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歪んだパズルのつなげ方

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*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第三幕「お茶会は優雅に」

 
「あら、今日もまじめに来たのね。
 『無敗の騎士王』は無遅刻、無欠席・・・そのあとには、無能に無神経と続くのかしら?」

 教室に入るなりそう声を掛けられ、思わず吹き出す静馬。

 今日は久しぶりにバリエーションに富んだ罵倒が朝から飛んできたな、と声の主に目を向ける。

 いきなりの暴言にもかかわらず、それでも以前とは違い面と向かって言われるのは大きい。
 しようと思えば、言い返すことだって出来るのだ、言い返そうと静馬がしないだけで。
 そして、静馬にとっても声を掛けてきた相手にとっても、この罵倒が唯の挨拶でしか無いということもまた、大きく違っていた。

「上手いことを言う。
 そこに無価値と付けない君の優しさに感謝を。
 おはよう、アン」

 笑いながら静馬にそう返されては、普通の者であれば苦々しい顔をする所だが・・・

 アンと呼ばれた赤髪の少女は、屈託なく笑い返した。

「あははっ、アンタにそんな事言う訳無いでしょ
 ベルティーユ様の鎧の修理やらをしてもらったんだから
 そ~んな恩知らずじゃないわよ」

 無能、無神経というのは冗談で口にするには鋭すぎる言葉、という意識はアンには無いらしく
 あっけらかんとしているのを、周りで聞いている方がハラハラして見守っている。

 もはやすっかりと日常的になった光景。

 朝一番にアンがこの調子で静馬に声を掛けるために、逆に他の者が静馬の陰口を叩くことを封じていしまっているのだが・・・
 アン本人は全くそのことを狙っても、意識してもいない辺りが、なるほど正しくベルティーユ一味の一員と言っていいだろう。

 全く本人には悪意がなく、あっけらかんとしている辺りが、妙に憎めないのだが
 それでも、さすがに名誉を重んじる騎士に対して、掛ける言葉としては言い過ぎだと
 アンをたしなめる碧髪の相方はベルティーユ一派でも、比較的常識人なエマ。

 そんな二人の間にあって、艶やかに微笑む金髪の美女が、優雅な身ごなしで朝の挨拶をしてくる。

「おはよう御座います静馬さん。今日は何か良い事でもありましたの?」

「お早う、今日は・・・ではないんだが。
 麗しのベルティーユ嬢の笑顔が朝から見ることが出来た、と言う答えでどうだろう」

 片目をつぶってみせる静馬に、口元を手で隠し、鈴のような笑い声を上げ、ニッコリと笑い返してくる。

「まぁ、正直な方ですのね静馬さんは」

 言いながら、一層笑みを輝かせるベルティーユの美貌に、眩しそうに目を細めて、軽く肩をすくめてみせる。
 豪奢な外見と合わせたような派手好きなところはあるが、ベルティーユはまっすぐでそれ故に静馬の言葉も、言葉のままに受け取る。

 彼女は正義感が強く、義に厚く、本物の貴族精神を持っている。
 その点で言えば、学生会会長と比肩するとすら静馬は思っている
 それと知っているからこそ、静馬も素直にベルティーユを賞賛するのだが。

 アンとエマの二人には、静馬の素直な賞賛の言葉が、どうにも不評で・・・
 時々そのことについて不満を爆発させるのだが、ベルティーユはそれを窘める。

 自分の価値基準から見て、曲がっていると思われることをすれば、相手が誰であろうと、窘めただす。

 上から押し付けるのではなく、優しく言って聴かせるように、穏やかに説得をする。
 相手がわかるように何度でも根気よく、時に微笑みすら浮かべながら。
 そこには揺るぎない自信と、心の余裕、寛容の精神が満ちており
 叱るという行為にまでは、決して及ばない。

 自分の考えに絶対の自信は有るものの、さりとて相手の考えが間違っているとは決めつけない。
 相手には相手の考え方があるのだ、という受け皿有っての言葉だけに
 そこから争いにはならないのも、ベルティーユの器の大きさであろうか。

 アンとエマの二人も、普段はベルティーユを持ち上げているのだか、貶しているのだか区分の難しい言動を数々するが、そういった際のベルティーユには驚くほど素直に自分の非を認めるあたり
 本当に良い関係の三人組なのだ。

 ・・・

 ジトッとした目で見るのを隠そうともせず、アンとエマの二人が、なにか言いたげに視線を向けているのに気づいていながらも
 静馬は何処吹く風とばかりに、優雅に紅茶の香りを楽しんでいた。

「今朝も馬に乗っていらしたの?」

 ティータイムと言う習慣には、こうして会話を楽しむ事も含まれているのだという事を、静馬は最近まで理解できなかった。
 理解できるようになれたのは全面的に、こうして誘ってくれるベルティーユのお陰である。
 彼女はゆっくりと時間を掛けてカップの中身を喉に落とし、ゆったりとした空気を、時の流れを楽しみながら、アンとエマの二人と談笑する。

 そこに最近誘ってもらえるようになり・・・
 おかげでこの馴染みのない習慣にも慣れ、理解することが出来
 時にこうして話を振られる程にベルティーユとの親交を深め・・・
 取り巻きの二人に睨まれているのだが、収支は黒字だと静馬本人が思っているのだから、それは十分に幸せなことなのだろう。

「そんな風にクールビューティを装わずとも、二人は十分に綺麗だと思うのだが」

 平然と言ってのける静馬に、最初のうちは嫌悪感による反発から、視線は一層鋭くなったが・・・最近では、毒気を抜かれてしまう。

 フィオナにも言われたが、言い回しが妙に柔らかく
 角を立てないように相手を立てるくせに、歯が浮くような表現が普通に飛び出して来るため
 静馬の言葉は、聞く者によっては妙に気障ったらしく感じる。
 その上、おどけたり道化と成るような事はしないため・・・
 慣れないうちは、女性であれば口説かれているように感じ、不快感を持つものも少なくない。

 ただ、本人には全くそのつもりはなく

 その上、外見もどこにでも居る十人並みである為か、その気障ったらしさが全く様にならず、嫌味にもならないのは、喜ぶべきか悲しむべきか。
 更には、どれほど貶されようと・・・それこそ面と向かって罵倒されようと、その独特の言い回しでのらりくらりと躱してしまうために

 本人的には甚だ不本意ではあろうが。カイルと同類と見られているふしがある。

 一方、ベルティーユは男爵家の御令嬢である。
 そんな二人が、どうして知り合い交友関係を結んだのかとなると、切っ掛けは例の渾名の件
 幸いにしてベルティーユには社交界出の経験があり、静馬の様な言い回しで口説いてくる相手を、軽くいなす事は、必要なスキルとして彼女には備わっている。

 最初はその手の輩だと、軽くいなしていたのだが・・・
 話していると、どうもそうではないということが見え始め
 そこが逆に興味を引いて言葉をさらに交わすようになり、今の友好的な関係に至った。
 
 静馬は静馬で、ベルティーユが貴族のお姫様であると知っても、肝が太いのか、はたまた無神経なのか、態度を全く変えること無く。
 元々の落ち着いた穏やかな調子で、彼女との友誼を重んじている。

 周りの年頃の娘たちが、黄色い声で噂をするような関係ではない。

「何時も御馳走になってばかりで申し訳ない。
 いずれ、何かのおりにお返しをしなければならないね」

 背凭れに軽く身を預け、胸を張ってゆったりと座る様は、男爵令嬢のベルティーユを前にして自然体で

 まるで、自身も貴族であるかのように堂々としている。
 
「あまり寂しいことをおっしゃらないで。
 友人とお茶を楽しむことに、見返りやお返しを求めるものなどおりません。
 そして、たった今静馬さんは私に贈り物をくださった。
 私の友人は、やはり心高き方であったという喜びを。
 これ以上一方的に送られては、私の方がお茶に誘いづらくなってしまいます」

「これは・・・素直に完敗を認めなくてはならないな。
 やはり、君は素敵な人だね」

「それ程でも、ありますわ」

 満面の笑みと呼ぶにふさわしい笑顔は、自信に彩られて輝く。

 静馬が強く日本人的感覚を持っていたのなら、微苦笑を浮かべていたかも知れない。
 ベルティーユの取る態度は、謙譲を良しとする部分は少なく、自身と自負に支えられている。
 しかし、静馬の表情を埋めたのは透明な笑みで、それは大輪の薔薇の様に華やかなベルティーユの笑みに、そっと添えられる様であった。

「山県静馬の口車に乗せられちゃダメです、ベルティーユ様」

「そうです、この男は口を開けば口説き文句しか出て来ませんから
 まともに取り合う必要は有りませんよ」

 会話が途切れ、静かに笑いあう二人の空気に何を感じたのか。
 此処ぞとばかりに、畳み掛けるように、薮睨みのアンとジト目のエマが口を挟んでくる。

 本当に二人が、静馬を言葉通りの人間だと思っているのなら
 どれほどベルティーユが強引に押し切ろうとしても、きっと今この場のみ成らず
 ベルティーユのお茶の時間を、静馬が共有することは出来なかったであろう。

 彼女達は、周囲から誤解されやすいが、心底ベルティーユの味方である。
 そしてそれは、ベルティーユの意見を何でも肯定するということと、イコールではない。
 太鼓持ちや腰巾着と言われるような、ちやほやと対象を持ち上げ・・・などという存在ではなく

 時に、褒めているのだか、貶しているのだか解らないような発言や、度が過ぎたような悪ふざけもするが
 ベルティーユの為であるのなら、苦言を当然のように・・・真正面からぶつける事も厭わない。
 取り巻き、いや・・・れっきとした友人であった。

 もっとも、今の二人の発言が本心からのものであると、誤解するものはこの場にはおらず。
 女の敵です、と告げるエマのとどめの一撃に、静馬がたまらず吹き出す。

 だが、偶然その場に通りがかり

 自分でも理由のわからないままに身を隠した少女にとって

 本人の否定しない評というものは・・・

 真実として記憶されるのに、十分な理由足り得た。

「なによ・・・やっぱり変態気障ナンパ男なんじゃない。
 あんなコト言われて、ヘラヘラ楽しそうに笑って
 本当に騎士なの?」


   

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