騎士ではありませんが、以後お見知りおきを」

 玲奈先輩には、そんないつもとは違う態度で、口説き文句を並べるんだ・・・

 でも、無駄ですよ先輩。

 玲奈先輩は、もう先輩のことを知っているから

 今更格好つけても、かえって格好悪いだけになるんだから。

「玲奈・F・エイヴァリーです、静馬君の事はリサから聞いています。
 でも正直な所、聞いていた印象と随分違っていて・・・もっと厳しい人かと。
 あっ、誤解しないであげてね、彼女は貴方のことを怖いと言っていた訳ではないの」

 玲奈の返しに、フィオナが唖然とした表情をするのをスィーリアは見逃さず・・・その表情が、微笑みに綻ぶ。

 フィオナにしてみれば、玲奈にリサから伝わっていた静馬の印象が、理解できないのだ
 ・・・と言う事実から、スィーリアには二人の関係が見えてくる。
 今少し親切な表現をするのならば、フィオナに対する静馬の態度が

 つまり、レッドはリサよりも・・・フィオナを気に掛けている

 これは、ますます油断できない相手ということだな

「リサにまで面識があるのは流石だが、良く此処に・・・いや、忘れてくれ」

 スィーリアが友人達に囲まれる美桜の方に視線を向けながら、目を伏せ軽く頭を振り
 軽く手を上げて、何でもないと仕草で示してそれ以上の追求を受け付けない旨を無言で示すも
 スィーリア自身も何処か割りきれておらず、心に何かが引っ掛かったままであることは、誰の目にも明らかで・・・
 だが、誰もそれ以上は踏み込もうとはしなかった。

「『槍持たずの騎士』などと言われてはいるが、私だとて騎士の端くれ
 試合も見れば、友人との約束も守る。
 なにより、友人の晴れの舞台ともなれば、何を於いても駆けつけるのは当然」

 肩をすくめる静馬が、沈黙に支配されかかる空気を軽くいなし・・・

 フィオナが、軽蔑の目を隠そうともせずに静馬に向ける。



「えぇ、先輩なら駆けつけるでしょうね
 ベルティーユ先輩のきわどい鎧姿を見る為なら」



 言われて直ぐにも思い当たったのか、額を抑えるように手を当てながら
 苦い笑いを浮かべる静馬に、スィーリアと玲奈が同時に吹き出しかけ
 続く言葉で、笑いは口を突いて洩れだし、完全に普段の静馬の周りの空気に成り代わる。

「あーっ・・・否定はしない。
 見たくないと言う男がいるのなら、その者の男友達は警戒すべきだ
 健全な男であれば、魅力を感じない者など恋人がいようが妻子がいようが、居ないだろうからね」

 「・・・変態」というとどめの一言は、今回に限り静馬も強くは否定できなかった。
 何しろベルティーユの鎧は、少し前に流行った、女性特有の優美さを引き出す、との思想のもとで造られたもので・・・
 端的に言ってしまえば、下半身が水着。
 それもかなり角度のきつい代物で、現在着用者がベルティーユ以外に見当たらない、というだけでどんな代物なのかがだいたい想像がつくだろうが

 後ろから見れば、青少年には刺激が強すぎる様な光景を目の当たりにする事になる。

「出来れば、公衆の面前で面と向かって変態呼ばわりは止めて欲しいところだが
 女性の立場からすれば、今回は言っておかねばならない
 言う必要があるという事は、理解している」

 軽く手を上げて降参のジェスチャーをとって、それ以上論議を続けるつもりがないことを示すことで
 フィオナの追撃をかわしながら、矛先がベルティーユへと向く前に、フィオナの言葉を封じる。



「それで、一体どちらが勝つとお前は踏んでいるのか
 騎士としての意見を聞かせてもらいたのだが?」

 静馬とフィオナのやり取りに一頻り笑った後に、目尻の涙を拭いながら投げかけられた、スィーリアの問い掛け。
 玲奈は無言で小さく頷いただけで言葉を発しないことで、自分も同じ事を聞きたい旨を伝えてくる。
 あるいは、口を開いてしまえば、笑い声が溢れてしまうために、口を開けないだけなのかもしれないが。

「ベルティーユ嬢が負けることは無い。
 何故なら、彼女はこの学園で、貴女に並ぶ騎士であるのだから」

 質問を予測していたのだろう、静馬はスィーリアの問い掛けに、淀むこと無く流れるように答えを返した。
 静馬の返答・・・ベルティーユの勝利を確信している事に
 スィーリアは僅かに目を見開いたものの
 ふっと、表情を和らげて優しい笑みを返す。

 そんな二人のやり取りを、周りの生徒達はもとより
 フィオナも、玲奈もついて行けずに眉をひそめた。

 何を言い出すかと思えば・・・

 確かにベルティーユ先輩は、周りから誤解され

 その実力が不当に低く見られがちではあるけれど

 学園最強のスィーリア先輩と並ぶ、なんてことは間違っても有り得ない。

 言ってしまえば、ベルティーユ先輩はちょっと・・・凄く派手好きで解りづらいが

 表面上は正反対の、玲奈先輩と同じところに分類される

 二人は、取り立てて抜きん出た特徴も、得意技もない

 私にとっては、興味も参考にも成らない騎士なのだ。

 ひたすらに基本に忠実で、それを積み重ねることで、全く近道をすること無く
 全てが高いレベルで調和している、特徴がないのが特徴。
 それは、実際の所何処にも弱点がないという意味で、堅実であり強くもある。
 所謂、正統派スタイルで・・・
 それを突き詰めたのが、スィーリアである、と言い換えてもいい。

 それでも・・・ベルティーユ先輩より、茜先輩やリサの方が強いし

 玲奈先輩のほうが高いレベルであるのは、騎士ならばわかるはず

 つまり、先ほどの先輩の評価は、身内贔屓の過大評価

 というより、もはや自分の知り合いが勝つと言う、何の根拠もない願望や盲信だ。

 不機嫌に静馬を睨みつけながら
 ふと我に返り・・・自分が、不機嫌になっている理由
 失望している自分に気づき

 フィオナは

 自分が静馬を

 騎士として

 人として

 思いの外高く評価していたことに初めて気付かされた。

2012,04,23


   

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