FC2ブログ

歪んだパズルのつなげ方

スポンサー広告

スポンサーサイト

 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit
   

DR~少女竜騎士物語~

第一幕「騎士と乙女と」

 
 傷ついた身体は、食事と休養が

 傷ついた心は、情けと時が癒してくれるだろう

 もちろん、その重軽によって、致命的であれば治らず

 傷つき方が複雑であれば、後遺症が残ることもあろうが

 どちらにも言えることは、受動的な要因が大きい。

 では・・・傷ついた誇りは?

 休養も時も食事でさえも、決して癒してはくれない。

 情けに到っては、傷口を抉ることに成りかねない。

 堅硬で有りながらも、同時に酷く繊細で傷つきやすく、脆い。

 誇りとは、一面で矛盾の塊だ。



 そう、勘違いされやすい代物。



 誇りとは、掲げるべき旗であり。
 腹に呑み込んだ槍であり。
 誓いの剣である。

 堅硬であったり、繊細であったり、或いは脆く有ったりするのは
 誇りではなく、それを支える心で・・・誇り自体ではありえない。

 それでは『傷ついた誇り』とは、つまる所傷心で、時が癒してくれるのか?

 心の傷は情けが癒すが、逆に誇りの傷は情けが抉りかねない、そう定義したのは間違いなのか?

 そうではない、誇りの傷だとされている大部分は、心の傷なのだ
 誇りの傷とは、全くの別物。

 心の傷は人に付けられるが、誇りの傷は自傷なのだ。

 故に、自分で傷を癒すしか無い。
 傷を埋めるか、見えぬように鎧ってしまうか。
 傷ごとえぐりとってしまうかは、別として。

 だが、初めて付けられた誇りの傷は、火傷のように気障りで・・・
 なにより、今まで疑うことさえしなかった部分の傷だけに
 深く、気付かぬ振りをして生活することなど、出来様もない。

 言い換えるのなら、人生で初めての・・・死に至る傷を負ったのだ。

 余りに痛烈な痛みに、ひねくれるのも、塞ぎこむのも当然。

 だが・・・
 今、馬上にいる少女は、生来の負けん気か
 それとも、誇りを支える何かか・・・

 痛みに蹲ることを拒絶して、立ち上がり
 傷ついたまま、現実と才能という、冷たい壁に挑み

 叩きのめされた。

「ははっ・・・本当、あの子天才だよね」

 力なく笑う声が虚しく響き、それが一層打ちのめされた心を、追い詰める。

 造作もない事のように、目の前でやってのけられていた事を
 自分で実際にやってみた結果・・・
 それがどれほど難しいのかが、ようやく理解できた。

 いや、もっと素直に表現するのなら。

 同じ事が、自分には出来なかった。

 少しは自分の腕に自信があった。
 今まで、同年代の相手には、誰にも負けたことがなかった。
 だから、完璧にとは言わなくとも、真似事ぐらい出来るだろう
 そう・・・思っていた。

 だが、結果は・・・
 少女のプライドを、ズタズタに切り裂いてしまった。

 荒い息を肩でつきながら、手にしたタオルで額を流れる汗を拭おうと上げた手が
 跳ね上げられていたバイザーに触れ、小さな引っかき傷と共に、不快な音をあげる。
 それに眉を顰めながら、どこか苛立たしげに漏らす舌打ちは意識してのものではなく・・・
 バイザーに向けられたものでも、当然無い。

 ほんの些細な出来事に、思わず感情を抑えられずに反応し

 そんな自分の反応が、更に苛立ちを募らせて行く。

 本当は、自分が何に苛立っているのかを自覚できるほどに、少女が聡明であるが故に。

 その不快感を飲み込み、達観・・・は無理にしても、表面だけでも平静に取り繕える程

 少女が、大人では無い為に。

 やけにゆっくりと羽飾りの付いたヘルムを脱ぎ、抑えつけられていた金髪を解くように軽く頭を振る。
 ヘルムの下に隠されていた少女の顔は、幼さの残った頬のラインからも解るように、女性と評するよりは、女の子にまだ属する。
 散った珠の汗が輝く様も、麗しいと言うよりは、愛らしい。

 唇を噛み締め、泣き喚くのを必死に堪えているその表情も。

 ヘルムを持つ手が、腕ごと震えるほどに力がこもる・・・



「どうやらそこが、分かれ道のようだよ」



 不意に背後から掛けられた声は、酷く穏やかで柔らかく、耳から心へ流れ込むかのようだった。
 咄嗟にタオルで目元を拭いながら、落としかけたヘルムを、少女は慌てて抱きしめる。

「何ですか突然。
 ナンパならどっか行ってください
 そう言うのしてくる男の人に、興味ありませんから、私」

 相手を小馬鹿にした様な声色で、必死に返した言葉。
 それが少女特有の強がりなのだと、本当に近しい人間であれば気づけたかも知れない。
 或いは、咄嗟にそんな態度をとってしまうほどに、少女が子供であるということも。

 不躾な態度をとっても許される、という根拠のない対応・・・
 それこそが、社会的な経験値の少なさを物語っている。
 つまりは自分の行動、態度が・・・

 相手の大人な対応に、無自覚に甘えているということだと、気付き得ずに。

 だが、返って来た相手の言葉は、欠片もそんな事には気分を害した風もなく。
 それどころか、何処か楽しげですら有った。

「そこで咄嗟にナンパと言う言葉が出るということは、まずもって美少女であるらしい。
 思わず声を掛けてしまった理由が自分でもわからなかったが、君の美しさ故と言うことか、成程」

 何かを妙に納得したような、何処か感心したような声に、少女が頭に血を昇らせ
 振り向きざまに、手に持っていたタオルを声の主に投げつける。

「からかったり、バカにしたりするならっ、他所に・・・」

 怒鳴り声が途切れ、怒りの表情が、間の抜けた表情を経由して・・・堪えきれず吹き出す。

 投げつけられたタオルが広がって、相手の顔に張り付いていた。

 空中で掴み取ろうとしていたであろう、右手が伸ばされた状態で。

 顔に張り付いていたタオルを、どうにもきまり悪そうに剥がすさまに
 少女は再び笑いの発作に襲われるが、顔を真赤にしてこらえる。
 もっとも・・・
 必死で口を手で抑えて、細かく肩を震わせたその姿は、何も隠してはいないのだが。
 それでも、面と向かって笑うという行為を、少女は避けたと言う事実は
 少なくとも先ほどの八つ当たりとも言える、不躾な対応に比べれば、ずっと良い。

 馬上にありながら、優雅とも言える礼をする目の前の男

 気障な仕草に全く吊り合いの取れない、凡庸な外見と
 先ほどの情けない姿とのギャップがとどめとなり、再び少女が吹き出すことになる。

「何もそんなに笑うことはないだろう。
 人には失敗や、出来なかったことなどいくらでもある」

 軽く肩を竦めて、少女の礼を失する態度を軽く受け流すと
 男は声と同様、穏やかに微笑んでみせた。

「そして、失敗は何ら恥ずべきことではない。
 失敗したからこそ、誰憚ること無く君の香りを堪能できた
 むしろ、失敗した過去の私を褒めてやりたいくらいだ」

 片目をつぶってみせる男に、少女が恥ずかしさの余り一瞬にして赤面する。
 つい先程、投げつけたあのタオルで、自分が汗を拭ったことを思い出したのだ。

「うわぁ・・・変態ですね、ナンパ男というだけでもアレなのに。
 ドジで気障で変態なんて、最悪です、近寄らないでください」

 軽蔑の眼差しと共に吐き出した言葉は、語調は丁寧であるが・・・完全に相手に対する拒絶の言葉。
 初対面の相手に対し、使うべきでも、使って許される代物でもない。
 友達同士のじゃれ合いで、冗談とわかり切った流れの上でのみ、許されるであろう言葉

 それを何の警戒も、躊躇いもなく少女は相手に投げつけるあたりも、子供であることを示している。

「ドジは否定できないが、気障は出来れば止めて欲しい。
 ナンパ男の件は、君の美貌が原因ということで結論が出ているはずだが?」

 ところが、男の方はと言えば・・・別段それに怒った風も無ければ
 顔を顰めるでなく、ひょうひょうと聞き流し、まるでごく当たり前のように会話を続け
 逆に、少女のほうが面食らって、会話を打ち切ることが出来ず、ズルズルと引きこまれていく。

「変態は否定しないんですか?」

 イタズラっぽい碧の瞳で、ニヤニヤ笑う。

「君は、男に幻想を抱きすぎている。
 こんなものだよ、生身の男なんて物は。
 まぁ、もっとも・・・口に出して言うものは少ないだろうが」

 悪びれもせずに、しれっとした表情で返しながら、投げつけられたタオルを畳んで差し出す。

「さて、余り引き止めては風邪を引かせてしまうかな
 汗をかいた服のままでは、ね」

 一度、わざとらしくタオルに視線を向けて見せ、口角を僅かに上げると・・・少女の眉が吊り上がる。

「そのタオルはあげますっ
 変態気障ナンパ男の使った物なんて使えませんからっ」

 ベーッと思い切り舌を出して、馬を走らせようとする少女の背に、苦笑したような声が追いすがる。

「こんな素敵なものを頂いたお礼をしなくてはね・・・
 そこで、名前を教えてはくれないかな?
 変態ナンパ男にはお断りだ、というなら大人しく引き下がるしか無いが」

「・・・気障が抜けてますよ。
 人に名を尋ねるときは、まず自分が名乗るべきじゃないんですか?」

 散々、礼を失した行いを、そして物言いをして来た少女が
 今更ながら、礼儀を持ちだしたことに、男は・・・必死に笑うのをこらえた。

「山県静馬、騎士科の二年だ、よろしく」

「あっ、先輩だったんですね。
 フィオナ・ベックフォード、騎士科一年です。
 でも、変態気障ナンパ男の先輩と、よろしくするつもりなんて無いですから」

 馴れ馴れしく話しかけたりしないでください・・・そう言うなり馬の腹を蹴って走りだす。

 汗が乾いて服が張り付き、鎧の中は蒸れて不快
 変な先輩に捕まって、恥ずかしい思いを散々したというのに
 フィオナは、馬を駆りながら・・・

 自然と笑顔になっている自分に気づいた。

 そして、先ほどまで打ちのめされ、萎れていた心が、ほんの少し上向きに持ち直していることも。


   

~ Comment ~

NoTitle 

悲恋姫を読み返しに来たら新章と新作が増えていたので思わずコメントをば。

まさかワルキューレ・ロマンツェを書いて下さる方がいるとはっ・・・!
しかもフィオナ・ベックフォード√?ぽい!
竜造寺茜√は公式で移植された時に追加されそうな雰囲気ですので正直嬉しくてしょうがないです。

Re: O-kawaさん 

コメントに感謝を。

読み返しに来ていただいたと言うことで、完結後も変わらぬご愛顧をいただけ、書き手としては嬉しい限りです。
どのお話も、だいたい先の展望は見えているのですが
いかんせん二月は休みがなかったので更新が出来ず、現状体力気力の回復中ですので
のんびり続きを待っていただけたらと思っています。

ワルキューレ・ロマンツェ面白いんですけどね、SSを見かけないのは勿体無いくらいに
だれもフィオナやベルティーユが全面に出ているSSをかいてくれなさそうなのでという
悲恋姫と同じ理由で書き始めたのですが・・・
楽しんでもらえたのでしたら、嬉しい限りです。
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
無料アクセス解析
現在の閲覧者数:
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。