歪んだパズルのつなげ方
悲恋姫†無双
第百七十五話 吹く風に稟と立ち
バカは死んでも治らない・・・
夢みたいな理想を掲げて
糖蜜のように甘い考えを本気で信じて
現実を付きつけられても尚・・・
胸に抱く理想を手放さずに・・・
一歩ずつ、その夢見た理想を叶えようと、脚を踏み出す。
そこが、灼熱の鉄の上であろうと、剣の山であろうと構わずに。
お兄さん・・・
風は、そんな馬鹿に・・・なんて言えばいいですか。
『世界』は人が敵うあいてではないのですよと、諭せばいいですか
夢は叶わないから、夢というのですよと、笑えばいいですか
どうして一番の望みを叶えようとしないのですかと、怒ればいいですか
それとも・・・
一瞬でも長く、一緒にいたいから、もうやめて下さいと・・・
泣けば・・・いいですか。
「流石に星ちゃんでも、船戦で紫苑さん相手では、荷が勝ちすぎるみたいですねぇ」
二つの主戦線から外れた場所にいるとはいえ、戦場とは思えないほどに、飄々とした言葉を口にした風の声は、誰に話しかけるともなく、風に流れた。
飴を口に咥えたまま、器用につぶやいた内容は、声や口調とは全く異なり、冷静な目で捉えられた現状判断・・・
夜風に金の髪を波打たせながら・・・
一体何処を見ているのか解らぬ眼差しで
風はそっと語りかける。
「と言って・・・安心ばかりも出来ませんよ、風」
つるに指を這わせた眼鏡の奥から、感情を押し殺した、理性の刃の如き視線を向けてくる稟は・・・
無意識で、本人も全く気づいていないが
極薄い、笑みを浮かべている。
慢心でも、ましてや歪んだ喜びの感情でもなく・・・
その笑みが意味するところは、賞賛。
ただし、向けられている相手は、星ではない・・・
「桂花も・・・随分と思い切ったことをするものです」
軽く肩をすくめ、感心と呆れが鬩ぎ合っている心の中を、目の前の風にだけは曝け出す。
それもほんの一瞬だけ・・・
すぐさま、元の鋭い氷のような雰囲気を身に纏う。
「しかし、他の者はともかく。
仲達殿と一影殿、あの二人が・・・
桂花の打ったこんな手で、動揺するとは・・・とても思えません」
「そですねー」
稟が眉をしかめて見返すのも気づかずに、風は何時もののんびりした表情で、ぼーっと前方を見つめている。
風は今・・・泣いているのだろうか。
最初に稟の頭に浮かんだのは、そんな言葉。
とっさにそう考えてしまうほど、風の返答には違和感が満ちていた。
短すぎ
おざなり過ぎ
なにより、即答過ぎた・・・
深く考えているように見えずとも
相手の答えの先で座って待っている様な、何時もの風の言葉ではなく・・・それは、気のないただの相槌。
稟は知っている・・・一影が、本人とは思えないほどに、己の存在を切売りするかのようにかなぐり捨ててでも・・・何かを掴もうとしていることを。
稟は知らない・・・風が、一影の存在を『世界』から護っていることを。
それ故に、稟が思っている以上に、一影の存在が揺らぎ消えかかっていることが・・・手に取るように感じられることを。
風は知っている・・・『世界』に蝕まれた一影の時間が・・・もう、無いことを。
風は知らない・・・夜光からの延命の提案があったことを、その方法があることを。
そして、一影が・・・『世界』の操り人形になるくらいなら、このまま死ぬと、すげなく断ったことを。
「本当に、嘘つきのくせに・・・
相手に嘘をつかせない・・・ずるい人ですからね。
お兄さんも困った人です」
怒ったような、ちょっと拗ねたような顔を隠そうともせず
唇を尖らせて、不平を漏らす素直な反応・・・
それすらも、稟の目には無理をしていることが解り・・・哀しく映る。
本当は、今この瞬間ででも・・・
風が彼のもとに駆け出したいのが、解っているから・・・
だから・・・
私は、それに気が付かない振りをしなければならない。
故に・・・
「覚悟はいいですか、風」
・・・とは、稟は言わなかった。
それは、彼女の親友を馬鹿にした言葉。
覚悟など・・・宿屋で別れたときに、風も稟も出来ている。
その意味合いは、二人にとって全くと言っていいほどに違うが
今、口に出してそんな事を聞いて、曲がる程度の代物でないのは同じ。
そも、一影殿のあの変容をみて・・・
僅かにでも躊躇うことなど、自分には出来ない。
それは彼の覚悟に唾し、踏み躙る行為であり
彼がそれ程にしてまで掴んだものを、舐めて掛かる侮蔑の行為。
それこそ・・・また風に、ひっぱたかれてしまいますからね。
「一影殿・・・いえ、『魔王』の目は、相手の策を見抜く。
ならば、軍全体としての統一の策を採らず、各個で勝利への最善手を取り・・・策を読まれ、逆手に取られることを封じる。
・・・余りに乱暴なやり方ですが、桂花の信頼に答えないわけにはいきません」
稟の言う通り、桂花が華琳に進言した策は・・・風や稟、鏡香の能力への信頼が有ったればこそ、進言も、承認も出来る滅茶苦茶な・・・策とも言いがたい代物。
独自に判断し、戦局に柔軟に対応し・・・
相手の隙を・・・味方が創り出したチャンスを、瞬時に見抜き・・・見逃さずに動ける。
各人が、筆頭軍師足りえる能力を持つが故に・・・
一見ばらばらに動いたとしても、味方の思惑を受けて即応し、自然と連動できる多頭の獣・・・
多角的軍師集団を、分散して運用する・・・多面同時展開連動。
「『魔王』の軍勢は死兵の城壁・・・
それを打ち崩して、喉元に刃を突きつけねば・・・彼を止めることが出来ませんから
相手の右翼軍集団を・・・一気に突き崩します」
稟の嘗て無い強気な断言口調に、僅かに驚いた様な目で見上げてくる風から、赤くなった顔を背ける稟。
・・・ポンッと、何かに納得したように風が手を打ち鳴らす。
「強大な敵兵力を相手に、大将を一点で押さえる。
兵法の基本原則に則った判断です
・・・だから、そんな変な目で見るのはやめてください風」
ともすれば裏返りそうになる声で言っていれば、稟の言葉の論理的整合性など、大した壁に成らず。
風が口元を抑えながら、上目つかいで稟を見上げる。
その視線の先で、夜闇を切り裂くように二条の光芒が、弓鳴りの音と共に高々と上がったかと思うと、ゆっくりと落下傘に揺られながら降りてくる照明弾が照らしたのは、純白の趙旗・・・
それが誰のものなのか、瞬時に二人には解った。
しかし、両人共にその事について・・・口に出そうとはしない。
「それじゃ、早速行きますか稟ちゃん
出し惜しみはなしで、一気に敵右翼を陥落させて本陣まで。
お兄さんの陥落は、朧ちゃんというとっても強大な壁に阻まれますが・・・
それは、勝った後で話し合いですねぇ」
風は、知っている・・・
壁は、朧などでは無いことを。
そして・・・その壁を、越えられるものなど、いないということも。
しかし、こうして自分に気を使って・・・一影を生かしたまま、早急に戦を収める方策を稟が採ろうとしてくれていることが、何よりも嬉しかった。
後方を振り仰ぎ、控えていた兵達に向かい、手を前方・・・艦の右舷の方へ指し示す風に従い、ゴトゴトと重い音と共に、台車に載せられた重量物が兵数人ががりで、幾台も押し出されていく。
それを見た前後の艦からも、ゴトゴトと重く鈍い音が鳴り始め・・・
音は連なり広がって、風と稟の指揮下にある艦船全てが、その音に呑み込まれていく。
それを塗りつぶすかのように・・・重く硬い、鋼同士が噛み合う音と共に固定されていき、先ほどの音の広まりをなぞる様に、艦隊全体に広がり終えたそこには、異様な光景が見受けられた。
余剰人員が、重量バランスを取るために反対側・・・左舷へと集まり、なんとか転覆してしまうのを押さえ込んでいる。
・・・それほどの重量物。
「それじゃ風は準備に入るので、後は稟ちゃんに全部おまかせです。
朧ちゃんを間近で見ても、鼻血なんて出さないでくださいね」
言うなり・・・風の目から、感情はおろか、意志までもが抜け落ちる。
目を向けていても、今はなにも映っていないのだと・・・確かめるまでもない。
深く細い呼吸が一定のリズムで繰り返されていくにつれ・・・
その身を包む、静寂と闇が深まっていく。
その小さな唇から微かに流れ出る呟きが、何を言っているのか理解できるものはおらず。
普段の風からは、信じられないほどに敏捷できれのある動きで、歩を踏み、印を組む。
再び、鋭い矢唸りの音と共に打ち上げられた照明弾が二つ、ゆっくりと風に揺れながら落下傘で落ちていく・・・
秋蘭ではない射手の打ち上げたそれは、風向きの計算を失敗したのか、僅かに流されて風と稟の乗る艦船を僅かに照らし出したが・・・
その存在に気付いたものは、曹魏の側以外にはいなかった。
否、曹魏の側にもいたかどうか・・・
戦隊から帆に到るまで、全てを黒塗りにされた威容の艦隊。
他の部隊の半数に満たないその艦隊は、今まで一本の矢も打たず、ただひたすらに息を潜め・・・
星の艦隊の右舷に向け、距離をとりながらも・・・同じく右舷を晒す様に縦列に並んで、正対していた。
だが、本当に威容を誇っているのは・・・船体などではなかった。
装飾の一切を廃された武骨さ
鈍色に輝く重厚感
されど・・・否、さればこそ
美しいと思わずにはいられない、機能美に満ちたフォルム。
兵器として必要なもの以外の一切を廃した、突き詰められたそれが・・・稟の前に六つ並んでいた。
彼女の艦隊全てに、同じ数が配備されている・・・
長手袋に包まれた繊手が高々と振り上げられ、純白の趙旗が飜える艦隊に向け・・・
鋭く、振り下ろされる。
「喫水線を狙い・・・
轟天砲、撃てっ」
夢みたいな理想を掲げて
糖蜜のように甘い考えを本気で信じて
現実を付きつけられても尚・・・
胸に抱く理想を手放さずに・・・
一歩ずつ、その夢見た理想を叶えようと、脚を踏み出す。
そこが、灼熱の鉄の上であろうと、剣の山であろうと構わずに。
お兄さん・・・
風は、そんな馬鹿に・・・なんて言えばいいですか。
『世界』は人が敵うあいてではないのですよと、諭せばいいですか
夢は叶わないから、夢というのですよと、笑えばいいですか
どうして一番の望みを叶えようとしないのですかと、怒ればいいですか
それとも・・・
一瞬でも長く、一緒にいたいから、もうやめて下さいと・・・
泣けば・・・いいですか。
「流石に星ちゃんでも、船戦で紫苑さん相手では、荷が勝ちすぎるみたいですねぇ」
二つの主戦線から外れた場所にいるとはいえ、戦場とは思えないほどに、飄々とした言葉を口にした風の声は、誰に話しかけるともなく、風に流れた。
飴を口に咥えたまま、器用につぶやいた内容は、声や口調とは全く異なり、冷静な目で捉えられた現状判断・・・
夜風に金の髪を波打たせながら・・・
一体何処を見ているのか解らぬ眼差しで
風はそっと語りかける。
「と言って・・・安心ばかりも出来ませんよ、風」
つるに指を這わせた眼鏡の奥から、感情を押し殺した、理性の刃の如き視線を向けてくる稟は・・・
無意識で、本人も全く気づいていないが
極薄い、笑みを浮かべている。
慢心でも、ましてや歪んだ喜びの感情でもなく・・・
その笑みが意味するところは、賞賛。
ただし、向けられている相手は、星ではない・・・
「桂花も・・・随分と思い切ったことをするものです」
軽く肩をすくめ、感心と呆れが鬩ぎ合っている心の中を、目の前の風にだけは曝け出す。
それもほんの一瞬だけ・・・
すぐさま、元の鋭い氷のような雰囲気を身に纏う。
「しかし、他の者はともかく。
仲達殿と一影殿、あの二人が・・・
桂花の打ったこんな手で、動揺するとは・・・とても思えません」
「そですねー」
稟が眉をしかめて見返すのも気づかずに、風は何時もののんびりした表情で、ぼーっと前方を見つめている。
風は今・・・泣いているのだろうか。
最初に稟の頭に浮かんだのは、そんな言葉。
とっさにそう考えてしまうほど、風の返答には違和感が満ちていた。
短すぎ
おざなり過ぎ
なにより、即答過ぎた・・・
深く考えているように見えずとも
相手の答えの先で座って待っている様な、何時もの風の言葉ではなく・・・それは、気のないただの相槌。
稟は知っている・・・一影が、本人とは思えないほどに、己の存在を切売りするかのようにかなぐり捨ててでも・・・何かを掴もうとしていることを。
稟は知らない・・・風が、一影の存在を『世界』から護っていることを。
それ故に、稟が思っている以上に、一影の存在が揺らぎ消えかかっていることが・・・手に取るように感じられることを。
風は知っている・・・『世界』に蝕まれた一影の時間が・・・もう、無いことを。
風は知らない・・・夜光からの延命の提案があったことを、その方法があることを。
そして、一影が・・・『世界』の操り人形になるくらいなら、このまま死ぬと、すげなく断ったことを。
「本当に、嘘つきのくせに・・・
相手に嘘をつかせない・・・ずるい人ですからね。
お兄さんも困った人です」
怒ったような、ちょっと拗ねたような顔を隠そうともせず
唇を尖らせて、不平を漏らす素直な反応・・・
それすらも、稟の目には無理をしていることが解り・・・哀しく映る。
本当は、今この瞬間ででも・・・
風が彼のもとに駆け出したいのが、解っているから・・・
だから・・・
私は、それに気が付かない振りをしなければならない。
故に・・・
「覚悟はいいですか、風」
・・・とは、稟は言わなかった。
それは、彼女の親友を馬鹿にした言葉。
覚悟など・・・宿屋で別れたときに、風も稟も出来ている。
その意味合いは、二人にとって全くと言っていいほどに違うが
今、口に出してそんな事を聞いて、曲がる程度の代物でないのは同じ。
そも、一影殿のあの変容をみて・・・
僅かにでも躊躇うことなど、自分には出来ない。
それは彼の覚悟に唾し、踏み躙る行為であり
彼がそれ程にしてまで掴んだものを、舐めて掛かる侮蔑の行為。
それこそ・・・また風に、ひっぱたかれてしまいますからね。
「一影殿・・・いえ、『魔王』の目は、相手の策を見抜く。
ならば、軍全体としての統一の策を採らず、各個で勝利への最善手を取り・・・策を読まれ、逆手に取られることを封じる。
・・・余りに乱暴なやり方ですが、桂花の信頼に答えないわけにはいきません」
稟の言う通り、桂花が華琳に進言した策は・・・風や稟、鏡香の能力への信頼が有ったればこそ、進言も、承認も出来る滅茶苦茶な・・・策とも言いがたい代物。
独自に判断し、戦局に柔軟に対応し・・・
相手の隙を・・・味方が創り出したチャンスを、瞬時に見抜き・・・見逃さずに動ける。
各人が、筆頭軍師足りえる能力を持つが故に・・・
一見ばらばらに動いたとしても、味方の思惑を受けて即応し、自然と連動できる多頭の獣・・・
多角的軍師集団を、分散して運用する・・・多面同時展開連動。
「『魔王』の軍勢は死兵の城壁・・・
それを打ち崩して、喉元に刃を突きつけねば・・・彼を止めることが出来ませんから
相手の右翼軍集団を・・・一気に突き崩します」
稟の嘗て無い強気な断言口調に、僅かに驚いた様な目で見上げてくる風から、赤くなった顔を背ける稟。
・・・ポンッと、何かに納得したように風が手を打ち鳴らす。
「強大な敵兵力を相手に、大将を一点で押さえる。
兵法の基本原則に則った判断です
・・・だから、そんな変な目で見るのはやめてください風」
ともすれば裏返りそうになる声で言っていれば、稟の言葉の論理的整合性など、大した壁に成らず。
風が口元を抑えながら、上目つかいで稟を見上げる。
その視線の先で、夜闇を切り裂くように二条の光芒が、弓鳴りの音と共に高々と上がったかと思うと、ゆっくりと落下傘に揺られながら降りてくる照明弾が照らしたのは、純白の趙旗・・・
それが誰のものなのか、瞬時に二人には解った。
しかし、両人共にその事について・・・口に出そうとはしない。
「それじゃ、早速行きますか稟ちゃん
出し惜しみはなしで、一気に敵右翼を陥落させて本陣まで。
お兄さんの陥落は、朧ちゃんというとっても強大な壁に阻まれますが・・・
それは、勝った後で話し合いですねぇ」
風は、知っている・・・
壁は、朧などでは無いことを。
そして・・・その壁を、越えられるものなど、いないということも。
しかし、こうして自分に気を使って・・・一影を生かしたまま、早急に戦を収める方策を稟が採ろうとしてくれていることが、何よりも嬉しかった。
後方を振り仰ぎ、控えていた兵達に向かい、手を前方・・・艦の右舷の方へ指し示す風に従い、ゴトゴトと重い音と共に、台車に載せられた重量物が兵数人ががりで、幾台も押し出されていく。
それを見た前後の艦からも、ゴトゴトと重く鈍い音が鳴り始め・・・
音は連なり広がって、風と稟の指揮下にある艦船全てが、その音に呑み込まれていく。
それを塗りつぶすかのように・・・重く硬い、鋼同士が噛み合う音と共に固定されていき、先ほどの音の広まりをなぞる様に、艦隊全体に広がり終えたそこには、異様な光景が見受けられた。
余剰人員が、重量バランスを取るために反対側・・・左舷へと集まり、なんとか転覆してしまうのを押さえ込んでいる。
・・・それほどの重量物。
「それじゃ風は準備に入るので、後は稟ちゃんに全部おまかせです。
朧ちゃんを間近で見ても、鼻血なんて出さないでくださいね」
言うなり・・・風の目から、感情はおろか、意志までもが抜け落ちる。
目を向けていても、今はなにも映っていないのだと・・・確かめるまでもない。
深く細い呼吸が一定のリズムで繰り返されていくにつれ・・・
その身を包む、静寂と闇が深まっていく。
その小さな唇から微かに流れ出る呟きが、何を言っているのか理解できるものはおらず。
普段の風からは、信じられないほどに敏捷できれのある動きで、歩を踏み、印を組む。
再び、鋭い矢唸りの音と共に打ち上げられた照明弾が二つ、ゆっくりと風に揺れながら落下傘で落ちていく・・・
秋蘭ではない射手の打ち上げたそれは、風向きの計算を失敗したのか、僅かに流されて風と稟の乗る艦船を僅かに照らし出したが・・・
その存在に気付いたものは、曹魏の側以外にはいなかった。
否、曹魏の側にもいたかどうか・・・
戦隊から帆に到るまで、全てを黒塗りにされた威容の艦隊。
他の部隊の半数に満たないその艦隊は、今まで一本の矢も打たず、ただひたすらに息を潜め・・・
星の艦隊の右舷に向け、距離をとりながらも・・・同じく右舷を晒す様に縦列に並んで、正対していた。
だが、本当に威容を誇っているのは・・・船体などではなかった。
装飾の一切を廃された武骨さ
鈍色に輝く重厚感
されど・・・否、さればこそ
美しいと思わずにはいられない、機能美に満ちたフォルム。
兵器として必要なもの以外の一切を廃した、突き詰められたそれが・・・稟の前に六つ並んでいた。
彼女の艦隊全てに、同じ数が配備されている・・・
長手袋に包まれた繊手が高々と振り上げられ、純白の趙旗が飜える艦隊に向け・・・
鋭く、振り下ろされる。
「喫水線を狙い・・・
轟天砲、撃てっ」
~ Comment ~
Re: ねこじゃらしさん
コメントに感謝を。
風にとって、「世界」は敵なのか味方なのか、それともそういう対象としては捉えられないのか・・・かなり複雑で難しい問題ですね。
真桜がカンヅメになって工房で作っていた秘密兵器は、量産型轟天砲でした・・・予測をいい方に裏切れていたら嬉しい限りです。
桔梗は一人で振り回してますが、鍛えられた大の男数人掛かりで、台車に載せて運ぶレベルのとんでもない重量物だと、私は思っております。
風にとって、「世界」は敵なのか味方なのか、それともそういう対象としては捉えられないのか・・・かなり複雑で難しい問題ですね。
真桜がカンヅメになって工房で作っていた秘密兵器は、量産型轟天砲でした・・・予測をいい方に裏切れていたら嬉しい限りです。
桔梗は一人で振り回してますが、鍛えられた大の男数人掛かりで、台車に載せて運ぶレベルのとんでもない重量物だと、私は思っております。
- #612 Night
- URL
- 2011.03/02 00:02
- ▲EntryTop
更新お疲れ様です
舞台が最終局面に向かうにつれて、風の一影を想う描写が読んでいて痛々しく感じます・・・
まさかの隠し玉、轟天砲ですか・・・水上戦の戦略は弓での兵士を倒す、または手間のかかる火計による船の破壊をあることを考えると、遠距離から1発で航行不能にしかねない威力がある轟天砲は正に水上戦の攻城兵器・・・
この圧倒的兵器にどのように対応していくのか楽しみです!
まさかの隠し玉、轟天砲ですか・・・水上戦の戦略は弓での兵士を倒す、または手間のかかる火計による船の破壊をあることを考えると、遠距離から1発で航行不能にしかねない威力がある轟天砲は正に水上戦の攻城兵器・・・
この圧倒的兵器にどのように対応していくのか楽しみです!
- #613 kurei
- URL
- 2011.03/03 14:58
- ▲EntryTop
Re: kureiさん
コメントに感謝を。
多分、今の一影に到るまで、どれほどに代わり、どれほどに絶望し、どれだけ努力して
今此処に漕ぎ着けたのかを最も理解しているのは風だと思っております。
そして、もっとも一影に無茶な願いをされているのも。
曹魏の隠し玉は量産型轟天砲でした。
対応策を採られないように、極秘裏に真桜が工房にこもり、一つ一つ手作りして・・・
分散配置ではなく、少数艦隊に全部集めての電撃戦
さて、一影側は対応できるのか、どう対応するのかは本文にて、頑張ります!
多分、今の一影に到るまで、どれほどに代わり、どれほどに絶望し、どれだけ努力して
今此処に漕ぎ着けたのかを最も理解しているのは風だと思っております。
そして、もっとも一影に無茶な願いをされているのも。
曹魏の隠し玉は量産型轟天砲でした。
対応策を採られないように、極秘裏に真桜が工房にこもり、一つ一つ手作りして・・・
分散配置ではなく、少数艦隊に全部集めての電撃戦
さて、一影側は対応できるのか、どう対応するのかは本文にて、頑張ります!
- #614 Night
- URL
- 2011.03/03 23:48
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更新お疲れ様です