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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第十一幕「淑女同盟」

 
 理不尽だと、自分でもそう思っていたが・・・

 それでも、感情は、心が感じることは、止めようがなかった

 朝靄の中、誰もいない練習場で、独り
 今一つ集中力に欠けたままフィオナは、いつもの
 そして、新たに付け加えた練習メニューを、黙々とこなしていく。

 当然、静馬の姿はそこにはない
 フィオナ本人が、自分にはもう関わるなと、静馬を拒絶したのだし
 この結果を得る為に・・・独りになる為に、あんな暴言を吐いたのだ
 ・・・そうなってくれなければ困る。
 そして、予定通り、この場には静馬も誰もいない

 それなのに・・・

 自分は何故、静馬が此処にいないことに

 こんなにも、動揺しているのだろう。

 全てが自分の思った通りに進んでいるのに
 鎧った少女は、馬上で笑おうともせず
 独り暗く沈み込んだ顔をしながら
 
 泣き出すのを、歯を噛み締めて、堪えていた。

 以前より、確実に上達しているのに
 色々な技術を取り込んで、動きは鋭くなってきているのに
 今日の突き出す槍は、精彩に欠け・・・その事が一層、少女の心を追い詰める。

 なんだか、あの時から自分はおかしい。
 独りで大丈夫だと示してみせる
 そう決意して、踏み出した一歩なのに
 歩いていても、無意識に、誰かを探している

 リサが、前に行ったタルトタイムと言うお店に誘ってくれた時だって

 また水野とかいう先輩に会うのが嫌だからとか
 玲奈先輩といっしょだと、苦手だからと言い訳して断った
 リサはそれで納得して頷いてくれた。

 それも、解っていた
 リサは、私になんか興味はないんだから・・・断った理由なんか、気にもしないだろう
 そっけなく、わかった、の一言でそれ以上無理には誘って来なかった。

 でも、自分は騙し様がない・・・

 水野なんて先輩の事は、どうでも良い
 玲奈先輩と一緒なのが本当に嫌なわけじゃない

 ただ、綾子先生に、会いたくなかったのだ。

 タルトタイムは綾子先生が、ウィンフォードの職員と、二足の草鞋でやっているお店だ、当然お店にだって顔を出す。
 この間行ったときはたまたま不在だったけど、次も『たまたま不在』であるとは限らない
 直接顔を合わせる可能性だってあるし
 水野とかいう先輩から、私がお店に来たことが伝われば、なにか言って来るかも知れない。

 それが、怖かった。

 変態気障男・・・先輩の、その後の反応を聞くのが

 呆れられたとしても

 怒っていたとしても

 悲しそうな顔をしていたとしても・・・

 独りでやっていかなければならない以上、あれは、必要な決意表明だった。
 でも・・・先輩は、何も悪くない。
 茜先輩の様に、いきなり言い掛かりを付けてきたり
 カイル先輩のように、殴りかかってきたり

 リサの様に、私を道端の石の様に、見た訳ではないのに。

 本当は、わかってる・・・
 私がやっていることは、中途半端なんだ
 もし、本気で最初から独りでいる気なら

 カイル先輩に殴られた先輩を、心配なんかしちゃダメだった
 その原因が自分にあったとしても、恩なんて感じない
 反省なんかしない、可愛気のない、バカで嫌な後輩として振る舞えば良かっただけ

 たとえ口から血を流して動けないで居る先輩の姿が・・・
 母さんに重なって見えたとしても
 そこで、軽蔑される様な態度をとっておけばよかったのに
 私には、それが出来なかった・・・

 自分から離れればよかったのに
 私が突き放されればよかったのに
 相手を突き放して、相手を傷つけて距離を取った。

 私は、自分が傷つくのを怖がって・・・代わりに先輩に傷つく役を押し付けた、臆病な卑怯者だ

 それなのに・・・まだ、先輩が許してくれるかも知れないなんて

 どうしていつもの調子で会いに来てくれないのかなんて

 心の何処かで思っている、我儘で、嫌な子だ・・・

「先輩が気障ナンパ男だって・・・流石に付き合いきれないよね、こんな子」

 一人呟いている今だって・・・
 最初にあった時のように
 先輩が話しかけて来てくれるのを、心の何処かで期待している。

 そんなはず・・・無いのにね。

 昨日見た光景を思い出して、ははっ、と小さく乾いた笑いが漏れ出る。

 先輩は、ベルティーユ先輩達と一緒にティータイムを過ごしていた。
 相変わらず、酷いことを言われても笑っているし
 お茶を噴きかけられても、相手の女の人を気遣いながら、やっぱり笑っていた。

 少し真面目な顔をしていたのは、ベルティーユ先輩の胸を見つめていた時だけ。
 後はずっと笑っていた・・・決闘をするって話題の時も、ずっと。
 本当・・・やっぱり変態だ。

 お茶を吹き掛けられて、怒るどころか相手を口説きだして、別の人に怒られて
 何故か、その場の三人に、自分を口説けと迫られて
 普段、さんざん歯の浮くようなことを言っているくせに
 自分には、君達の様な美人の横に立って、吊り合わない自信しかない・・・なんて
 いざとなると、腰抜けで。



 でも、カイル先輩からは、私を護ってくれた。



 頭を振って、空回りする思考を追い出す。
 こんな集中力のない状態で練習を続けても、身に付きっこ無い。
 どころか、上の空で練習なんかしたら危険だ、思わぬ怪我でもしかねない。

 ジョストは、危険を排除するためルールを定めた、騎乗槍試合だ。
 つまり逆説的に、それだけの危険を内包しているということに他ならない
 元に、怪我が元で引退していく騎士だって、少なくないのだ。

 今朝の練習は、此処までにして引き上げよう・・・

 馬首を巡らせ、下ろしていたバイザーを跳ね上げると、視界がひらけ
 フィオナは無意識に、大きな息を付いた
 練習中は緊張して、身体はどうしても普段よりは力がはいる。
 それは、如何にフィオナが馬上で過ごす時間が長くなろうとも変わらない。
 
 鎧を着る、槍を持つという事は、戦場に立つと言うことだ・・・そうフィオナは認識している。

「そんな可愛らしい顔なのだな」

 つまり、この不意を突かれた事は、緊張を解いた後なので、フォイナにとっては負けではない。
 負けではないのだが・・・負けん気の強い彼女にしてみれば
 声を掛けられるまで、相手の存在に気づけずにいた自分が、負けたように感じ
 反抗心が頭をもたげ、つい睨むように声の主に振り返る。

 振り返って・・・眇めていた目が、まん丸になった。

「す、ス、スィーリア先輩!?」

「如何にも、私はスィーリアだが。
 正直驚いたよ、私以外にもこんな時間に練習をしている者が居たとは
 それも、今年最後のチャンスをモノにしようと気炎を上げている最上級生ではなく
 こんな可愛らしい一年生だ、ということが」

 言いながら、口角を吊り上げニヤリと笑ってみせる

 そう、ベルティーユの様に艶然とではなく・・・
 自信に満ちていながら、何処か攻撃的で
 フィオナを毛程も、舐めた風もなく・・・騎士と見做して。

「君は誰か『倒さなければならない』相手がいるのだな。
 いや、何も言わなくてもいい、『解って』いるんだ
 そうでなければ、こんな時間に、一人で、こんな場所にはいない」

 フィオナの否定の言葉を、口の中に押し戻す、スィーリアの鋭いアイスブルーの瞳

 その目は面白がっては居たが、馬鹿にしたものではなく・・・

「嘗ての・・・二年前の私も同じだ『こんな時間に、一人で、こんな場所に居た』
 そして、今もそれは変わらない」

 決然と、高らかに謳い上げるようにそう言うスィーリアに、フィオナは魅せられた
 その姿は余りに気高く美しく、それでいながら・・・何処か抜き身の剣の様に恐ろしく
 そして何より、輝いて見えた。

「その倒さなければならない相手の一人は私だな
 つまり、私達はライバルということになる」

 ・・・え?

 呆けた顔のフィオナに、スィーリアがとても可笑しそうな、優しい表情をして笑う
 
「残念だが、私は今日此処で君を見てしまった。
 それで警戒するなという方が無理というものだ
 一昨年の私は、そこから大会二連覇を果たした
 君が、『第二のスィーリア・クマーニ・エイントリー』でない保証はない」

 言葉の内容は警戒であるのに
 スィーリアの顔に浮かぶ表情は、実に楽しげで

 スィーリア先輩になんて、私じゃかないません

 そんな言葉をフィオナは呑み込んだ。

「フィオナ・ベックフォードです。
 『第二のスィーリア』なんて呼ばせません。
 スィーリア先輩を倒して・・・そんな呼び方させませんから」

 フィオナが言い返してきたことが、よほど予想外だったのか
 それともその気骨に感心したのか、本当に嬉しそうに
 フィオナの打倒宣言を、構えること無く受け止めたスィーリアが

 背筋をまっすぐに伸ばし、胸を張り、表情を引き締めると
 槍を脇に抱え、右手の伸ばした指先で、そっと自分の跳ね上げたバイザーに触れる。

 敬礼

 貴女と此処で闘うつもりはない、という・・・騎士同士で交わす姿礼。

 フィオナもスィーリアに習って、敬礼をとる。

「ではフィオナ、今度一緒に昼食でも取りながら、ゆっくり話をするとしよう」

「なっ、私と先輩はライバルって、スィーリア先輩が言ったんじゃないですか!」

 そのフィオナの反応を予想していたのか、口元を手で押さえながら
 スィーリアが喉の奥でひっそりと笑う。
 どこか、やんちゃな妹を見るような、そんな目でフィオナを見やりながら

「なればこその誘いなんだがな。
 我々は、同じく高みを目指す者同士
 『同志』でなければライバルなどとは言わないだろう?」




   

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