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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第十二幕「日の出る国」

 
 相手の実力は、戦ってみなければわからない。

 ベルティーユはそういって、静馬に陰口を叩く者達を諌めた。

 その発言は実に正しい。

 戦わずに、相手の実力を計れ無いという事ではない

 例えばそう、相手の立ち居姿や癖になっている動きの端々
 目線の使い方や、重心の置き方やそこへの気遣い
 そういった挙動や姿に、現れてくるものである

 極端な例を上げれば、息遣いや、声の出し方一つで

 相手が実力を持っているのか、ただのハッタリなのかはわかる。

 しかし、『正確に』というのは、難しい。
 戦う者同士のコンディションや、モチベーションというものがあり
 人は常に万全でいられなどしない。

 そも、強い方がかならず勝つというものであるのなら

 ・・・わざわざ、戦う必要がない。

 言い換えるのであれば
 『正確』に実力を計れるという事は
 数値で勝率を弾き出せるということである。

 ある程度は、感覚的な根拠ではあるが、誰でも思い浮かべるだろう。

 その勝率を覆すのが・・・
 或いは、覆そうとする相手を抑えこむのが
 戦術・・・即ち、ベグライターの手腕である。

 パートナーである騎士の、コンディションやモチベーションを
 試合という一点に向けて調整する手伝いをし、最高の状態で送り出す
 これはベグライターとして最低限の、当然の仕事である。

 その上で、相手よりも実力の劣る騎士が、勝利を手にするということは
 寡兵で大群に勝利を収める事と同じ
 成功したほんの一握りの例外は、奇跡や魔法のように取り上げられもて囃される

 だが、その足元には山と積まれた、順当な結果がある。
 それ程に難しく、覆ることは希なのだが・・・
 それでも騎士は、ベグライターは勝利に向かい直向きに邁進する

 稀であると知りながらも、覆そうと・・・覆せると信じて。

 立ち向かう者にとって戦術とは、希望の光であり、偽光の毒である。

 その戦術を組み立てる為に、最も基本にして重要なのが、情報の収集と分析。
 ベグライターを目指すもので、それを知らぬ者も、否定する者も、蔑ろにする者もいない。
 敵を知り己を知れば百戦危うからず、古より擦り切れる程に、誰もが使ってきた言葉
 基本にして真理であるその言葉は、絶対であるからこそ、今も残りそこにある。

 自称・超一流と嘯くカイルが、変わり者扱いはされども
 嘲笑の対象に成らないのも、情報収集の重要性を知っており
 その能力の高さに一端があるのは間違いがない。

 本人に言えば、そんなものは一端に過ぎんと笑うか
 いや、その基本こそがベグライターの最重要な部分だと、真剣な顔で頷くことだろう。
 ことジョストに対して、カイルは真剣で・・・容赦がない

 騎士とベグライターは、互いを信頼しあう絆で結ばれる間柄である。

 その関係は時に恋人や夫婦に例えられる程に、親密である

 カイルはそれこそ、パートナーの騎士の身の回りの世話まで焼くだろう
 だが、その根底に根ざす信頼の基本は、互いの能力の高さなのだ
 甘ったるい恋人同士のような関係ではない、そう断言する。

「希咲美桜という女性を知っているか?」

 カイルに唐突に投げかけられた言葉は、そんな問い掛けで
 それはカイルが担当する厩舎の清掃をしている最中
 二人の男たちの間に行き交う言葉に差し込まれた一つであった

「ああ、知っているが・・・悪いことは言わん、美桜は止めておけ静馬。
 確かにあいつは顔も、スタイルも、性格も悪くない
 ただ一点、あいつにはもう好きな男がいて、そいつは残念ながらお前より・・・レベルが高い」

 静馬が自分の顔を指さす―――カイルが首を振る

 静馬が自分の頭を指さす―――カイルが再び首を振る

 静馬が自分の足を指さす―――カイルが残念そうに首を振る。

 静馬が自分の胸を指さす―――カイルが漸く頷いた。

「お前が勝てるとしたら、そこだけだ」

 カイルの真剣な顔に、静馬は頭を掻きながら苦笑を返す。

「お前は一体、私の事を何だと思っているんだカイル」

「なにって、親友に決まっているだろう?
 そうでなければ、わざわざ相手が嫌がるような事を言ってやるものか」

 いや、良い事を言っているがカイル・・・

 私が聞きたいのは、そう言うことじゃないんだが

 困った表情を浮かべる静馬に
 カイルが手にしたフォークを壁に立てかけ、眉を寄せて、大きく溜め息をつく。

「確かにお前のことは間接的に、貴弘より貶めたかも知れないが、女を見る目は褒めてやったのに。
 それにしても、静馬の好みがああ言うタイプだったのは意外だったな。
 俺はてっきり、もう少し気の強い、自分を前に押し出すタイプが好きなんだとばかり思っていたが」

 尚も、話題を好みの女性から変えずに進めるカイルに

 漸く静馬も、違和感の正体に気づいた。

 先程からのこの話題が、冗談での軽口の叩き合いではないのだと。

 確かにカイルは悪ノリをし過ぎる部分もあるが
 こんなにも強引に話を、空気を読まずに推し進めることはない。

 まるで・・・それ以外に静馬が、希咲美桜について

 話題にする筈がないと、信じ込んでいるかのように。

「言い換えよう、希咲美桜というのはカイルの目から見て、どんな騎士だ」

 カイルの誤解に終止符をうつべく、投げ込まれた静馬の言葉に

 返って来たのは、カイルからの大爆笑。

「そうか、つまりベルティーユの取り巻き二人は
 お前にもちゃんとバレないように、随分と上手く立ち回ったというわけだ」

 壁からフォークを持ち上げ、古い藁を一輪車にのせていくカイル。
 静馬も中断していた作業を再開しつつ、カイルの言葉に・・・
 先日、アンとエマの挙動が不審だった理由を、正確に把握した。

「しまった、またあの二人にやられてしまった。
 しかし、もう決闘は正式に受理されたはずだ、ちょっとやそっとでは撤回できまい。
 希咲美桜嬢が騎士でないというのなら・・・逃げるのか?」

 騎士で無いのなら、決闘から逃げても騎士としての名誉などという物が、そもそもないのだから傷つかない。

 瞬間にその答えに行き着くのは、自身が『無敗の騎士王』などと呼ばれ
 散々、騎士として名誉云々と、陰口を叩かれ続けてきた静馬らしいといえば、この上なくらしい。

「いや、それがどうも面白い事になりそうだ・・・」

 そう言いながら、いっぱいになった一輪車を厩舎から運び出すカイルが
 厩舎の入り口に姿を見せた人物に気づくも、足を止めずに挨拶しそのまま外へと出ていく。



「美桜嬢ちゃんは、ワシの所に相談に来た。
 『自分のために、戦いたい』とな、それで・・・お前はどうする静馬
 美桜嬢ちゃんが騎士ではなかったと、今から決闘を止めるか?」

「ジェイムスさん、戻ってたんですか。
 今の自分の発言が、矛盾していると解っていて私に聞くのは
 ・・・少々意地が悪い」

 肩をすくめる静馬に、ほうっ、とだけ返して

 ニヤリと笑みを浮かべるのは、ジェイムスと呼ばれた初老の男。

 此処ウィンフォード学園で、馬の世話を一手に引き受ける人物。
 仕事に厳しく、頑固で気難しい所もあるが、それは己の仕事にプライドを持つが故
 この世界で長く、馬とジョストを愛し、造詣が深く確かな目を持っている。

 明朗闊達にして、何処か型破りな所も受け入れてしまう懐の深さは
 一言で言ってしまえば、親分肌で・・・

 カイルや静馬といった、変わり者にも分け隔てなく

 どころか、むしろ好意的ですら有るといえる。

「一体、ワシの言葉のどこが矛盾して、ワシの意地が悪い・・・言ってみろ」

 言葉は詰問、されどその声は面白がってさえ居る。

 もっとも、ジェイムスの声は低く、深く、異様に迫力があり
 その頑固さとあいまって、大概の人間はこの言い方をされれば
 たとえ自分が正しくとも、取り敢えず謝ってしまいそうになるだろうが。

 一年間と、それなりに付き合いがあり
 なにより表面だけではなく、深く付き合ってきた静馬
 そしてまた、静馬も誤解されやすいのだが・・・
 言葉使いは柔らかくとも、割りと思ったことを、隠さずに言う。

「ジェイムスさんは、美桜嬢に戦うために力を貸して欲しいと相談された
 それなのに、貴方は美桜嬢を騎士ではないといった。
 ジェイムスさんに相談に来るほど切羽詰まった状況で有るにも関わらず
 それでも逃げずに戦う事を選んだ美桜嬢が騎士でないというのなら・・・
 一体誰が騎士であるのか」

 両手を広げ肩をすくめる。

「騎士とは、名誉と誇りをかけて戦うべき時に、逃げ出さずに立ち向かう者の事
 私はそう理解していますが、違いますか」

 その者が、騎士科に属している生徒である必要もなければ・・・
 槍を持って、馬に乗って戦う者のことでも無い筈です。
 騎士養成の為に騎士科のある学園で、平然とそう言ってのける静馬

 大きく硬い掌で静馬の肩を叩きながら

 ジェイムスが破顔し、大きく楽しそうな笑い声を上げる。

「プロの騎士、なんて言葉が何の疑問も持たれず、当たり前に使われるこの時代に
 お前さんみたいなことを言うのは、精々貴族の方達位なもんだ。
 確かに、今回のことはワシの意地が悪かったな」

 前々から変わったやつだと思っていたが・・・

 まるで大貴族の跡取りみたいな、一端のことを言うとはな。

 その上・・・言ってる時は、本物の大貴族みたいにも見えやがる。

 貴弘といい、美桜嬢ちゃんといい、静馬といい、日本人ってやつは、どうしてこう・・・

「随分と変わっちゃいるが、良い騎士になりそうだな」

 口元を愉快そうに歪めながら、低く深い声が明るくそう流れでた。




   

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