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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第六幕「怒りと我儘」

 
 声を掛けられた方へ顔を向けると

 意味有りげににやけた二枚目が片手を上げ、見覚えのある馬を引いて歩み寄ってきた。

「よう静馬、昼飯前に馬の世話か?
 実際、その忠実忠実しさは見習うべき所も多い・・・
 どうだ、俺と共に偉大なるベグライターとして、歴史に名を残す道を歩むというのは?」

 他の騎士に言ったのであれば、屈辱ととられかねない内容だが、カイルの声には冗談の響きしかない。
 どういう訳だかカイルは、静馬を一流の完成された騎士だと、静馬本人がどんなに否定しようが言い張り続けている為
 この二人の間に限って言えば、それは冗談にしかなり得なかった。

 どころか、静馬が仮にその冗談に頷いて見せでもしたら・・・
 カイルが全力で騎士を続けるようにと説得しだす、という過去の実績があるために
 静馬もその冗談に、否定以外の答えを返せなくなっていた。

「いや、止めておこう。
 勝ち目のない戦いは嫌いではないが・・・
 超一流のベグライターの腕前を、こうもまざまざと見せつけられては、流石に頷く勇気がない」

 軽く肩を竦め、カイルが引いているのがフィオナの馬であることに、素直に感心してみせる。

 静馬は、フィオナの馬が逃げ出したことも・・・
 たまたま近くに居たカイルが、その馬を捕まえるのに手を貸したことも知らない。
 ましてや、その後にフィオナの代わりに、リサが茜と決闘まがいの模擬試合をしたなどということも。

 そう度々有るものではないが、ジョストの騎士養成学校と言う側面を持つウィンフォード学園では、馬の逃走事件は大ニュースになり得る内容ではない。
 学園の保有する馬の数が多いのだ、確率論的に言っても馬絡みの事件は起こりやすく
 新入生が入ってきたこの時期は、実際一年で一番トラブルが発生しやすい時期でもある。

 にもかかわらず、静馬がそこに思い至らなかったのは、フィオナの乗馬姿を実際に見ている為
 逆説的に言うのであれば、先入観で判断を曇らせるほどに、フィオナは馬に慣れていた。
 馬を逃がすなどという、素人の様なミスをするはずがないと思い込むほどに

 近寄って、その鼻面を軽く撫でながら、まるで人にするように微笑みかける。

「随分と優しい目をしているな
 鎧った姿を知らなければ、ジョストに関わる馬だなどとは信じられないほどに。
 さて、君はどこか怪我でもしていないかと心配していたんだが・・・どうやらそれは杞憂のようだね。
 頭の良い素直な子だ、少々素直すぎるようにも見える」

「わかるのか?」

 馬の目を見て語りかける静馬に、カイルは別段バカにした風もなく問いかける。
 ウィンフォード学園では、人が馬に語りかける姿はそれほど珍しい訳ではない。

 何より、カイルは静馬の友人で、静馬が馬に語りかける事など日常事だと知っている。
 
「ああ、この子は走れる子だ。
 優しく、臆病と言える程に繊細なことを差し置いても
 ジョストに向いていると断言できる程に頭がよく、素直な・・・」

 静馬の言葉にカイルが素直に・・・やや大げさに驚いた顔をしてみせる。
 ジェスチャーでも感情表現でも・・・何をするにもオーバーで、何処か芝居がかった表現をするのは、もはやカイルという人間の構成要素なので、静馬も一々なにか言うようなことはない。
 どちらかと言えば、早々にその部分を指摘することは見切りをつけた。

 いや、諦めたといってもいい。

「お前がそこまでべた褒めするのは初めて・・・いや、二度目か?
 夜風以来だから随分と久しぶりだが・・・
 この馬の主になれた騎士は、幸運の女神に随分と愛されているんだな」

 カイルの言い回しに引っかかりを覚え、ようやく自分が勘違いをしていたことに気付く。

 てっきり、先日話した為に昼休みを利用して

 フィオナの馬を連れてきてくれたのだと、一人早合点していたが

 カイルはフィオナの馬だと知らずに、どういう訳だか・・・

 たまたまその馬を連れて歩いている所に、自分を見掛けて声を掛けてくれただけだったのか。

「フィオナ・ベックフォードと言うのさ、この子の主は。
 いやまてよ、案外・・・幸運の女神本人かも知れない。
 何しろ、思わず声を掛けてしまう程可愛らしい子でね」

 べーっと子供っぽく舌を出して、毒舌を吐きまくったフィオナを思い出し
 知らず笑いを漏らす静馬だったが、その笑いには苦味がなかった。

「ところで、何故カイルがフィオナの馬を?
 もしや、目星をつけていた騎士の一人が彼女だというのなら
 ベグライターの能力とその判美眼には敬意を表する所だが」

 言いながら、フィオナとカイルの性格で、果たして上手くやっていけるのだろうか?と、心配になる。

 二人共に割と譲らない性格をしている上に
 フィオナは一方的に押し付けられて・・・素直に従う性格ではない。
 負けん気が強く、意地っ張りで見誤りやすいが、誰よりも繊細で傷つきやすい。

 一方のカイルはといえば、普段の付き合いでは楽しいやつで
 どちらかと言えば、いじられキャラであるのに
 ジョストの事となると、とたんに譲らなくなり、非情とまでは言い過ぎだが、容赦がなく
 どちらかと言えば、黙って従えというタイプだ。

 ・・・どう考えても、相性がいいとは思えない。

 むしろ、最悪の相性、と言う部類だろう。

「その前に静馬、一つ尋ねるが素直に答えろ。
 お前の言う幸運の女神と言うのは
 髪を肩の辺りで切りそろえた金髪で
 明るい碧の瞳をした、目の大きな・・・
 お前の背後で顔を真赤にして睨んでいる子で間違いないか?」

 振り向いた先には、僅かに頬を赤らめ、ジッと睨みつけるフィオナ。

 本人が居るとは思っていなかったとは言え
 散々、可愛いだの、女神だのと・・・一言で十分赤面するに足ることばを、これでもかとばかりに並べ立てられたのだ
 それこそ、社交界でその様な言葉を軽く受け流す術を身につけた、ベルティーユででもなければ、恥ずかしさの余り、真っ赤になって逃げ出したとしてもおかしくない反応。

 フィオナが踏みとどまって、睨みつけることが出来たのは、最初から静馬が気障ナンパ男だという前知識があったればこそ。
 前もって覚悟が出来ていなければ、如何に負けん気が強くとも年頃の娘である。
 恥ずかしさの余り、逃げ出していたことは疑いようもない。

 さらに言えば、冗談口であろうとも女神だ、などと口走った方も
 それを本人に聞かれていた、となれば赤面ものの気不味さと、気恥ずかしさを感じるのが当然で・・・

「やあフィオナ、もしやカイルに馬を取り上げられて困ってるのかい?」

 などというような、冗談口をさらりと真顔で口にできないものである、普通であれば。

 言われてカイルの引いているのが、自分の馬だとようやく気が付き
 はっと目を見開き・・・手を差し出す。

「返してください私の馬」

「それが、馬を此処まで連れてきた上級生に掛けるべき言葉なのか?」

 少し怒った声で返って来るカイルの返事に・・・
 フィオナはうんざりした表情を浮かべる。

 ・・・またそれなの、誰も頼んでなんかいないのにっ

「お礼をいえばいいんですよね、ありがとうございました。
 私だって馬が逃げ出した被害者なのに・・・
 逃げ出した馬が悪いんでしょ」

 誰が聞いても、感謝どころか・・・
 ケンカを売っているとしか思えない、面倒臭そうな口ぶりの感謝の言葉と、後に続いた言い訳。
 反射的にカイルが、拳を握りしめて振り上げる。

 ジョストが愛されるこの地で

 ジョストの騎士を、ベグライターを育てるこの学園で



 侮辱という行為は、重い。



 茜はそれを教えるために、不器用なやり方ではあるが、フィオナに模擬試合を申し込んだ。
 隣に居た水野貴弘は、入学して間もないフィオナにそれを理解することはまだ出来ない、と茜を諌めた。
 言い方を変えれば、貴弘はフィオナが痛い目にあって、痛みと共に知ればいい事だと

 茜ほどには親切に、フィオナに教える気がなかった。

 当然と言えば当然、貴弘にとってフィオナは何ら責任を感じる相手ではないのだから。
 そして、予想外に痛みを以て知る機会は、早くフィオナに訪れた 

 件の事から、フィオナが学んだことは、茜の望んだ学ぶべきことではなく
 当然のことながら、カイルからフィオナを守ってくれるものではなかった。

 骨同士が激しくぶつかり合う鈍い音。

 力任せに振り下ろされた拳が、立ち尽くすフィオナを殴りつけ
 小柄なフィオナの身体が、地に投げ出される。



 フィオナとカイルの間に割って入り、無抵抗でカイルの拳を受けた静馬が踏みとどまらなければ。



 殴られたままの姿で、静馬が漏らした第一声は・・・

「すまないカイル、君の拳を阻んでしまった」

 という、謝罪の言葉だった。

「バカッ、なんだってまともに喰らった!
 避けるなり受けるなり、幾らでもやり方が有っただろっ」

「そんな事が出来るものか、君の怒りは正当で、その拳は振り下ろされるべきだった。
 それを阻んだのは、私のただの我侭にすぎない。
 だが、それを推して頼む、拳をおさめてはもらえないか」

 殴られた際に切れたのであろう唇の端と、鼻から血を流しながら、済まなそうに見る静馬に
 カイルは一つ呆れた溜息を返し、苦笑しながらその手に手綱を押し付けて、背を向ける。

「そんな顔するな、その一年生と馬の事は全部お前に任せる。
 ちゃんと冷やしておけよ、熱を持って腫れるぞ」

 目の前で起こった事に、呆然として立ち尽くすフィオナの隣を通り過ぎ
 離れ際、その細い肩を軽く叩きながら静馬の方へ押しやる。

「悪いが、あいつの面倒はお前に押し付けて、俺は逃げる。
 あいつだって・・・殴られた相手より、生意気でも女の子に看病されたほうが嬉しいだろうしな」

 言いながらニヤリと笑うカイルは、内心で全く別のことで笑っていた。

 どんなにお前が否定しても、やっぱりお前は一流の騎士だって言う俺の勘

 今回のことで確信に変わったぞ静馬。


   

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